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ノマドランドとVIO脱毛

VIO脱毛に通い始めた。

学生時代に当時付き合っていた人に下の毛のことを言われ、自分が人より若干毛が濃いことを自覚した。
美容クリニックの待合室の殺伐とした空気が苦手で自分で処理をするようにしていたが、時間とお金に余裕ができ意を決して8回コースを申し込んだ。

綺麗な声のお姉さんに向けてケツを開き、構造もよくわからない機械を大事なところに当てられ、ピリッとした痛みに思わずびくりとする。
誰のためにこの痛みを感じなくてはならないのかと沸々と怒りがこみ上げてくる。

頑張ってくださいね〜と言われながら
頑張るって何を?
毛根を死滅させるために大金をはたくことが当たり前になっているこの社会を生き抜くことにか?
というか陰毛ごときで退くような男とかこっちから願い下げだろ、
と逆ギレしながら時間が過ぎるのを待つ。

誰にも干渉されずに生きていきたい

人生の駒を着々と進めている周囲の人間に、相変わらず学生時代の延長みたいな生活を送っていることを指摘された自分にとって、
昨日観た「ノマドランド」は予想以上にクリティカルヒットした。

生産年齢を過ぎた高齢者たちが貧困ゆえにキャンピングカーで生活を送らなければいけなくなっている、という深刻な題材だが、
主人公の女性がとにかくたくましくて感じが良く、困ったら私の家に住んでも良いのよ、と手を差し伸べてくれる人たちが周りにいながら、自らこの生活を望んでいるところがこの映画の光になっていた。

寂しい時だって少し車を走らせ広場に行けば、自分と同じ生き方を選んだ人間が焚き火をしながらギターを弾き、それに合わせて楽しそうに歌ったり踊ったりしている。

サンドイッチと瓶ビールを物々交換して、体も心も温まったらまた自分の車に戻ればいい。

そんな誰にも干渉されない生活が送れたら、自分もきっともっと解放的に生きられるだろう、と映画が終わった後もしばらくうっとりと思いを馳せていた。

でも現実は、あの色あせたおしゃれなパーカはきっとものすごく臭いんだろうし、全ての生活を送っている車内で用を足さなければならなかったりと衛生上の問題も必ず伴うだろう。

それにタイヤの交換とかしたことないし、
まずキャンピングカーなんて運転できない。

ああやっぱり自分は誰かに頼って生きるしかないんだろうなー
ありのままの私が好きだなんて言ってくれるあの人だって、
きっと見つめ合った時に眉毛が繋がってたり
キスした時に鼻の下がフサフサしてたら引いちゃうだろうなー
てか自分も胸毛生えてる男とか青髭の男とか嫌だしなーと
山手線に揺られながら現実に戻り、
衛生的な陰部を装いに、渋谷の美容クリニックへと向かうのであった。

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