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#翻訳 なぜAQ(適応力)がIQ(知力)やEQ(共感力)より重要なのか。

これからの時代に人間に必要な能力は、IQでもEQでもなく、AQ(適応力)であるという記事。
新しい分野に興味をもって、素早く学び活用できるような人間こそ、
長い目で見たときに成功できるというのは、言われてみればなるほどなと。

特に日本企業は昔の成功事例にこだわる傾向があるなと思っていて、
・新しいことをポジティブにとらえる
・核をぶらさず、やり方だけ大胆に変える
というのが苦手な気がする…(私も)

今の時代「だからこそ」必要な能力って何だろう?という風に考えるよいきっかけになりました。

原文:Damn Girl, You’ve Got a High AQ (2018年1月6日)
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「すごい、AQ高いんだね!」
なぜ適応力がIQやEQより重要なのか

私はしょっちゅう、近い未来(例えば2045年とか)はこんな感じだろうと考える。

高校から歩いて帰る途中、マックスは角の日用品店によって神経剤を引き取る。医者によって処方された、神経を適応させるための調整を行うものだ。彼女は明日の午前10時ちょうどにそれを飲み、AEIを受けるのだ。神経剤は彼女の脳の新しい神経回路を作る能力を加速させて、急激な変化にさらされた時に、新しい行動習慣やつながりの見つけ方を短期間で習得できるよう助ける。AEIとは標準化された試験で、SATに代わる試験として10年前に導入された。AEIは、現代の職場における利発さと計画性についての、国際的に認められた指標になった。

口語的に"Qs"と言われるが、AEIテストは3つの変数をテストする。適応性指数(AQ)、感情指数(EQ)、そして知能指数(IQ)。それぞれが大事なのはもちろん、AQが一番優先度が高いのは明らかだ。適応性で強いスコアを出すことは、'会社員コース'に向いているという意味になる。会社員コースでは、最低3年の契約を結び、雇用者たちは結構な額をあなたの再訓練に向けて1~6か月単位で送り込む。低いスコアだと、あなたは’単発コース(ギグコース)'に頼るしかない。この働き方は柔軟性もあって手取りも高いが、短い契約期間で、教育機会がない。もしあなたが、継続的に切迫した需要がある産業ではなく、干からびた産業の間違った場所に長い間い続けてしまったとしても、セーフティーネットは内在していない。

AQとはなにか、なぜ重要になるのか?

2045年のニューヨークにまだ日用品店があるなんて成できないかもしれない(それはそうだろう!)、しかしAQ(適応性指数)への信頼度の高まりはまず間違いなく起こると考えている。
技術は急激に変化しており、私たちはこれまでに人間が必要だった速さ以上のスピードで猛烈に学ぶことが求められている。この数十年で獲得した行動習慣は、たった数年で時代遅れになるだろう。人間が元来持っている神経可塑性は、年々仕事が大胆に変わっていく環境で、45年(もしくはそれ以上)のキャリアを成功させるには十分ではないかもしれない。

AQはすぐに成功の主要な指数になる。IQとEQより、いかに素早く断続的な変化に追いつけるかが優先されるということに、私は確信を持っている。

1990年代後半、私たちは感情指数ブームを目撃した。ダニエル・ゴールマン率いる学者や心理学者が、私たちは”人間的な”賢さを優先する代わりにIQを多用しすぎてしまったと説得した。ビジネスでは、EQの概念は革新的と言われ、"特にリーダシップと従業員開発の領域において、感情指数を『草分け的な、パラダイム転換な考え』で、この10年で最も影響力のあるビジネスアイディアだとハーバードビジネスレビューも絶賛した"とゴールマンは言う。

EQは重要だが、それは椅子の足の1つに過ぎない。私は繰り返し、キャロル・ドウェックの成長のマインドセットを説明してきた。IQもEQも変えられない属性ではなく、むしろ献身的なハードワークを通じて開発できるものである。AQもおそらく似たようなものだと推察する。ある者は生まれつき高いAQをもつが、お互いが時間をかけてそれを補うために働くことができる。私たちは皆、変化を嫌う友達を持つし、新しい経験の時に活躍する友達もいる。潜在意識の中ではAQは存在し、それは人によって偏りがあると気付いているが、そのことについて話していないだけなのではないか?と私は考えている。
その上、私たちはテストしたりその能力を伸ばすための強制的な方法を持っていない。

"感情指数"でグーグル検索するのは、深い穴の中で叫ぶようなものだ。上位にくるのは、業務変革のコンサルティングファームのリーダによって書かれた短い企業記事と、2011年のハーバードビジネスレビューの記事「適応性:新しい競争優位性」(読む価値あり)と、シンギュラリティ大学のブログ記事(AQの概念を初めて知ったのはこれだ)だ。それ以外は、実質的には何もない。

もし今日の学者や科学者がEQの時のようにAQを語らないのであれば、この仮説を検証するための事例はどこ見つけられよう?

実生活の例:高AQ vs 低AQ

組織的なAQ:IBM vs kodak
Innosightによる、ほぼ1世紀分の有効な市場データをもとに作成された2012年のレポート("企業の寿命:大組織を襲う乱気流とは")によると、1965年にS&P500(※訳注:株価の指標を算出する際に利用する代表的な500社)指数の企業は、平均33年間指数に選出され続けている。1990年からは、S&P500にとどまり続けるのは20年に知事まり、2012年には18年に下がっていて、2026年には14年に縮まると予測されている。現在の離脱率では、S&P500企業の半分は次の10年でほかに代わられる。”大企業のライフサイクルがこれまで以上に短くなりつつある中で、変化は加速的に広がっている。"(マーク・J・ペリー)

私の前職であるIBMは、1955年と2016年どちらも指数に入っている12%の会社の1つだ。以下が全60企業になる。

なぜIBMは長い間成功してきたのか?私が直接経験したところでは、IBMは強い組織的AQを有している。私がハーンドンでの初日研修、VA(米国社員全員が必須)で見た、IBMのコアコンピテンシーのスライドは今でも鮮明に覚えている。IBMはハードウェアの会社ではなく、ソフトウェアの会社でもなく、彼らが謳うのはIBMはイノベーションを提供するということだった。

イノベーションは自然に進化し、変わりゆく潮の流れの中で良いIBMは良いポジションをとってきた。1880年から1924年、IBMは表計算マシンを売った。1933年は電子タイプライターを。1960年代は、メインフレームの端末を最初に市場に出した企業の1つになった。その後、走査型トンネル顕微鏡やソフトウェアのためのPCや、コンサルティング事業で収益化した。2014年にIBMワトソンを発表し、私はIBMのトップ機械学習エキスパートの一人と一緒に働いた。2017年まであっという間に過ぎ、今彼のリンクドインのプロフィールには"ビットコイン&電子貨幣産業専門”と書かれている。IBMは素早く方針を転換する。いつもお金の方を向いている。

IBMの曲線と対照的なのはコダックで、IBMはコダックより高いAQを持っていることは明らかだ。携帯電話の技術、最終的にはソーシャルメディアの普及による写真のシェア低下に直面し、1990年代からコダックは急激な業績不振が始まった。ビジネスモデルは死にかけの写真フィルムに深く根差していた。会社は新しい利益を得て資金繰りをするためにもがきながら、ゆっくりと、デジタルプリントやデジタルフォトフレームなど関連産業に着手した。IBMと異なり、コダックは生き延びるのに十分は組織的な適応力がなく、最終的には2012年に経営破綻した。

国家的なAQ:スウェーデン vs アメリカ

ニューヨークタイムズは先週、自動化及びそれがもたらす生活への影響に対するスウェーデン人の視点に関して、魅力的な記事を出していた。インタビューされたスウェーデン人の1人、ミカ・ペルソンはリモートの採掘従事者で、トラックの運転手の代わりにするための自動運転の車のテストをしている。

