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甲州ワインの謎#02/東アジア系野生種ビティス・ダビィ

甲州種について、最近の技術SNPs解析がより精度の高い分析結果をだしてます。
それによると「甲州種」はビニフェラ71.5%、東アジア系野生種28.5%のハイブリットだということです。
実は、そのSNPs解析と共に葉緑体のDNA配列も調べてみると、より正確に「甲州種」の出自を明らかにすることができます。SNPs解析によって確認できるのは、AのDNAとBのDNAが混合されていることです。しかしその片方のDNAが間違いなく東アジア系野生種ビティス・ダビィであるという確証には弱いのです。もしかしたらビティス・ダビィにちかい変性種との混合もあり得るからです。しかし葉緑体のDNA配列の場合、葉緑体にあるDNAは母方由来のものしか遺伝しません。つまり「甲州種」葉緑体DNA配列は100%東アジア系野生種ビティス・ダビィだったのです。このことで「甲州」はビニフェラ71.5%、東アジア系野生種28.5%のハイブリットということが確定しました。
・・しかしですね。Aという木にBという木を挿し木した場合、その子のDNAはA50%+B50%になるはずですが・・甲州種はビニフェラ2/3、東アジア系野生種1/3です。どうしてでしょう?つまり一度A+Bで作られた葡萄の木がどこかでもう一度ビニフェラとの挿し木が行われた・・ということになる。
なぜ二回、代をずらせて混合が行われたか?

というか・・その前にそもそも何故東アジア系野生種ビティス・ダビィに挿し木されたのか?
理由は原種ビニフェラは耐寒性がないからです。ビニフェラは寒冷地では育ちません。そのため耐寒性をもつ葡萄の木とハイブリッドにするしかなかった。
ユーラシア大陸を東進した葡萄の木でワインを作るには、それしか方法がなかったんですね。
前述したように葡萄の木は種から作るとワイン用とは言えないものになってしまう。そのために枝の形で持ち歩かなくてはならない。しかし、その枝を地面に刺しただけでも根を張り育つ強靭な植物です。
その枝を、土地の耐寒性のある葡萄の木に挿し木したんてしような。

さてそのビティス・ダビィですが、中国南部に生息する雌雄異株の野生種です。ダビディはトゲブドウとも呼ばれるほど、枝の部分に沢山のトゲがあります。 中国では古来から薬用に使われていたそうです。
ちょっと面倒な名前を挙げると、ビティス・ダビィはヘキサジエナールHexadienaがかなり高濃度で含まれています。特有な臭いがします。
これと原種ビニフェラを掛け合わせたものは、確かに耐寒性は持てたかもしれませんが・・おそらくコレから作られたワインは通常なものとはかけ離れた出来だったのかもしれません。そのためもう一度原種ビニフェラと掛け合わせされた・・ということではないでしようか?
ちなみにですね。甲州種は枝の付け根の所に小さな棘がびっしりとあります。これはビティス・ダビィの血筋を引き継いでいるという確証でもあります。

無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました