キオスク端末の言語切り替えUIを集めてみた

コンビニ、ATM、電車の駅などなど世の中にはキオスク端末が溢れています。日本の場合、全人口に占める割合から言うと大多数が日本人であることは間違い無いのだけれども、外国人だって200万人以上住んでいるし、訪日外国人は年間3000万人を越えようとしています。つまりキオスク端末においても日本語以外の言語でのサービス提供をある程度は検討しなければいけません。

これがスマートフォンやPCで利用されることを前提としたサービスであれば、彼らの持つデバイスやブラウザの言語設定を参照して提供する言語を切り替えるということも出来るのだけど、キオスク端末は不特定多数に触られることを前提としているため、そう簡単にはいかないところが難しいところでもあります。

では、世の中のキオスク端末はどのような方法で多言語UIを提供しているのか、ちょっと調べてみました。

セブンイレブン

光が反射していて若干見にくいのが申し訳ないのだけど、まずはコピー機。左上に「日本語」「English」「中文」というボタンが並んでいる。それぞれのボタンを押すと下に表示されるコンテンツが切り替わる。

興味深いのは言語によって使える機能が異なるという点。日本語だと行政サービスや、チケット発券ができるのに、英語だとコピー、プリント、スキャンのみ。中国語だとさらにそこから何故かスキャンもできなくなってしまう。

そしてこちらはセブン銀行ATMのUI。そもそも言語切替ボタンは存在しないが、英語で「Insert your card」「International Card Available」と書いてあるので、おそらくだが海外銀行のカードを入れたら英語UIに切り替わるのだろうと思う。(未確認)

ファミリーマート

次はファミリーマートである。まずはコピー機。右上に言語切替ボタンが見える。ボタンのラベルは「Language 言語 / げんご」である。ひらがなで「げんご」と書いてあるのは珍しいのではないかと感じた。誰のためのラベルなんだろう?日本人の子供?日本語初学者の外国人?

言語ボタンを押すと下記のように画面全体に言語選択ボタンが広がる。選択肢は8言語で「日本語」「アメリカ英語」「簡体中文」「韓国語」「スペイン語」「ポルトガル語」「タガログ語」「ロシア語」である。どういう基準で選ばれたのかは謎である。

ちなみに英語を選択するとこのようなメニュー構成になります。行政サービス、コンテンツサービス、ファミマプリントが選択できなくなります。

ついでファミポート。こちらも右上に言語選択ボタンがある。ラベルは「日本語 / LANGUAGE」である。

こちらは選択可能な言語リストがモーダルで表示される。「日本語」「アメリカ英語」「簡体中文」「韓国語」「スペイン語」「ポルトガル語」「タガログ語」「ロシア語」に加えて「タイ語」が存在する。

ただし、言語選択してもほんとに反映されているのかわからなかった。例えばこれは中文を選択したときの画面なのだけど、日本語選択時と全く同じです。各コンテンツの中に進めば言語設定が渡されるのかも知れないけれど、これだとまずコンテンツ選択が無理だろうなぁなどと思ったりしました。

次にファミリーマート店頭に置いてあるATMのE-netである。こちらは右上にENGLISHボタンがあるが、画面にはそもそも日本語、中国語、韓国語で案内が書かれている。

右上のENGLISHボタンを押すと下記のような画面になる。

ローソン

次はローソンです。まずはコピー機。機械自体はファミリーマートのものと同じシャープ製なので画面構成もほぼ同じです。

言語ボタンを押すとでてくる選択肢もほぼ同じですね。

ちなみに英語メニューだとこうなります。日本語メニューとの違いはコンテンツサービスが無いところですね。そしてファミマでは英語だと選択できなかった行政サービスがローソンでは選択可能。何故だ。

次はローソンATMを見てみます。日本語のトップ画面はこんな感じ。

ENGLISH GUIDANCEを押すと、英語画面になります。

しかしこれ、日本語の画面のカードブランドの説明の下に英語でBefore inserting card, press the 「取引開始」 button one the lower right hand sideって書いてあるんだけど、このあとの画面で言語切替は可能なのだろうか。確認してくればよかった。

