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キャリア転機を振り返り、新たな道(Process of Path for Purpose)を創る

2023年5月14日、4年6ヶ月働いたユニリーバの最終日だった。
ユニリーバでは、入社早々、仕事では山あり谷あり色々あったが、ユニリーバの価値観「Be Yourself(自分らしく)」や、一緒に働く仲間、自分で働き方を決めるWAA(Work from Anywhere and Anytime)によって、在職中、私のウェルビーイング(Well-being)は確実に高まった。せっかくなら、「私らしい最終日にしたい」と、送別会ではなく自分で企画する壮行会をやらせてもらった。
Employee Experience (EX) を上げる辞め方改革~送別会よりWell-beingアガる壮行会|岡田美紀子 (note.com)

2023年5月15日からは、ベーリンガーインゲルハイムというドイツ系製薬会社で タレントマネジメント責任者の仕事(Japan Head of Talent, HR Governance & People Analytics)をスタートした。

自分の今までのキャリア転機を振り返り、自分のパーパスや志事に決意を新たにし、こらからやりたいビジョンを言葉にすることは、自分の人生に意味と意義を見つけることに繋がる。なぜ、私が今この決断をしたのか、これからの人生で何をしたいのか、自分自身への備忘録として残しておく。

私のキャリアに影響を与えた価値観

私が大学を卒業して就職した1998年は、まだ就職氷河期で、大手企業の倒産も相次ぎ、景気も良くなかった。そんな中でスタートした私のキャリアだが、振り返ると、客観的に見ても恵まれている、と思える。
「恵まれている」という理由は、単に報酬面のことを指しているのではなく、
1)報酬を越えて仕事や人間関係から自分を成長できる環境があり、
2)仕事や職場を通して常に自分の存在意義を自分に問い続けることができ、
3)会社の理念や価値観が自分のキャリア形成に良い影響を与えてくれた、から。

私のキャリア形成に良い影響を与えてくれた価値観とは、主に以下である。

リクルートエージェント
『自ら機会を作り出し、機会によって自らを変えよ』

GE
『Control your own Destiny or someone else will(自分の運命は自分でコントロールせよ、さもなくば誰かにコントロールされてしまう)』

ユニリーバ
『Be Yourself(自分らしく)』

改めて3つ並べてみて、気づく共通点は...「自分軸」である。
「自分を知ること、自分を受け入れること」は、とても難しいのだが、上記のような価値観を持つ会社の中では、常に仕事を通してフィードバックを受けることができ、「自分」を知る原動力となった。その結果、自然と「常に自分のキャリアは自分で創るもの」という考え方が根付いてきたのだ。

社会の変化x自分の変化が重なる時が、キャリアの転機に繋がった

1社目 リクルートエージェント(1998年~2008年)で学んだことは、『個人の能力を最大に引き出す文化・仕組み』
日本で転職・中途採用という市場がまだ成熟していない時に、大学卒業したばかりで転職したことがない立場でも、徹底してお客様に向き合い、自分で考え、意見を発信することが受け入れられる風土だった。転職エージェントという事業サービスを通して、日本にある幅広い業種・会社・仕事を多面的に知ることができ、「どんな会社にも、どんな仕事にも、必ず魅力があり、そこで働く人のやりがいがある」と自分の視野が広がった。同時に、この時期、私自身の心境の変化として、外資系企業のクライアントを通して「いつかはグローバル市場でリーダーシップを発揮できるようになりたい」という想いが強くなり、仕事をしながら通う海外の大学院(UCLA- NUS Executive MBA)へ挑戦し、GEへの転職を決意した。

2社目 GEおよびGEグループ(2008年~2017年)で学んだことは、『グローバル事業・組織を通じてリーダーが成長し続ける仕組み』
ちょうど、2008年~2009年、世の中がリーマンショックで景気が悪化する中、GEの転職と同時に仕事をしながら通う海外の大学院(UCLA- NUS Executive MBA)に通うことで、仕事でも大学院でも自分の視点が一気に「世界から見た日本」になった。私がいた時代のGEは、金融、エネルギー、航空機エンジン、ヘルスケア、等、複数の異なる事業が並列しており、「国を越えグローバル事業で組織を牽引するリーダー」を体現する人達を間近に見ることができた。リーダーとして魅力的な人は、役職ではなく、国や文化を越え、自分の信念や価値観をもとに、ビジョンに向かいリーダーシップを発揮し続ける人達だった。そして常に好奇心を持ち学び続け、自己成長への情熱がある人達だった。
自分がGEのHRとしてどこまで成長できるのだろう、と、立ち止まった時に、知り合いから「日本発アジアへ、美容と健康事業を海外拡大する組織の人事立上げをやってみないか」と誘われ、自分のリーダーシップが海外市場でどれだけできるか挑戦したくてGEを卒業する決意をした。

3社目 MTG(2017年~2018年)で学んだことは、『理念経営の浸透と、個の多様性のバランス』
在籍していた期間は短かったが、その間に、創業社長の会社で、理念経営の浸透、日本発グローバル事業で海外現地法人立上げ、株式上場、と、会社の急激な変化を体験できた。会社の理念に全社員が一丸となって向かっていく理念経営の浸透の中で、私が改めて気づいた自分の価値観は「私は、多様な価値観を尊重し、個の能力を活かす風土文化が合っている」ということだった。気づいたら、私の存在意義である「自分」を見失っていた。
その時に、運よく「会社と個人のパーパス」を大切にするユニリーバでHRBPの仕事で声をかけていただき転職を決意した。

