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ゴガツノオトシゴ (掌編)



5月の文学フリマ東京38で配布したネームカードです。
裏面に超ショートショートを掲載しました。
せっかくなので限定品っぽさを出したくて、5月を絡めたお話を。

ショートショート作家さんは名刺に作品を載せている方が多いですね。
私もそろそろ普段使いの名刺も作り直そうかなと思っているので、気の利いた掌編でも載せたいところですが……
初対面の人がそれを読んで、印象が決まってしまうかもしれないと思うと、どういう作品を載せればいいか悩んでしまいますねぇぇ。

初夏の森にきらめくものを見つけて、私は虫捕り網を振るった。捕まえたのは翠玉色をしたタツノオトシゴ。「これは珍しい!ゴガツノオトシゴだよ」先生は目を細めた。ゴガツノオトシゴは海ではなく、新緑の木漏れ日の中に棲息している。この時期の緑が鮮やかなのは彼らの翠玉色の鱗が光っているからだそうだ。「逃がしてあげなさい」 先生は微笑んだ。これから雨季になると彼らは水溜まりに深く潜り、梅雨明けとともに空へ昇りながら鱗を紅玉色に変化させ、マナツノオトシゴになるのですから、と


文学フリマ東京38で頒布した短編集をこちらで取り扱っています。
残数少ないですが、ご興味あればよろしくお願いいたします。


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