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大学ラグビーをより『深く』知ろう(第5回)〜慶応義塾対早稲田〜

伝統の早慶戦(または、慶早戦。以上は早慶戦で統一)。大正11年(1922年)に早稲田大学が慶應義塾大学に試合を申し込んだことから始まった伝統の一戦。毎年地上波でも放送されるため、ラグビーファンでなくとも知っている有名な試合。

クボタスピアーズに所属する岸岡智樹選手主宰のラグビーサークル 「岸岡智樹のラグビーラボ(通称 #トモラボ )」の、恒例座談会『大学ラグビー座談会』では、早慶戦の前に(期待、贔屓を含む)徹底予想をしました。

今回は、試合後のレビューで語り合いました。

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トークメンバー

《トヨノボリ》
50代男性3児の父。
中学時代よりラグビーを観戦、現在は早稲田大学のファンだが、最初は同志社大学ファンであったことは内緒。
プレー経験は大学の授業のみ、文句だけは一人前な典型的親父ラグビーファン。
自慢は息子が小学校時代に参加していたルーパスJrの交流フェスタで、大野均選手にラインアウトリフトしてもらったこと。
今年はコロナで聖地巡礼ができなかった熱狂的カープファンでもあり、小学校時代のあこがれはマルチプレイヤー木下富雄(現焼き鳥店店主)。
《しんさん》
50歳男性独身(×1)。大学在学時に観戦したワセダのラグビーにハマってラグビー観戦を続けること約30年。ワセダのみならずラグビーの「ラ」のつくこと全てと旅行とグルメをこよなく愛する。国際問題、政治を除く社会問題全般、サブカルチャーに薄く広く興味あり。有名人・他人のスキャンダル、ゴシップネタには全く興味なしの会社員。
《そう》
現在、トップイーストリーグ Big Bluesでプレイ中。高校時代は部活動、大学時代はサークルでラグビーをプレイ。同志社大学出身なので関西ラグビー推しではありものの、関東だと早稲田大学推し。スーパーラグビーなど海外ラグビーもJsportsでよく観戦する。
自分がラインアウトでよくプレイするのでラインアウトが気になりがち。
《てん》
大学ラグビーは、3年程前に「飲み目的で」ご主人と一緒に行ったことで観戦デビュー。ご主人の母校である早稲田大学ファン。ルールは覚えられないからこそ、清々しくミーハー観戦に徹する。座談会もご主人と一緒に参加。
《まりえ》
W杯2019でラグビーにハマる。YouTubeで早稲田大学(現・クボタスピアーズ)岸岡くんの試合や好きなラグビー選手の大学時代の試合をいくつか見て存分に感情移入する。ルールはほとんど分からず、最近の楽しみはボールではなくお気に入りの選手を目で追いかけること。大学ラグビーのリアルタイム観戦は初めて。
《いのこ》
#大学ラグビー応援企画 トークの発起人兼参加者。
学生時代に大学ラグビーに親しむ。子育てが一息ついたのを機に観戦再開。母校の慶應を応援。
《みきしの》
本記事のライター、編集者兼参加者。
20年位前に社会人ラグビー(現:トップリーグ)からラグビーにはまり、W杯2019は19試合を生観戦。大学ラグビー観戦デビューは2018年で、まだまだ #にわか 。好きなチームは決めかねているが、あえて言えば早稲田大学。

質問その1:秩父宮ラグビー場の様子を教えてください。

《トヨノボリ》
自由席だったので開聞2時間前に行きました。
イチョウ並木は密な状態、日本語以外も飛び交っていました。
席はバックスタンド伊藤忠側ゴールライン近辺の前から9列目、試合前の早稲田アップが堪能できました。

《しんさん》
午前中は、「晴れの得意日」で「早慶戦日和だなぁ」と思ってました。午後は曇りましたが、観客席の間隔も一つになって、いい雰囲気の秩父宮だなと思いました。声援が少なくて拍手だけの応援ってのもいいなぁと思いました。選手たちの声やタックルのきしむ音がよく聞こえてきて。岸岡君の読み応えのある素晴らしい記事を読みながら予想を膨らませていました。いい試合になればいいな・・・と。

《てん》
前回の慶應vs明治で、つい声を出してしまう明治ファンが少なくない中、常に拍手で選手の背中を押していた慶應ファンが素敵だったので、冷え性の私も手袋を外して拍手がんばりました! 手首ウォーマーが強い味方になってくれました。

《いのこ》
天気予報が外れてとにかく寒くて参りました。席の間隔が一つおきになり会場も大分賑やかになりましたね。応援は良くも悪くも熱を帯びていました。早慶戦とはいえラグビーですから、『良いプレーには拍手をしましょう』のお約束だけは守って欲しいな、と感じました。

《みきしの》
バックスタンド側の銀杏並木がとてもきれいでした。
1席おきで発売されていますが、さすが早慶戦。自由席も含めほぼ満席でそれなりに密な感じでした。雨の少ない11月23日を選んだだけあって、今年も雨は降りませんでした。しかし、雲が多くて、バックスタンドでもそれなりに寒かった… 防寒対策は大切ですね。

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質問その2:立ち上がりの早稲田・慶應の両チームの印象を教えてください。

《トヨノボリ》
早稲田が押し気味でスタートしましたが慶應は良く守っていました。早稲田は自陣敵陣とも反則が少し多かったですが、動きは悪くなくゲインはできていたのでどこかでトライは取れると思いました。

《しんさん》
少し早稲田のはハンドリングエラーが目立つかな・・・とも思いましたが、伝統の一戦なので緊張しないほうが無理だな・・・と眺めてました。序盤から慶応山本、今野、鬼木、三木をはじめ、全員が迎撃ミサイルのように精密な間合いの詰め方の見事なタックルを繰り出し、早稲田も平井を筆頭に丸尾、下川、大崎、小林、宮武、村田をはじめ全員が逃げずに真っ向勝負する。これはいい試合になるんじゃないかなと期待が膨らみました。

《そう》
両チームしっかりと集中してスタートできた印象でした。慶応のペナルティゴールで、スコアの火蓋が切られましたが、双方しっかり守りがかたく、伝統の一戦にふさわしい始まりでした。

《てん》
どちらもゴール前まで行くが、ともに無得点だったと記憶しています。やはり、お互いにディフェンスを意識して調整してきているなと感じましたね

《まりえ》
両者の緊張感が伝わってくるようなスタートでした!押して、押し返されて、ギリギリで守り切る!みたいな攻防が楽しかったです。
慶應のタックルが低くてびっくりしました。

《いのこ》
慶應は開始直後から集中してよく守ったと思います。ただ、早稲田の守りも堅かったので、前半は拮抗するだろうと感じました。

《みきしの》
最初から早稲田がおせおせに見えました。早稲田ファンとしては嬉しい立ち上がりでした。とはいえ、さすが「魂のタックル」の慶應。要所要所でしっかり止めらており、今日は接戦になるな…と思っていました。

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質問その3:前半を終わって 慶應 6-12 早稲田。早稲田大学がリードしました。この時点の感想・この先に予想していたことがあれば教えてください。

《トヨノボリ》
早稲田2Tはほぼ予想通り、慶応ノートライは予想外、双方ディフェンスが素晴らしかったですが、決定力の差が出ました。
前半終了間際に自陣で反則、PGを許したのは気になりました。これがなければ1T1G以上の差をつけていたのでマネジメントミスかなと。

《しんさん》
早稲田は2トライはモールから最後は吉村君の相手のスピードギャップをついた頭脳的トライ、パントから「これぞターンオーバー」という見事なプレーから、最後は河瀬・槇の技ありトライは素晴らしかったです。ただ、20分以上早稲田が無得点だったのも忘れられません。
あの高いクォリティーのディフェンスを、タッチライン際からタッチライン際まで満遍なくグランドの横全面に人を配置して、かつキックディフェンス要員も二人配置して構築し続ける慶応の戦術は正直驚きです。
一対一では抜かせない!という自信は、おそらく見えない所での血反吐を吐くような猛特訓の裏付けがあってのことでしょう。
慶応の素晴らしいディフェンスがあったからこそであって、そこに真っ向勝負を挑んでとった2トライだったからこそ価値があると思いました。慶応も冷静にPGを二つ決めて喰らいつく。後半先に慶応が得点すればまだまだどちらに転ぶかわからないな・・・と期待を膨らませました。

《そう》
慶応がトライを取れない流れが、良いか悪いか想定通りなイメージでした。早稲田はやはりタレントある選手がいる分、個の力で取り切っていたなと感じました。

《てん》
前半は接戦と予想していたので、点差自体はおおむね予想通りかな。ただ前半で2トライ取れるとは思っていなかったので、そこは予想以上でした。
後半は早稲田オフェンスにもっと動きが出るだろうから突き放すなと予想しました。

《まりえ》
私には互角に見えたので、後半もお互いに押して、押し返されて、ゴール前で守り切る感じが続くように感じました。

《いのこ》
早稲田には慶應にない『個の力』を痛感させられました。再三の得点機を逃した事もあり、点差以上の力の差を感じました。正直なところ逆転できるイメージは持てなかったです。

《みきしの》
前半は伊藤忠側から見て、遠くで試合をしていた印象。つまり、慶應が攻める時間が長かった印象です。だけど、ゴール前で早稲田に止められ、トライがとり切れないのが疑問でした。早稲田のディフェンスがいいのか、慶應の決定力不足なのか・・・と、後半の慶應に期待と注目していました。

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質問その4:最終的に 慶應 11-22 早稲田。早稲田のダブルスコアで終わりました。早稲田の勝利の要因、または慶應の敗因は何だったのでしょう。大差になったターニングポイントがあるとすれば?

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《トヨノボリ》
2T2G以内の差だったので決して大差ではないと思います。
慶應としてはほぼ思い通りのロースコアでしたが早稲田の決定力が上回りました。
前半2つ目のトライはアンストラクチャーから槙君が取り切り、後半のトライは河瀬君の個の強さで押し切るという取るべき人が取っていました。
早稲田はこれまで少し安定を欠いていたラインアウト、ハイボールキャッチがほぼパーフェクト、慶應はラインアウトで少し苦しみストレートなモールアタックができませんでした。

《しんさん》
私のダブルスコア予想は結果的に当たりました。が、口答えをするようですが(すいません。。。)、大差だったとは思っていません。逆に帝京、筑波に40点以上とった早稲田を22点のロースコアに抑えられた要因は、先ほど申し上げた慶応の素晴らしいディフェンスで、特に早稲田のキーマン長田をアタック面で自由にさせなかったことだと思っています。

早稲田の勝因はJスポーツの解説藤島さん、村上さんもおっしゃってましたが、慶応の厳しいディフェンスに対して安易にキックやロングパスに逃げるのではなく、あえてコツコツと近場で慶応の分厚いディフェンスに刺さり続ける。その布石を打った後にできたスペースに、始めて切り札河瀬、槇を使ったところだと思います。6点差の時点での冷静なPG選択も見事。後半は1チャンスで追いつけないところに上手く持っていきましたね。

ターニングポイントは、フェーズを重ねて最後は河瀬で取った後半のトライシーンの後ですかね。終盤巡ってきた慶応のチャンスでPGを狙わずにトライを狙った場面で、ここで慶応が取りきれなければ絶対ダメだと思ってた時に早稲田にターンオーバーされて勝負あったと思いました。この時慶応を応援して落胆している自分に気づいて自分でもちょっと驚きました。

《そう》
早稲田の勝因は、慶応の鉄壁ディフェンスがあったとしても、取れる時に取り切っていたから。
慶応の敗因は、守りは堅く失点を抑えられていたものの、ラグビーは相手よりも1点以上多くの点を取れてこそ勝利が得られるもの。やはり得点源が少ないのは今後の戦いでも悩みの種になりそうだなと。

《てん》
・早稲田の勝因
ディフェンスに尽きると思いますし、慶應お得意のモールに対する準備がしっかりできていましたね。あと、ハイパントが効果的でした。
・慶應の敗因
鉄壁のディフェンスは想定通りでした。ただ、モール以外でトライできるイメージがわかなかった!
・ターニングポイント
慶應トライの後のコンバージョンキックですね。2点差にできるはずが4点差となり、早稲田としては精神的に優位になったと思います。

《いのこ》
慶応には厳しい局面を一人で打開する『個の力』が必要だと痛感しました。再三のチャンスを逸した前半が悔やまれます。この敗戦を糧としながら、チーム力の精度をさらに高めて選手権に臨んでほしいですね。

《みきしの》
後半は前半以上に早稲田が元気な印象でした。慶應のタックルに阻まれるものの、ラインが下がるシーンはs区なかったです。また、SO吉村選手とFB河瀬選手を中心にバックスが良く動いていたような印象でした。
一方で慶應はゴールラインまで攻めるものの、早稲田の鉄壁に阻まれペナルティで攻撃終了を繰り返しているのが不思議でした。

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質問その5:公式MOMは早稲田SOの吉村選手でした。あなたが決めるMOMを教えてください。

《トヨノボリ》
伊藤君の交代が予想より遅かったのは平井君がディフェンスで刺さりまくっていたから変えづらかったのではと個人的に思っており、個人的にはMOMでした。あとは再三ゲインを切っていた久保君も素晴らしかった。

《しんさん》
MONは両校の出場選手全員です・・・と言いたいところですが、吉村以外であえて言えば、「我慢のアタック」の起点となった野武士、平井でしょうか。ディフェンスで大活躍だった丸尾キャプテンと大崎。問答無用でさんざん突破した村田、相良。下川は体の使い方が本当にうまい。相手からすればタックルしにくかったでしょう。攻撃陣では河瀬が慶応の想定を上回りましたね。決してパワーだけではなくてタックルのヒットを微妙にずらす技と冷静さも披露してくれました。長田もディフェンス面でチャージされたキックカバーなど随所にらしさを見せてました。

慶応は特に山本、原田、鬼木、三木のパトリオットミサイルのような正確無比な高速タックルの乱れ打ちに感動しました。慶応の選手全員を褒めたたえたいです。選手権に向けて、手ごたえをつかんだのではないでしょうか。攻撃のオプションを増やしていけば優勝だって狙えると思います。
伊藤はタックルを外してからのロングゲインは凄い!凄すぎて正直若干引きました。。。一発で局面を打開できるモビルスーツみたいな選手だなぁと。今後が楽しみです。

《そう》
トライまで取れていれば尚良しでしたが、再三ゲインしていた早稲田の目立たないルーキー村田くんに個人的にはMoMを。

《てん》
もちろん吉村くんで異論はありません!
しかし個人的に挙げたいのが…
・村田陣悟(←夫のMOM)
ボールを持てば確実に前進してくれ、非常に強さとポテンシャルの高さを見せてくれた。
・平井亮佑(←妻のMOM)
皆さんも挙げている刺さりまくったタックル。それに加え、アタック時も低く鋭く刺さってくる慶應タックルを巧くかわす選手が多い中、恐れず正面からぶつかる姿に震えました。試合後の写真も誰よりも傷だらけで…。「いぶし銀」「野武士」「熊をも仕留めるタックラー」等この界隈でも抜きん出て二つ名の多い平井くん。この試合での見応えは凄かったです。
(※しんさんの命名、お借りしました!)

《まりえ》
毎回MOMはどうやって誰が決めているのか謎でしたが、私は早稲田3番の小林くん?にあげたいです。勇気あるチャージがすごかったです!8番(丸尾くん?)のタックルとジャッカルもすごかったです!

《いのこ》
やはり河瀬君でしょうか。早稲田の『個の力』の象徴だった気がします。慶應は、最後までチームを鼓舞し続けた主将相部くんに。

《みきしの》
早稲田はSO吉村選手はもちろんですが、No.8丸尾選手はずっと目が離せないし、見ていられる。明治の箸本選手とは違うタイプ(箸本選手は派手目、丸尾選手は地味目)だけど、将来的には丸尾選手の方が長期活躍できるのかもしれない、と思いました。
慶應はFB山田選手。キックよいしラン良いし、FBの位置取りに留まらず「気が付いたらそこにいる」印象です。今は1年生。今シーズンに加えてあと3シーズンあります。4年生になるまで応援したい選手です。

対談を終えて

今シーズンも早稲田の勝利で終わった早慶戦。

私は慶應が随分と攻めている印象で「予想以上の大差」だと思っていたのですが、「大差ではない」「慶應はよく抑え込んだ」の感想に違いに驚きました。他の試合では40点以上の大量得点を上げる力がある早稲田を、よく22点に抑えたと。

話を伺ってから試合を見直すと、慶應のディフェンス、特に自陣に攻め込まれてからのしぶといタックルが目を引きました。一方で慶應の決定力の不足も気になっています。確かに、ゴールライン深くまで攻め込むが、最後にトライまではたどり着かないのは、早稲田のディフェンスが課題だけなんだろうか…も気になります。

普段は早稲田を応援していますが、早慶戦の戦いぶりから慶應も気になってきました。次の帝京戦、その後の日本選手権も楽しみになってきました。こうやって、応援したいチームが増えていくのだなぁ、と新しい大学ラグビーの魅力にも気が付いた座談会でした。

最後に、ベテランのしんさんの言葉が染みました。

両校共に、出場選手は卒業してから「自分たちは伝統の一戦でこういうふうに戦ったんだよ」と後輩や家族、子供に自負できる素晴らしい試合だったと思います。
個人的にも過去見てきた同じカードの中でも、一昨年の選手権準々決勝での1戦と並んで1番か2番目に良かったように思います。

4年間で風のように走りきって、長くOBとして見守る大学ラグビーだからこその魅力。1922年から続く早慶戦の長い歴史に、また素晴らしい試合が積み上げられました。

慶應義塾大学・早稲田大学 選手・スタッフの皆さま、お疲れ様でした。

(本記事は、クボタスピアーズ岸岡選手の大学ラグビー応援企画に参画する記事として、作成・編集しました。)







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