4社目 ユニリーバ (2018年~2023年)で学んだことは『会社と個人のパーパスの両方を存続させるウェルビーイングな働き方』
ユニリーバでは、HRBP、人材開発、そして最後は、人事総務部門横断でエンプロイーエクスペリエンス(EX)部門立上げを経験できた。ユニリーバ日本法人は2016年から柔軟な働き方の制度、WAA(Work from Anywhere and Anytime) があったが、これは社員が自分で自己決定できることがウェルビーイングに寄与していた。2019年に地域deWAAという名前でワーケーション制度に発展させたり、2020年からのコロナ禍で「ユニリーバらしい、社員のウェルビーイングを第一に考える働き方とは何か」を人事として日々、問い続け、試行錯誤し、制度を変え、人事チームメンバーの成長と専門性を上げられたことが、私自身の大きな喜びでもあり成長体験となった。
そしてこの間、ウェルビーイングの研究をしているポジティブ心理学を学び実践し続けるだけではなく、新たにプロセス指向心理学という、組織と個人の深層心理学を基盤としたコーチングを学んだことも、私自身の在り方の変容に影響があった。

なぜ、今、転職するのか?

ユニリーバの価値観(Be Yourself)は私自身の価値観とも合っており、『会社と個人のパーパスの両方を存続させるウェルビーイングな働き方』はこれからもずっと探求したいテーマである。それを実現するためのプロセス作り(制度、仕組み、運用)も、私が好きなことである。

一方、2022年、自分の生き方に大きな影響を及ぼす出来事が続いた。
それは、2022年1月の母の急逝、そして2022年11月に自分自身の乳がん発覚と手術、である。幸い、私の乳がんは初期の発見であり、標準治療の手術と放射線治療を終えている。
しかし、この2つの出来事を通して、私が思ったことは「人は本当にいつ死ぬかわからない。だからこそ自分の命を今まで以上に大切に生きる。自分の使命と思える仕事(志事)に時間とエネルギーを使いたい」ということだった。今、私がなりたい姿は、自分自身のキャリアの原点でもある「個人と組織の強みを引き出し、組織と人の能力開発・成長支援・変革を実現する人になる」である。
今、社会、組織、人の価値観、すべてがすごく早いスピードで多様化しながら進化している。(と、感じる)社会の変化は特に目覚ましく、長寿になり人生100年時代で何度でも学び直す時代の中で、VUCAや越境という環境変化だけではなく、IoTやAIと人間コミュニティが混在する時代突入の中、個人の生き方や価値観の多様性は増し、組織運営もティール組織に進化していく中で、個人と組織のパワーバランスも変化している。
「組織と人の能力開発・成長支援をする」ということは、その進化の中で「人が個として尊重されながら成長し、組織として繁栄していく方法を模索すること」であり、それは、今、私が、とても探求したい分野でもある。

ベーリンガーインゲルハイムという会社との出会い

ユニリーバ でもタレントマネジメントという概念や仕組みは存在する。しかし、日本の組織人数ではタレントマネジメント専任をおける状況ではない。会社の価値観と合っていても、その会社に自分の希望する仕事があるとは限らない。
私は、自分がキャリアの転機だと考えるときは、転職ありきではなく、視野を広げて、多くの会社や人と会って話を聞いて、自分のやりたいことを伝えてみる、ということをしてきた。
今回も、色々な会社の方とお話をする中で、出会ったのが、ベーリンガーインゲルハイムという会社だった。

ベーリンガーインゲルハイムは上場していないドイツ本社の製薬会社であり、世界約130か国で約52,000人の社員が働いている。私が共感したのは、パーパス「Transforming Lives For Generations」で、短期的利益よりも持続可能な未来に視点があること、ミッションの一つに「We are powered by our people」と掲げていることだった。

Explore our company | Boehringer Ingelheim Careers (boehringer-ingelheim.com)

長期で人材育成に投資をする環境

今、人的資本経営が注目されているが、実態としては、多くの上場している会社では、長期で人材育成に投資ができにくい環境にある。それは、人材育成への費用を「投資」ではなく「費用(コスト)」として計上する資本主義の中で作られたルールがあるから。ベーリンガーインゲルハイムは非上場なので、研究開発にも人材育成にも長期的視点で投資している。そんな環境で「組織と人の能力開発・成長支援をする」タレントマネジメントの仕事をしてみよう、と思った。

医療業界に貢献する

そしてもう一つ、2022年の自分の乳がん治療体験から、医療業界への感謝と危機感が新たに芽生えた。
GEヘルスケア時代も医療機器やライフサイエンス分野に関わっていたが、自分が患者という立場で医療の恩恵を受ける側になると、医療従事者の人への感謝と彼らの存在や働き方に関心を抱くようになった。
今の医療制度が少しでも未来に続くように、医療の格差が起きずに必要な人が医療を受けられるような社会が続くように、自分が医療業界の人材開発に関わることで間接的にでも貢献したい。

『道を創る』
「自分の命を今まで以上に大切に生きる。自分の使命と思える仕事(志事)に時間とエネルギーを使う」
それが、私が考える「新たな道(Process of Path for Purpose)を創る」ことに繋がる、と信じて。

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