「ミッションとは」「ビジョンとは」をわかりやすく定義する
クライアントの経営者や幹部の方と会社のミッション・ビジョンについて一緒に考えることがあります。その際、皆さん口を揃えて言うのは「ミッション・ビジョンはわかりにくい」ということ。これらの単語があまり直感的でないからなのかもしれません。よくミッションは「使命のことだ」と説明されたりしますが、使命といわれてもピンと来ないのが普通だと思います。
ミッション・ビジョンの定義はさまざまな言い方で説明されていますが、試行錯誤を重ねた結果、「これが1番ピンと来た」と言われた説明がありますので紹介したいと思います。
ミッションとは「世の中を、どうよくしたいか」
「世の中を、どうよくしたいか」あるいは「世の中を、こうよくしたい」、この問いに対するその企業なりの回答が、その企業のミッションです。ここでの「世の中」は「地球上すべて」「人類の未来」のように壮大な範囲であってもいいし、「私たちの地域」「来店するお客様の日常」のような身近な範囲であってもいいです。
範囲に制限はないですが、そもそも世の中に触れていなければミッションではありません。例えば「最先端の技術を提供する」はミッションとは言えません。
また、「どの部分を」「どうよくするか」の少なくともどちらかが無ければミッションとは言い難いです。例えば「人を幸せにする」というミッションを聞くことがありますが、「どう幸せにするのか」を明確にできるとよいです。
そしてミッションはよく「地平線のようなもの」と言われます。つまり見えているけれど、なかなかたどり着かない。場合によっては永久にたどり着かない。そのぐらいの果てしなさがあると望ましいです。
Microsoftのミッションは、
地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする
です。(個人的に大好きなミッションです!)
Yahoo!JAPANのミッションは、
UPDATE JAPAN 情報技術のチカラで、日本をもっと便利に。
です。
私が所属するRELATIONSのミッションは、
ええ会社をつくる
です。そして、ええ会社とは「顧客と従業員から信頼される会社」と定義しています。
各企業のミッションを見る際は、「世の中を、どうよくしようとしているのか」という観点で見てみると面白いと思います。
ビジョンとは「ミッションが実現したときの、自分達の状態」(がおすすめ)
ビジョンは、「ミッションが実現したときの状態」のことだと言われます。辞書で調べると将来像という表現もあるようですね。さて、この「状態」とは自分たち企業の外側、つまり世の中の状態でしょうか。それとも自分たち企業自身の状態でしょうか。
どちらが正解ということもないのですが、世の中の状態路線で検討をしていくと、次の点で難航してしまうことがあります。
・ミッション達成は果てしなく遠い地点のため、達成した光景を想像するためにはかなりの想像力が必要になる。仮に経営者が想像できたとしても、それを社員1人1人にも求めるのは難易度が相当高い。
・ミッションの言い換えになってしまいがち。例えば「おいしいパンを提供する」というミッションだった場合、ビジョンも「誰もがおいしいパンを手に入れている状態」というようになってしまう。
そこで、おすすめしたいのは自分たちの状態にフォーカスしてビジョンを検討する方法です。こちらは自分たちの企業状態、事業状態、組織状態、外部からの見られ方などが将来的にどうなるのか、というものになります。自分たち自身のことなので考えやすく、ビジョンのフレーズを聞いた社員も状態をイメージしやすいというメリットがあります。
Amazonのビジョンは、
地球上で最もお客様を大切にする企業であること
です。
ユニクロ(ファーストリテイリング)のビジョンは、
服のチカラを、社会のチカラに。
です。やや変則的ですが、こういうことをする企業・事業になろうというメッセージになっています。
カゴメの長期ビジョンは、
「トマトの会社」から 「野菜の会社」に
です。こちらは直球でわかりやすいですね。
もし、それでもビジョン策定の難易度が高いときは、
・ビジョンは、ミッションが「実現したとき」の状態ではなく、ミッションが「実現する過程」の状態とする
・ビジョンは数年単位でアップデートしてもよいものと捉える(スコープを短めにする)
としてみてもいいかもしれません。踏まえて言うなら、「ミッション達成を目指して数年経ったときの企業状態」がビジョンとなるでしょうか。企業としての数年後にありたい姿や、既存事業が目指している世界などがビジョンのヒントになるかもしれません。
ちなみに、調べてみるとミッションだけでビジョンを策定していない企業も多いです。もしミッション・ビジョンがそれぞれあることでかえって混乱を招くようであれば、どちらか1つのみとし、シンプルにしてしまうのも良いと思います。
ミッション・ビジョンは日々の判断に使われてこそ意味がある
ミッション・ビジョンは高尚でなければいけないような気がしますが、いくら素晴らしい内容であっても、1回作ってそれ以降は誰も意識しないという状態では意味がありません(我々はその状態を「額縁に飾っただけ」とか「埃をかぶっている」とよく言っています)。
経営判断時はもちろん、日々の施策の1つ1つまで「これはミッション達成に必要なことだろうか」という問いかけがなされるのが理想的です。そのためにもミッション・ビジョンの浸透が重要ですが、難解すぎて浸透しにくいぐらいなら、平易でも皆に伝わるものの方が目的にかなうのではないでしょうか。
特に策定後、1番ミッション・ビジョンを口にするのは経営者です。不格好であっても経営者自身の思いをこめたものの方が、結果的に日々意識されるものになるケースが多いようにも思います。
自分たちらしいミッション・ビジョンは何なのか、これらの定義を参考にしてぜひ探してみてください。
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※冒頭画像はLarisa Koshkinaから
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