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Margo-物語と糸- #40 |『ムーミン』を染める 8

Margoが糸に込めた「ムーミン」の世界。最後の1色は「ちびのミイ」です。


「おさないでよ!」
ほんとに小さなさけび声が、さいほうかごの中からきこえました。
「あらっ、またあんたの妹が、わたしのさいほうかごの中にいるわ。そのうちに、はりでけがしちゃうよ」
と、ムーミンママはいいました。
「ミイ子! でてきなさい、すぐに!」
ミムラねえさんは、こわい声でいって、毛糸のたばの中から、妹をつまみだそうとしました。
(『ムーミン谷の夏まつり』下村隆一/訳 講談社文庫より)


 ムーミンママの裁縫かごの中に入り込めるほど体の小さなミイ。夏至の頃に生まれたミムラ夫人の36番目の子どもで、長女のミムラねえさんがお世話をしています。
天真爛漫で怖いものしらず、自由奔放でときどき物事の本質を突く発言をしますが、悪意は一切ありません。本音でのびのび生きているところが気持ちよいキャラクターです。
 ミイはトーベにとって「なりたかった自分」なのだそう。自分を偽ることなく生き、自由に発言するミイは理想だったのでしょう。
 そんなミイをイメージして、毛糸を染めました。自由で元気なミイらしさを大切にした結果、なかなか個性的な糸に仕上がりました。



自分のなかのミイ
 ムーミンの主要キャラクターでいえば、ミイの対極にいる存在がスノークのおじょうさんではないでしょうか。お花とおしゃれが大好きで優しい心根をもっており、とても女の子らしいヒロイン。危険なことや面白いことが好きで、自分本意で行動するミイとは真逆の存在です。
 しかしわたし自身を振り返ってみると、「女の子らしい」スノークのおじょうさんと「自分らしい」ミイの両方が、自分のなかにいるように思います。どっちも嘘ではない自分の一部だけど、ミイの部分は成長するにつれて、周りとうまくやるためにそっとしまい込んできた感じ。(女の子らしさのほうも、加齢とともに自然に摩滅して行ってますが……)
 だからでしょうか、大人になってからのほうがよりミイを好きになっているように思います。
わたしのまわりを見ていてもミイは人気のキャラクターですし、Margoの今回の毛糸販売で一番人気だったのも色だけのせいではないように思います。きっと誰もが自分のなかにそっと持っているミイがいるからこそ、女の人はみんなミイが好きなのでしょう。


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