"ペルソン氏(35)は、4つのスクリーンの前に座っていて、1つは彼が操作するローダーが、壊されたばかりの銀や亜鉛、鉛を含む岩を持ち上げるのを表示している。もし彼が採掘場に降りて、ローダーを手動で操作していたら、埃と煙を吸ってしまうだろう。その代わりに、オフィスで横になり、リモコンを使って機械を操作しているのだ" (ニューヨークタイムズ)

ペルソン氏と、そもそも国家が既存の仕事の自動化を恐れないのは、強い社会的なセーフティーネットがあるからだ。政府が健康福祉と無償教育を提供するのに加え、雇用者も職業訓練のプログラムにお金を使う。
"スウェーデンの労働省は、仕事が消えたら、人々を新しい仕事の訓練に当てる。仕事は守らないが、労働者は守る。スウェーデンの労働組合も、仕事をより安全にし競争優位性を獲得するため、徐々に自動化を取り込んでいる。”(NYT)
もし今日AEIテストが存在していたら、スウェーデンは極めて高いAQを記録すると思う。

しかしアメリカ(私もだ)は、スウェーデンと対照的に、自らのAQを深く疑っている。USでは、健康への支援は雇用者に依存していて、
"失業は深い破滅を導きかねない。仕事の自動化は労働者をいやいや仕事からはがし、もっとやりたくない仕事にあてがわせると考える。だから組合は、どうやって仕事を守るかに、他の何よりも注意を払っている”(NYT)

このマインドセットでは、ロボットやコンピューターが人間にとって代わる未来について、72%のアメリカ人が”不安だ”と答えている(Pew Research調べ)一方で、ロボットや人工知能について80%のスウェーデン人がポジティブな見解を表明している(Europian Commission調べ)のも無理はない。

個人のAQ:ヤンヤン・チェン

2003年、ヤンヤン・チェンは大学を卒業し、アーネスト&ヤング香港の監査役として働いていた。2007年には、彼女はペッパーダイン大学で非常勤講師として世界中で中国語と中国文化を教える傍ら、夜間にインプロのレッスンも受けていた。2009年には、彼女は異文化理解の力を拡張させ、ハロー!ハリウッド!というテレビ番組の司会も務めた。この番組はLAで撮影され中国本土で放映されたが、ヒットした。中国の3億人が、ヤンヤンが”ハリウッドのライフスタイル”を紹介し、西洋の文化を家庭に取り込むのを視聴した。2012年には、これまでの成功にもかかわらず4回目のピボットで、Yoyo Chineseという英語話者がマンダリンをオンラインで学ぶための動画教材のプラットフォームを立ち上げた。Yoyo Chineseはこれまで30万人以上の世界中の生徒に、1200万回以上レッスンを配信している。私のお気に入りは以下の、ヤンヤンがマンダリンを映画「ララランド」の歌を通じて教えているものだ。(再生回数は4.8万回以上)

ヤンヤンは明らかに適応力が高く、それは15年もたたずに大成功したキャリアからわかるだけでなく、彼女が各ステップで示している成長のマインドセットからも明らかである。彼女は興味によってモチベションを高め、―だから夜にインプロの授業をとったり―そして自分の専門領域と活躍できる場所を結び付けてYoyoChineseという大きなビジョンを描くように、自分の経験を通して未来を見通すことができる。

AQに対して次に起きるのは?

私にとって、IBM、スウェーデン、ヤンヤンは、我々は将来高校でAQテストをしたり神経調整ピルを使うような未来に向かっていると確信するのに十分である。
より広い意味で、3つのことが起こりそうだなと考えている。
1. 社会として、適応力が未来の成功にとって重要だと合意され、AQのための指標が必要になる
2. AQをテストし、時間とともにそれを高めていくための新しい方法を探し始める
3. 大規模の産業ほど、AQの急成長が求められる―製薬から教育まで、ゲームからメディアまで(おそらくヤンヤンがホストのTV番組でさえも!)