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リーダー育成にコーチングは有用か?

このGW中に、Zoomオンラインで、2019年に一緒にプロセスワークを基軸としたコーチング(※)を学んだ仲間と語る会をやってみた。(※コーチングにも様々あるが、私は2015年にポジティブ心理学コーチングを学び、2019年に60時間のプロセスワーク・コーチング基礎を学んだ。ポジティブ心理学とは個人や組織のWell-beingに焦点をあてた心理学であり、プロセスワークとは個人と組織の変容を促すプロセス指向心理学とも言われる)

その会話に出てきた話題が、「リーダー育成にコーチングは有用なのか?」という問い。

私自身、会話の中では「リーダー育成にコーチングは有用だと、信じている」と答えたのだが、、、会が終わってからもこの問いが頭から離れなかった。それは私の中で新たな疑問が生まれてきたから。それは「もしかして、私は、『リーダー育成にコーチングは有用だ』と、信じているのではなく、信じたい、という願望なのではないか」という疑問である。

この話題「リーダー育成にコーチングは有用か?」については、賛否両論あると思うが、ふと湧いてしまった自分の疑問のために、今の自分で考える範囲で考えてみたので、備忘録としてメモしておきたい。

この問いには、大前提として「リーダーは育つのか?」という点でも問いができてしまうが、「育成」の定義についてはそれだけで別の議題になってしまうので、ここでは一旦「育成=行動変容」と定義しなおし、「リーダーの行動変容にコーチングが有用か?」という問いに対して、考えてみたい。(このテーマに対して多くの研究がされていると思うが、あくまでも私自身の経験からの個人的な考えの整理である)

私自身の経験から

1)自分自身がコーチングを受けた経験から

スポーツの世界ではコーチの存在やコーチングは長い間当たり前だったと思うが、ビジネスの世界では、振り返ってみると、私が社会人になった1998年頃から、「キャリアカウンセラー」や「ビジネスコーチ」といった言葉が聞かれるようになったように記憶している。(注:調べてみると、1996年に国際コーチ連盟が設立され、日本には1997年に導入されているので、記憶とほぼ同じだった)。

私は今まで、きちんとお金を払って「コーチング」として受けたものもあれば、メンターとして相談する中で結果としてコーチングをしてもらったものまで、色々なパターンでおそらく10名以上ににコーチングをしてもらった経験がある。記憶がある限り、最初は社会人3年目、2001年頃、仕事でうまくいかないことがあって、どうしてよいか分からず悩んでいた頃に、知り合いから紹介してもらった人に初めて自分でお金を払ってコーチングをしてもらった。その後も、自分が人生でどのように生きたいのか悩んだ時や、キヤリア転機の時には、不思議とその時に一番最適な人がコーチになってくれた。その時のコーチングで出された宿題は実行できたこともあったし、気が乗らなくてできなかったこともあったが、コーチからの「問い」はその後もずっと頭の中に残っていて、自分の行動パターンを見直したり、価値観を言葉にする際に役立った。

【気づき】行動変容には、「変えたい」という思いがエンジンとなる。「問い」は脳に記憶される。


2)自分が人事という仕事を通じて、見たり体験した経験から

人事という仕事、特にHRビジネスパートナーやリーダーシップ開発の仕事には「ビジネスリーダーをコーチングする」という仕事も含まれている。私が尊敬する人事リーダーのほとんどは、自らが素晴らしいエグゼクティブコーチングができる人達ばかりだった。尊敬する人事リーダー達は、皆、人に対する優れた洞察力と自分自身の価値観を持っていて、コーチングを受けるビジネスリーダーに、いつも簡潔で短く、しかし相手が突かれたら痛いと感じる「問い」を投げかけていた。「問い」がコーチを受ける相手にとって大きな気づきと発見であればあるほど、コーチングを受ける相手が自分の中で起こる感情や反応が大きく、そこから本人の行動が変わるケースが多くあった。一方、コーチングを受ける相手が自分の中で起こる感情を受け止めきれずに、行動が変わらないケースもあった。

【気づき】「問い」は、自分が気づいていない、もしくは気づきたくない価値観や思考・行動パターンを発見するスイッチとなる。スイッチが押されて扉を開ける(受け止める)どうかは、結局のところ自分次第である。


Why? なぜ、コーチングはリーダーの行動変容に有効なのか?

コーチングの「問い」によって、自分について大きな気づきや発見がある場合、行動変容にとって有効となる。その気づきや発見が、自分の価値観を明確にし、自己認知力を上げる。自分の感情や思考に影響を及ぼし、その結果として行動が変わる。逆にいうと、気づきや発見がない場合は、行動変容には至らない可能性が高い。

What?  何が、コーチングでリーダーの行動変容を有効にするのか?

コーチからの「問い」によって、コーチングを受けている人の中で沸き起こる感情や思考への影響が、行動変容にとって有効となる。コーチは「問い」のために、コーチングを受ける人が発する言葉だけではなく、態度や表情、目線、仕草、特に無意識で行っていること、を注意深く観察する。そして観察した結果を、コーチの先入観を入れることなく、そのまま伝えることで、コーチングを受けている人の気づきや発見につながる。一方、コーチ自身の心理状態が安定して集中していないと難しい。

How? どのように、コーチングがリーダーの行動変容を促すのか?

「問い」がどんなに優れていても、コーチングを受ける人との間に信頼関係がなかったら、受け止められない。また、「問い」が詰問風になっても受け止められない。「問い」が、信頼関係の上で成り立つ「対話」になっている時に、コーチングを受ける人は自分の中で沸き起こる感情や思考への影響を受け止め、それを新たな洞察として行動変容に繋げられる。

今の時点での、私なりの結論

現時点で、自分の経験、学習からの学びを整理してみると、やはり、私の中では「リーダーの行動変容にコーチングは有用である」という結論に至った。ただし、行動変容に至るまでには、複数の変数があり、コーチやコーチングを受ける人自身のいくつかの条件が良い状態で組み合わさる必要がある。人は、毎日、感情も変わるし思考も変わる。信頼関係も常に同じ状況が続くとは限らない。だからこそ、一朝一夕で一喜一憂することなく、コーチングの有用性に過信することなく、でも、コーチングの可能性を信じて行動し続けること、が重要なのではないか、と考えている。そして、この疑問はおそらくこれからもずっと私の頭の中にあり続けるだろうから、これからも時折、立ち止まって考えてみたい。

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