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KS3PJ:ナンバ走りを実験する

ランニングに起因する2つの実験をローラー台で行なった。

1.みやすのんき著の「マラソンフォームの基本」に出てくる「Point3: 走るときに体幹をひねる意識は持たない」を自転車で確認する

2.上体は前傾の方が良いのか、起こした方が良いのか

いつもの様に自転車競技者がマラソンに、それも還暦サブスリーという0.0054%にチャレンジする者としては細かい事の積み重ねで、「足で走る」に関しての最適解をエンジニアとして求めていきたい。

自転車では出力(ワット数)を測れる。効率、非効率が直ぐ分かる。感覚に頼るランナーズ諸君へのアンチテーゼとして、数値管理のランニングを目指す私には、ぜひ確認しておきたい項目だ。

1.走るときに体幹をひねる意識は持たない

こう記述したページを開いて納得がいかないランナーは多いと思う。この動きは通常の「走る」や「歩く」のと、足と手が逆方向に動くのとは逆だからだ。

これを自転車乗りのエンジニアが解き明かしてみせよう。

走る時に体幹を捩じる意識は持たない

左のページにあるように「骨盤から上を意識的にひねらない」の意味はこだ。

体の重心は股関節辺りにあり、そこを基本にフォームを組み立てる。そうすると、上半身をひねる動きは無駄なエネルギーを生むことになる。これはランニングエコノミーに反する。ランニングも自転車も野球もサッカーも、脚を使うスポーツは上半身が起点ではなく、下半身が基本であり、もっと言えば骨盤が起点であるという至極当たり前の事実だ。

これをランニングで確認しながらやるのは難しいだろうが、自転車のローラー台では簡単に確認できる。

ハンドルから手を放して、マラソンのピッチ180であるケイデンス90程でペダルを回しながら体を直立させる。その状態で上半身から力を抜くと、右ページにある動きの通りになる。実に自然にこの動きになる。その後で、いつもの様に脚と手が逆方向に動く動作をしてみる。その違いは明らかだ。

だらんと手を下げると、自然と著者の言う通りの動きになる。普段の走り方とは逆だ。ではなぜ自然の動きと逆の動きを、歩く時や走るときに我々はするのか。

答えはやって見ると直ぐ分かる。頭が固定されるからだ。

下半身から発するモーメントと逆モーメントで打ち消すことで、上半身が安定してピタリと頭が動かなくなる。逆に自然に任せると上半身は揺れる。ポイントはここだ。

人類は進化の過程で身を守る術を身に付けた。周囲から獣が襲ってくるかもしれない。ゆえに視線を固定させたい。走りながら視線が揺れたのでは標的を見失う。つまり周囲に目を配って身の安全を守るために、この動きを体に身に付けDNAに残したのだろう。ふふふ、自転車乗りのエンジニアはランニングで文化人類学を語れるのだ。

左ページの下に重要なことが書いてある。

野球、ゴルフ、テニスをはじめ、あらゆるスポーツにおいて意識的に体幹をひねる動きはありません。ひねる事によって大きなパワーが生み出されることは無いのです。ランニングも当然同じです

ナンバ走りをご存じだろうか。脚と手を同じ方向に動かす走り方で、飛脚走りとも言われる。かつて飛脚は棒の先の箱に入った手紙を肩に担いで日本中を走った。江戸と大阪は3日間だったという。まさにウルトラマラソンだ。彼らの走り方がナンバ走り。そのうえ踵を付けない「前踏み」だったそうで、草鞋が前半分しかない。


ナンバ走りは異常なのか?

「前踏み」、実はこれは理に適っている。

足は3つのアーチから成っている。この図を見て欲しい。

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※出典:毎日長い距離を走らなくてもマラソンは速くなる!(吉岡利貢著)

足は三角形の3つアーチでショックを受けている。
横アーチ:母指球~子指球
外側縦アーチ:母指球~踵
内側縦アーチ:子指球~踵

自転車は母指球で踏むのでペダルシャフト上に母指球を合わせてシューズの位置合わせをする。マラソンの場合も母指球から地面との接触が始まり、その後、母指球⇒子指球と接地する。

足で走るランニングは何万回と小さなジャンプを繰り返す。足はそのショックを受け止める。この3つのアーチがエネルギーを受け止め、そして反発力となる。ランニングエコノミーを考えれば、この3つのアーチを最大限に利用することが、エネルギー効率の良さに繋がるのは間違いない。

