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美しきバルール5 初恋

「付き合っちまえよ」

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凛が声のした方を見ると、取り巻きに囲まれた上川がいた。「付き合っちまえよ。おまえら」凛の顔をみて笑いながら、また上川が言った。ポカンとして上川を見返すと上川の取り巻きの佐藤が下を向いた。色白の佐藤の顔が赤くなっている。

凛はどこか知的な雰囲気の上川に憧れていた。だが、上川には彼女の”ワカちゃん”がいる。当時はやっていた漫画”ホットロード”を思わせる上川とワカちゃんはとてもお似合いで凛の憧れは胸に秘めていた。

10代の男女の共同生活は食事と恋愛のウエイトが大きい。ごく狭い人間関係の中でも小さな恋愛がよく生まれていた。上川は凛と佐藤をくっつけようと思ったらしい。寮の廊下で、造園会社の現場で、何度となく「凛ちゃん、佐藤と付き合いないよ」と上川に言われるうち、凛も佐藤が気になるようになってきた。

「凛ちゃん、夜二人で抜けようよ」ある日佐藤が話しかけてきた。真剣な目をしている。「無理無理!」凛はすぐ断ったけど佐藤が寄せる好意は、内心嬉しい。

凛にはこれから山の農場で研修が待っている。関連施設の一つにトマトを栽培する農場があった。寮で生活する子供たちは定期的に研修を受ける義務がある。そこで、断食をはじめとするストイックなカリキュラムをこなしながら一週間を過ごすのだ。それを終えて寮に戻ってきたら佐藤と真剣に向き合ってみようか。

ストイックな寮生活に花が咲いたように感じはじめた。

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