ライブハウスとジャズクラブ

何かと取り沙汰されている「ライブハウス」

よく「ライブハウスとジャズクラブを一緒にするな」という話を主にジャズミュージシャン、ジャズクラブから聞くけど、僕がかねてから疑問に思っているのは、そもそも「ライブハウス」とは何か?
都知事も公的な発言としてあれだけ言及している「ライブハウス」とは一体どういう法的な、あるいは行政的な区分や定義、または登録があるのだろうかということ。
平たく言えば「この店はライブハウスです」と誰が決めるのか、あるいは言うのか?

この辺り、法律に詳しい方、あるいはジャズクラブの店主の方にぜひお聞きしたいのだけど、僕の聞いた話では「ライブハウス」という営業形態の登録とか許可というものは無いとのこと。
劇場などの「観覧施設」は消防法で座席の間隔や避難経路の確保が決まっているらしいけど、いわゆる「ライブハウス」と言われる物はそれの抜け道として「ワンドリンク」を提供し、劇場ではない「飲食店」として登録、営業しているというような話も聞いたことがある。

僕たちの演奏するジャズクラブに名前の語感から一番近いと思われるものに「ナイトクラブ」があり、これは風営法で決まっている。何年か前にその風営法も改正され、今は「特定遊興飲食店」と呼ばれるらしい。これも夜中12時以降の営業を対象していて今時のジャズクラブには当てはまらない。

では一体「この店はライブハウスです」と言っているのは誰なのかと。
「うちは観覧施設でも特定遊興飲食店でもない普通の飲食店だけど、生演奏をしているので世間からはライブハウスと見られている店です」ということなのだろうか?
「いえ、うちは生演奏をしていますが、区分としては単なる飲食店です」ではダメなのか。
ダメだとしたら、誰がそう言うのか?いわゆる自粛警察?

このあたりの議論をあまり聞いたことがない。
行政の長が業態を区分けし、「これがロードマップです」と言う以上、明確な定義とその根拠を示すべきではないか。ライブハウス自粛の是非以前にそれを問題にする動きがないように思われるのが不思議だ。

ではなぜ小池都知事はこの明確な定義や分類のない曖昧な「ライブハウス」という呼称を使ったのか?
それは「ライブハウスといわれる店でクラスターが発生したという事実を述べているのであり、あなたの店がライブハウスだと言っているわけではない」という逃げ道を用意しているからではないだろうか。
またいわゆる大箱のライブハウスの方も、上記のような抜け道を長年にわたって利用していたとすれば、「ライブハウスではない」と主張した場合、「ではこの施設は何ですか?実質的に劇場ですね。だったら消防法に則った避難経路やスプリンクラーを設置していますか?」と、かえって藪蛇になる恐れもあるのかもしれない。

しかしこういったグレーゾーンとその抜け道はパチンコにおける「3点方式」を持ち出すまでもなく、いつの時代、どの分野でもあるもの。そこを上手くやっていくのが、いわゆる「ロビーイング」パチンコやカラオケなど経済規模の大きな業界はそれなりのロビー活動をしてきただろうが、「ライブハウス」業界はそもそもそれほどの経済規模を持っていない。

しかし物理的にも経済的にもさらに規模の小さい、いわゆる「ジャズクラブ」業界はもっと大手を振って「ライブハウスなる定義は知りませんが、うちは単なる飲食店です」と主張してもいいのではないだろうか。
かつては女性ボーカリストをテーブルにつかせ、お酌をさせるという「接待を伴う」業態と判断されても仕方のないような「ジャズクラブ」もあったけど、少なくとも僕の周りでその営業再開を待ちわびているのは「音楽を聴かせる」店なのだから。

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