その場でジャンプしてみてくれたまえ。足はつま先から着地するでしょ。

本来、人間の足は跳ねたら足の前で着地するように作られている。踵で着地してみたまえ。脳天までショックが直撃する。ではマラソンはどうだ?ビギナーのほとんどは踵からの着地だろう。理に適ってない。

それが近年、アフリカ人ランナーに代表されるように、シューズ前部で着地して走るようになってきた。この前足部着地は、実は新しいものではない。それが前述した飛脚走り、つまりナンバ走りだ。

飛脚はナンバ走り、つまり「右手と右脚、左手と左脚を同時に出す」という今では特殊な走り方で1日に100キロ以上走ったという。

このナンバ走りは、トライアスリートのバイクで見られる。踏み足と引き腕が同じになる現象だ。以前トライアスロン雑誌に載っていたのを記憶する。自転車レースも実は同じだ。右に踏み込む時に左側に上体を倒しこめば全く力が入らないことが分かる。自転車はナンバ走りなのだ。


ナンバ走りでマラソンしようというのではない

ここまで書いてきて三河屋幾朗は、脚と手を同じ方向に出すナンバ走りを推奨するのか、と早合点する人がいるだろう。ふふふ、そりゃ気が早過ぎる。

私はランニングエコノミーに興味がある。よりエネルギー効率の良い走りを求めている。それは案外簡単だ。無駄を省いて行けばよい。それには常識を疑うことだ。

世のランナーは何も考えないで走っている、そう私は疑っている。周囲の人が言うから。本に書いてあるから。それが正しいと信じてしまう。

私は逆だ。全くそれらを信じない。自分で試してからでないと信じない。エンジニアとはそういう人種だ。エビデンスが無ければそれは真ではない。どこかの論文で発表されていれば、それを再現してみて自分のモノにする。それがエンジニアの基本姿勢だ。

今回、みやすのんき氏の本、「フォームの基本」の初っ端に「走るときに体幹をひねる意識は持たない」が出てきたので、著者はこれを重要視していると感じた。それで自分の体で実験してみた。

みやすのんき氏の言うことは、その通りだった。こういう「発見」は面白い。「世界のサノアツ」さんからこの本は借りているのだが、彼もこのページに書かれていることが納得いかなかったそうだ。となれば、多くのランナーはこのページを読み飛ばしているに違いない。

これで、マラソンに必要な「重要な」要素が解き明かされた。いかがだろう。理解できたかな、ランナーズ諸君。


2.上体は前傾か、起こした方が良いのか

もうひとつの実験です。猫背で前傾ぎみに走るのと、丹田を意識して腰で走るのとの比較です。

これがより分かりやすい様に自転車のポジションを少し工夫する。自転車のペダリングでは体より入力点が前なので、それを補正するために車体を前傾させてペダルを漕げるポジションに変更する。これでハンドルを自転車を漕ぐと坂道を下るが如き姿勢になる。

しかし実験ではハンドルを持たず体を起こしてやるから、よりランニングに近い力の作用点が得られる。

画像2

出力ワット数で確認すると、明らかに丹田を意識し上体を起こした姿勢でペダリングした方がワット数が上がる。

結論は出た、前傾姿勢は良くない、ランニングエコノミーに反する。

エンジニアはランニングでもこうやって、ねちっこく理論で攻めてくのだよ、ランナーズ諸君。


ここまでのストーリー

心拍ドリフト、AT心拍数と呼吸数測定
過去の自分のデータを紐解く
体メンテナンスは欠かせない
肉体改造計画のスタート
体幹トレーニング考
達成率0.0054%の意味
日々のボディケア
体幹トレーニング考
ランナー諸君、チャリダーは次元が違うのだ
「還暦サブスリー」への挑戦② トレーニング方針
「還暦サブスリー」への挑戦① 宣言


付録

三河屋幾朗という生き方
Quoraで回答:閲覧数150万回の三河屋幾朗
ダブルインカムからシングルインカムへ:2012.11.23
ダブルインカムからシングルインカムへ2:2013.12.14
快感:社会の鎧を脱ぐ:2014.2.1
シュフ主夫ばんざい:2013.12.17
妻への感謝:2018.7.23
3時ラー なるもの:2012.11.1
英語は40歳を過ぎてから:2018.3.28
日本縦断16日間:2010.6
Mt.富士ヒルクライム:2008.6
全日本Mt.サイクリング・乗鞍:2008.8
自転車でのトレーニング
自転車へのこだわり

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