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『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

著者は貧困家庭で育ち、福岡の名門高校に進学したが同級生たちは親が医者や弁護士や社長ばかりで疎外感を感じていた。ある時パンクロックを知り、労働者階級の自分を誇りに思う人がいることに感銘を受け、バンドを組み、セックス.ピストルズのファンクラブ会長になる。

試験の答案用紙の裏に大杉栄のミニ論文を書いたところ(セックスピストルズ の「アナーキー.イン.ザ.UK」の影響だろう)、それを読んだ現国の教師に大学に行って本を読み、物を書け、と熱心に勧められる。その一方で他の教師からバイトをしている理由を聞かれ、通学定期代を稼ぐため、と言うと「今どきそんな貧乏な家があるわけなかろう」と言われて学校に行くのが嫌になった。

僕も高校の時にパンクに衝撃を受け、自堕落な生活から目が覚めた。世界で起きていることを知りたいがために様々な書物を濫読し、答案用紙に幸徳秋水無罪論を書き、日本史の教師に呼び出されたことがあった。あの時代、パンクに影響を受けた世界中の若者はバンドを始めるか政治思想に目覚めるか奇抜なファッションに身を包むかだったのだ。

著者は大学には行かずにバイトでお金を貯めては渡英することを繰り返すうちにアイルランド系英国人と結婚し、ブライトンに住む。
元.底辺中学校に通う息子とのやりとりが主軸だ。人種差別、EU離脱と移民問題、ジェンダー、LGBT運動、PC(ポリティカル.コレクトネス)、貧困などの世界の縮図のような日常をパンクな母ちゃんと息子は共に考えていくのだが、この息子の感性には驚嘆する。低所得団地に住む友人のティムにある事で息子が言う。

「友だちだから。君は僕の友だちだからだよ」

地下鉄で読んでいたのだが、急に花粉症になって困った。

ジョン.ライドンをわが師匠と呼ぶ著者。そうでなければこの息子も生まれてこなかったという不思議さ。

私にとってもあの時代ピストルズとリアルタイムで出会ったことはまさに僥倖だ。奇跡と言ってもいいほど幸せに思う。

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