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佃新古細工#13/配達のヨーグルト

父が亡くなった後も、我が家の食事は洋風だった。朝はいつも食パンとキャンベルのヌードルだった。これにオレンジジュースか、牛乳が付く。
牛乳は、毎朝配達が来る。ある時期から、それに瓶詰めのヨーグルトが加わった。
この瓶詰めのヨーグルトが、僕はお気に入りだった。
母は毎朝、パーコレーターで淹れるコーヒーを飲んでいた。蓋のところに透明のガラスの突起が有って、ポコポコとそこにコーヒーが噴水のように流れる。僕はいつもそれを見ながら「いいなぁ」と思った。

あんまりじっと見つめていると「子供はコーヒーはダメよ。せめて中学生になるまではダメ。牛乳飲みなさい」母は言った。
牛乳は嫌いだった。いつも最後まで残した。でも飲まないと怒られる。だから仕方なく、最後は目をつぶって一気飲みした。
ヨーグルトは好きだったんだけどねぇ・・
ところが、ある日突然、朝の食事からヨーグルトが消えた。その替わりにヤクルトが二本出るようになった。小さなガラスの瓶に入った乳黄色。。「こっちのほうが体にいいからね。今日からこれよ。」母が言った。
飲んでみると、なかなか美味しい。
「ねぇ、ヨーグルトは止めないで、牛乳を止めてこれにしてくれない? これとヨーグルトがいいな。」
僕がそういうと母がふん!と鼻で笑って返事しなかった。
牛乳も毎日配達されてきた。いつの間にか我が家の台所の外に、牛乳の箱と一緒にヤクルトの箱もついていた。

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無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました