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Re-posting No.056 若き友よ!(2)なつみちゃん

Re-posting No.056 若き友よ!(2)なつみちゃん

(No.056 書き直して再掲載です)

自分への覚え書き なつみちゃんの記事は「よろしく!小野先生」の項に分類するか迷った。「若き友よ!」に入れたのは「しんやさん」と呼ばれる年月の方が「小野先生」と呼ばれた日々より、ずっと長くなったからだ。…待てよ、そもそも「小野先生」と呼ばれた時ってあったか?

電話がかかってきました。こちら、固定電話のみの時です。電話の向こうから、夏にふさわしい、ちょっぴりトーンの高い、明るい声が聞こえてきました。なつみちゃんからです。明るくて当然か、大学生活楽しいって言ってたもんね。
「しんやさ〜ん、どこかで、ご飯一緒に食べませんか〜?」
「一緒に食べる?オレに、ご馳走してくれってことだろ?」
「ええ〜!分かるんですか〜?」
「オレに電話してくるってことは、今、カレシいないってことね」
「ドツボのこと、言わないでくださいよ〜!」

なつみちゃんが、お母さんと一緒に相談に来たのは、中学3年生の時でした。制服が可愛い某私立中学に通っていました。こちらの塾は宣伝なしでも生徒のくる、口コミのみの「カリスマ塾」です。宣伝するって頭下げる部分があるじゃないですか。それ、イヤなんです。…やっぱり文章にすると、ちょっといやらしいですね。

「褒めてくれる上司もいない、励まし合う同僚もいない、たった一人の孤独な職場は、自画自賛じゃないとやってられないの」です。

「相談お伺いしましょうか、お母さん?村上さんからちょっと話は聞きましたが」
「この前の英語の定期テストで下から数えて二番目、わたし衝撃を受けてしまって…」
衝撃を受けたお母さんに「下から二番目!ブービー賞おめでとう!」と、二度目の衝撃を与えるのは、よしておきました。

土曜日に一コマプライベート授業を入れての指導開始です。 半年もしないうちに学年10番以内の成績をキープするようになりました。先生と生徒と言っても、結局は人と人の触れ合いなのです。信頼関係が大事なのは言うまでもありませんが、つい忘れがちですよね。

企業秘密(大した事ないですが)を、ちょっと明かしていきましょう。

なつみちゃんとの授業のとき、よく近くの自動販売機に飲み物を買いに行ってもらいました。「オレ、午後の紅茶のミルクティ。なつみちゃんも好きなの買っておいで〜」「は〜い」。たまに「一緒に行くか〜」帰りに走ったりします。「競争だ〜」「あ〜、ずるい〜」。小学生にも高校生にもこんなことしているんです。一緒に食事をしたりするのは、人間関係の中で、とっても大事です。そうです。小野先生は、しんやさんは中々にあざといのです。

授業をしている時、地震がありました。ひどくはなかったのですが、しんや先生、立ち上がってトイレに入りました。なつみちゃん、キュトンとしています。揺れがおさまり、トイレから出てきたしんやさんに、なつみちゃん尋ねました。「どうしたんですか〜?」「うん、地震の時は、トイレは比較的安全なんだ。周りの壁に支えられているからねえ」「ええ〜、わたしを残して、自分だけ助かろうとしたんですか〜!」「わはは、当たり前だ。自分が一番なのだ〜」「ひど〜い!」なつみちゃん、笑って、人生で大事な事?を学びました。生徒以上にアホになることで生まれる信頼関係もあるのです。小野先生は、しんやさんは結構計算して行動しているのです。

「アメ玉コロコロ事件」「クーラーぶら下がり事件」…たくさんあって書いていられないね。
「ゴキブリを飼った話」「好きな女子の家の屋根に上がった話」笑って聞いてくれたね。

授業後(授業中もか・笑)セブンブリッジは毎回のようにやっていたね。本気で向かってくるしんや先生に、なつみちゃん「大人げな〜い」「そんなもの、あってたまるか〜」

教師が生徒に教えることなんて、そんなにないんです。適切な量を教えないと、生徒はできるようになりません。生徒が自分自身で、学業の汗をかいていく手助けをする役割が大事だと確信しています。

なつみちゃん、将来の事で珍しく悩んでいました。
「自信がないんです…。わたし、いいかげんだし、強く生きられるんだろうかって…。仕事していけるのかなって」

「みんながみんな強く生きていかなくたって、いいよ〜。オレはいいかげんな人も好きだよ。なつみちゃんは、美人さんなんだし、いい旦那さんと結婚して幸せな家庭築いていくのも向いているかな。立派な仕事だよ、奥さん稼業も。生涯一人で仕事していってもいいしね。何したっていいんだよ。そうだな〜、もうけだけを考えるんじゃない、尊敬できるお医者さんと結婚する。うん、それでいこうか〜!」

五年後、なつみちゃん、ヒロキくんと式を上げました。結婚式への招待ありがとう。二次会では、しんや一人、グンと年上の参加者で「あの人何者?」状態だったね。しんやマジック披露で二次会大盛り上がり。一番楽しんだのは、しんやだったよ。ヒロキくん笑って教えてくれたね。友だちが「マジックの人、ヒロキより蝶ネクタイ決まってたな」って言ってたって。

なつみちゃん、二人の子のお母さんとして頑張っています。ヒロキくんいい男です。尊敬できるお医者さんです。家族でうちに遊びに来てくれたり、一緒に外食を楽しんだりしています。りおちゃん、しんやのマジックのファンになってくれて嬉しいよ。レオくんは、もう少しかな、マジックを楽しめるようになるのは。

明日、なつみちゃんに頼もうっと。
「セントレザベーカリーの角パン一斤、買っておいてくれる?」

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