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「壬生義士伝」と「永遠の0」

百田尚樹が放送作家の仕事の合間を縫って「永遠の0」を執筆していた時のことです。

執筆中の彼のそばに奥さんがやってきて言ったそうです。


「家計が大変なんやけど」


迂闊にも彼は家計が火の車であったことを知りませんでした。
一気に書き上げたいと思っていた彼は


「とりあえず、書いたところまで読んでくれへんか」と原稿をプリントアウトして渡します。

三時間後、奥さんは静かに言ったそうです。


「家計のことは私が何とかやりくりするから、これを仕上げてください」

もし奥さんに「こんな原稿はおいといて、仕事をしろ!」と言われていたら、そうするつもりでした。

「永遠の0」は無名の新撰組隊士である吉村貫一郎という男の凄絶な人生を描いた「壬生義士伝」のオマージュです。彼はこの作品に非常に感銘を受け、「昭和の壬生義士伝を書いてみたい」というのが動機の一つでした。

「壬生義士伝」を漫画化したながやす巧は原作を7回読んで泣き、8回目にやっと涙が枯れたので描き始めたと言います。
実は私も今まで様々な本を読んできたつもりですが、号泣したという記憶があるのは「壬生義士伝」だけです。

百田尚樹ほど毀誉褒貶の多い、いやそれどころかこれほど国内外から非難を浴びている作家はいないでしょう。リベラルの人々からは蛇蝎の如く忌み嫌われていますが(百田尚樹の本は絶対に読まない、と断言している人を知っています)、「永遠の0」は五百万部を超える大ベストセラーになりました。

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