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今頃ポスターの色校正。額縁をちょっとだけカスタマイズ。解説がいまだに書けない。

しかしもう12月。担当する「器と絵筆ー魯山人、ルソー、ボーシャンほか」展の開幕まであと1ヶ月ちょっと、の、つらつら徒然メモ。

広報印刷物が、諸事情で遅れている。納品は12月なかば。年内に郵送しても封を開けてもらえるのは年明けか。まあいいよ、しょうがない。それにしても、コロナ前から思ってたけど、ポスターとかチラシというブツは、今後いつまで世の中に流通し続けるだろう?いつかなくなる日が来るのではないか・・・

同世代の同僚に何気なく尋ねたら、「絶対なくならない」と怖い顔で返された。気持ちはわかる。私だって、チラシもポスターも作れなかった「作品のない展示室」については、必死で記録冊子を残したわけだし(12月2日から世田谷美術館のミュージアムショップで販売します)。でもねえ、カタログじゃなくて宣伝物としての印刷物の話なんだけど。「なくならない」と繰り返す同僚。いや私だってチラシやポスターは文化だと思ってるけどさ。まあ埒のあかない系の話なので、ひとまず深入りはやめた。みなさんどう思いますか。ってこんなところで漠然と問いかけるのもどうかと思いつつ。


さて、以前騒いだ「20年ぶりくらいに収蔵庫から出してあげたい絵があるけど金ピカな額縁が衝撃的にNG」な件。

いかにダメダメであるかを、当館で長くお世話になっている修復家にわあわあ訴えた。超絶毒舌家ながらどんな作品でもブツとして等しく愛を注ぎ、少しでも状態をよくしようとしてくださる方である。で、収蔵庫でいっしょに作品(と額)を見てくれた。作品本体もさることながら、額縁もブツのうちだ。

あーなるほどこれじゃあねえ。こういう「和風」額、むかし流行ったんだよねえ。絵には合ってないよね。作り替える予算はないんでしょ?ちょっと表面を削って、ちょっと色をつけてあげるよ。それだけでずいぶん良くなるよ。たいした作業じゃないし、手が空いた時にやっとくよ。

やじ馬で見にきて、「塚田さんがいうほどひどくもないと思いますけどねえ」とコメント(←たぶん修復家の仕事を増やさないための配慮)する若手同僚の意見は、悪いけど(珍しく)全面的に無視して、ありがとううううう!!!お願いいいいい!!!と叫んだ、のが1ヶ月前。

今日、できたよーというので修復室に見にいった。

いい!!!いいじゃないですかっ!!!!!!

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俄然、元気が出て事務室に戻る。印刷物の色校終わったし額もきれいになったし、いいね!!!!あとは展示だね!!!!


・・・あと一本、解説を書き終われば、ね。「素朴派」、についての。


それがまだ書けていない。しかもたかだか800字レベルの解説である。なにそれそんなの1時間で書けるでしょ何やってんの。セタビの基本のきでしょ、素朴派。

それが書けない。自分なりの宿題を作ってしまったからだ。時間もあまりないのに。これは判断ミスかもしれない。あれこれ考えずに公式どおりに概説を書くんなら1時間で終わるんだから。今回はそれでいいかなと途中まで思っていたのも事実だ。プレスリリースはまあ普通に書いた。しつこいようだが「私」の企画じゃないのだから。館のこれまでの公式見解を書けばそれでいい。それ以上のことは期待されていない。


いや、といっても、大発見してやったぜとか、大逆転な視点を見せてやるぜとかいう暑苦しい系の宿題じゃないんです、全く。

やりたいのはごくごくささやかなことだ。80年代にできたこの美術館が、世の中に提示してきた価値観自体を、ちょっとだけ、改めて考えてみたいだけなのだ。

コレクションはある時代の価値観を背負っている。

加えて、コレクションをどう語るかにも、ある時代の価値観がガッツリ反映されている。

その語り方=価値観を継承するならするで良い。でも、それは今、この時代にも継承しうるに足る価値観なんだ、とちゃんと考えてからじゃないと、そろそろ、まずい地点に来ているんじゃないかと、思える。

若干距離をとって眺め直して考えてみる。で、うーん、そういう目線でコレクションして語ってきたわけか、今ならその目線はちょっとないかなあ、まあそういう時代だったんだね、となったって、いい。モノ自体というより語り方を通して、ひとつの時代を浮き彫りにする。当館のようなちっちゃい美術館であっても、小さいなりに時代を刻印しているのだし。世代交代が進行中なので、ますますそう感じるのかも。

私にとっては、「素朴派」なる括りとその語られ方は、ちょっと、考えたい部類のものなのだった。

考えたところで、今の感じじゃあ、800字の解説のほんの1、2行にチラ見えする程度だろう。

でも「チラ」がないとねえ。今後につながっていかない。面白くない。これからの楽しみの種をまきたいわけなのだ。さてさて。










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