ちなみにロッピーに関しては、こちらはそもそも言語切替機能が存在しない模様。

と思ったのだけど、選択するコンテンツによっては言語選択機能がでてくる。

いやこれ、外国人はトップの画面だけ見て日本語しか無いんだと諦めるのでは…と思ったりも。

とりあえず大手3社のコンビニ店頭にあるキオスク端末のUIを確認したところで、次は鉄道の駅に行ってみたいと思う。

京浜急行電鉄

下記は京急の券売機の画面です。右上に英語、中国語、韓国語で言語切替ボタンがあることがおわかり頂けるかと思います。

このボタンを押すとこのような言語選択画面が出てきます。

東急電鉄

次は東急電鉄の券売機です。右上にInternationalと書かれているボタンが言語切替になっているのはちょっと新鮮ですね。これを外国人の方(特に英語が得意でない方)が認識出来るかはちょっと疑問です。

これをタップするとこのような画面になります。何故Languageにしなかったのかは謎です。それにしてもPasmoオートチャージさせたすぎでは…。

さて、東急電鉄の券売機コーナーには通常の券売機だけでなく、Pasmo/Suicaへのチャージ専用機も設置されています。こちらも下記のように、右上にInternationalと書かれています。

試しにPasmoを置いてみると、このような画面に切り替わります。先程のInternationalボタンの箇所には操作中止ボタンが表示されており、この画面まできてしまうともう言語の切り替えはできないようです。

JR東日本

次に向かったのはJRの駅です。こちらにもチャージ専用機がありました。こちらは画面上部に切替可能な言語が並ぶスタイルですね。

そして東急のものとの大きな違いは、Suicaをリーダの上においたあとでも、いつでも言語切替が可能な点です。なるほど操作途中での言語切り替えが出来るのは良いですね。

そしてこちらは通常の券売機。

こちらは右上にENGLISHへの切り替えボタンがあり、押すとこのようになります。このボタンはトグルで日本語と英語を切り替えられるようになっているようです。

つくばエクスプレス

つくばエクスプレスの券売機画像も提供頂きました。JRと東急をマージしたようなUIですね。言語切替ボタンは右上のInterantionalです。

ボタンを押すとこのような画面になります。

東武鉄道

続いて東武です。

こちらは右上のEnglishボタンを押すと英語表記と切り替わるトグル方式ですね。

都営地下鉄

都営地下鉄はこんな感じの券売機でした。画面左側に言語ごとの選択ボタンがありますね。

試しにEnglishを押すとこんな感じ。ラベルだけが書き換わる感じですね。

都営地下鉄にはもう1パターン券売機がありました。言語選択の方法は同じですが前述したものよりも大きな面積を占めています。

試しにEnglishと書かれたボタンを押すとこの通り。動作自体は前述したものと大きく変わらないような印象を受けます。

東京メトロ

今度は東京メトロです。右上にInternational Languageボタンがあります。

このボタンを押すとこうなります。選択出来る言語数は都営地下鉄と同じですね。

さて、次は銀行ATMを見てみましょう。

三菱UFJ銀行

右側に言語選択ボタンがあります。ボタンのラベルは英語、韓国語、中国語、ポルトガル語。

これを押すと下記のような画面で言語選択出来るようになります。

みずほ銀行

みずほ銀行の場合、ENGLISHと書かれたボタンがあるものの、他の言語はないようですね。

ちなみにENGLISHボタンを押すと、下記のような画面になり、赤い文字でCANCELボタンがあらわれます。日本語ボタンではなくCANCELボタン。興味深いですね。

三井住友銀行

右下に英語、中国語、ポルトガル語、韓国語が表記されたボタンがあります。

そしてこのボタンを押すと、このように言語ごとのボタンが並んだ画面に切り替わります。


所感

コンビニコピー機、ATM、券売機と、マチナカで我々が触れる機会が多そうなキオスク端末に絞ってUIの調査を行いました。その結果、良いUIの条件がある程度見えてきたように思います。

