ラストワンマイルデリバリー

最近,このテーマが流行りのようだ.ワンマイルというと宅配とか郵便に限定の話のように聞こえるが,サプライ・チェインでは,最後の配送拠点から顧客への配送問題になる.

この問題は,本当の宅配と,コンビニへの配送のような問題(通常のVRP) に分けて考える必要がある.前者は,毎日届ける先(顧客)が変化し,さらに行ってみたら顧客がいないとかいう動的かつ確率的な要素が多分に加味される.後者は,顧客は必ず存在し,毎日ルートを変えずに運用することが望まれる.

前者(宅配とか郵便業務)においても,ルートはできるだけ毎日同じであることが望ましい.UPSのOrionというプロジェクトの初期の失敗は,毎日違うルートをドライバーに提示して拒否されたことに起因する.できるだけ同じルートと効率的というのは矛盾するが,何事もバランスが大事なのだ.

宅配とか郵便だと,巡回の効率性よりは,不在確率の推定が重要になる.これについては,recommender systemを用いた予測が良いと提唱したのだが,データが出せないという理由(個人情報ということだったが意味がわからない)で実用には至っていない.電力メータを使って予測という某東大の方法よりがましだと思うのだが,まあ今後(別部署が正気に戻ること)に期待しよう.

さらには,宅配については,配達員の目的関数が異なることを考慮する必要がある.アマゾンで外注されているドライバーは,7時に家に帰りたいという目的関数をもっているかもしれない.子供をたくさん養っているドライバーは,なるべく儲けたいという目的関数を持っているかもしれない.最近は,停車位置を固定してそこから歩いて届けるというバス停方式も推奨されているが,これも体力に依存する.運転だけでなく健康に気を使っているドライバーはバス停方式を希望するかもしれないが,それも天候による。(雨の日は勘弁だ.)こういった条件下では,全員に同じルートを推奨するといったシステムは,受け入れられるわけがない.

amazonの(なんちゃって)AIシステムは,ドライバーからはヨチヨチ歩きと評価されている.7時にあがりたいドライバーは,再配達の伝票は6時寸前に入れるのがベストだ.こういった条件は,ドライバーに任せたほうがよい.宅配では,最適化よりも意思決定を支援するための,よくデザインされたUI(紙でも良い)である.こんなものは,ベテランのドライバー数人を集めてSPRINTすればすぐできる.午前中は赤丸,午後は青丸とか,6時以降は時間指定を丸の横に数字を入れるとかで十分だ.以前,SPRINTを提案したことはあるのだが,それを受け入れるだけの知識をもった企業が少ないのは残念だ.

ちなみに,宅配でない配送はものすごく簡単だ.諸条件がついた問題を最適化するのは,最近では訳はない(博士の学生程度で十分できる;この間暇なので作っておいた。 https://demo.logopt.com/scm/ のMETROで試せる).難しいのは不確実性と動的な条件下での最適化で,このあたりをちゃんと(予測+強化学習)でするのは今後の課題だ.

と言ってもこれも考えてある.某社(同時に2社)に頼まれて解法を考えたが,理解できなかったようだ.日本を代表する企業なのだが,情けない.

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