1. サービスが多言語に対応していることがひと目で伝わることが重要

不慣れなサービスを使う時、ユーザーは多かれ少なかれ不安になるものです。不安の種類も決してひとつではなくそもそも電車の乗り方がわからないとか、自分の目的が目の前の端末で達成出来るかわからないとか、様々なものがあるとは思いますが、ひとつは言語によるものがあるかと思います。そのため、ある程度目立つ場所に言語切り替えボタンを配置することが重要でしょう。

そしてそのボタンのラベルをどうするかもひとつの課題かと思います。個別のボタンに「English」「中文」「日本語」などとラベリングして、それらを押すことで言語が切り替わるというのも良いでしょうし、言語名を「Enlglish/한국/日本語」のように、あるいは「言語」を表すそれぞれの国の単語を「Language/언어/言語」のようにラベリングしたひとつのボタンを作り、そのボタンを押すと言語切替ページに遷移したり、あるいはモーダルが出て切り替わるというのでも良いでしょう。それぞれのボタンを用意するか、ひとつの言語切替ボタンを用意するかは悩ましいところですが、操作する前に、どの言語に対応しているかがひと目でわかるUIというのはビジュル的な諸々もあるとは思いますが実現出来るのであれば良いのではないかと思います。

なお、鉄道やATMなど、目的達成のために使わざるを得ないキオスクと、使わなくてもなんとかなるキオスクはある程度分けても良いのかも知れません。前者は、仕様困難でも電車に乗るという目的のためにユーザーは頑張ってくれるでしょうが、後者はそもそもモチベーションが高くありませんので、使い方がわからなければ簡単にドロップします。

2. 操作途中でも言語切替可能にしておくべきなのか?

これを実現しているUIは決して多くないように思いますが、操作中に言語切り替えが出来ることのメリットは小さくないのではないかと思います。特に、物理的な操作で操作を開始出来る端末や、物理的な何かが絡むためにキャンセル処理が面倒な端末では重要でしょう。例えば、銀行ATMであればキャッシュカードを入れることで操作が開始となるものもありますので、カード挿入後に言語切替が出来るかどうかは重要でしょう。少なくともどうすれば取引中止出来るか程度は日本語が読めない人でも理解出来るようにしておくべきかと思います。る

3. 地球儀マークはそこまで一般的ではない?

Webサイトやスマートフォンアプリに慣れたユーザーであれば、地球儀マーク=言語切替という認識を持っている人も多いかと思います。

しかしながら今回、マチナカのキオスク端末を調査した範囲では、これに類似したマークを見つけることができませんでした。もちろん、キオスク端末のUIはスマートフォンが普及する前に開発されたからだとか色々と事情はあるかと思いますが、少なくとも2018年現在、言語切替ボタンのラベルとして地球儀マークだけを使用するのはやや早計かもしれません。

4. 複数の国で使われている言語の取扱について

ファミリーマートとローソンのコピー機UIで英語がAmerican Englishと表記されていることが気になりました。英語は世界中で使われている言語ではあるものの、イギリス英語とアメリカ英語ではスペルや言い回しなどが異なることはよく知られた話かと思います。このようにひとつの言語が複数の地域で使われていることは珍しくありません。そのため、今回の調査対象の中にはありませんでしたが、言語選択メニューに安易に国旗を用いるのは避けたほうが無難でしょう。かと言って、American Englishとまで記述する必要があるかはわかりませんが。

5. テクノロジーをどこまで組み込むべきか

海外に行ったときお土産屋のおにーさんが観光客の顔をみて「ニーハオ」って言ったり「コニチハ」って言ったり「ハロー」って言ったり国籍を推定して話しかけてきますよね。これと似たような事、つまりユーザーの写真から機械学習で使用言語の推定してUIを切り替えるって多分頑張ればできなくはないかもしれませんが、技術的な側面以外の議論も注意深く執り行う必要があるだろうなとは思います。

6. キオスクのUIデザインに関する先行例はないの?

軽く検索したら2010年の台湾の高速鉄道の券売機に関する記事が見つかりました。少し古いですが、参考になるかもしれません。


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