探しものはなんですか　谷村孝くんー中西美雁の日々是排球

先日東レの阿部ちゃんこと阿部裕太コーチにインタビューして、彼にこれまでの写真を探してくださいと頼まれたのだった。「もちろんいいよー」とOKして、昔のハードディスクなどを探して、つないで。

そしたら、ワールドリーグ2004年の写真に、孝くんが写っていた。その時だけでなくて、孝の写真が結構あって。私がとったものなのでブレブレなんだけど。阿部ちゃんと孝くんが一緒に写ってる写真はないかなって探したんだけど、残念ながら阿部ちゃんが背中しか写ってなかった。

孝くんは学年の上下なく人懐こかったし、なんだか不思議な天然ちゃんのイメージが私にはあった。高校の後輩の白澤健児くんにきくと「いや、普通に怖い先輩でしたよ」って笑っていたけど。でもパナにきた最初は、知ってる人が誰もいなくて、その「普通に怖い先輩」だった孝くんが救い主のようにみえたとか…。

インタビューするときの孝くんは、いつもなんだか天然な反応で、最初はパナソニックのOB今井啓介さんと、次に堺の松本慶彦さんと対談してもらった。今井さんとの対談では、孝くんがアクシデントで今井さんの後頭部に顔面をぶつけてしまい、歯が折れて？しまったことを話してくれたり。松本さんとの対談では、「松本さんの抜けた穴を、僕がもっともっと大きくします！」と言って松本さんに「抜けた穴をさらにでかくしてどうすんだよ！」と爆笑されながら突っ込まれていたし…。初めてピンでインタビューしたときは、「おかんにね、お前はいつもアホなことばっかり言ってって怒られて。今度はアホなこと言うなって言われてますんで。今日は、真面目で。真剣にいきます」とちょっと口をとがらせていたっけ…。でも結局なんだか楽しいインタビューになったことは覚えている。計算したいい子ではなくて、本当にいい子だった。

大型レフトで、守備も良かった孝くん。田中幹保さんに、「俺を信じてついてこれば、お前は全日本の中心になる」と言われたそうです。その前に、田中さんが全日本監督を退かれてしまったのだけど。パナソニックの36年ぶりの優勝のときのレフトは、孝くんでした。全日本の合宿にも呼ばれるだけは、呼ばれた。北京のときのお話です。

私は引退後彼に会ったわけではないので、どうしても「今でもどこかにいるんじゃないかな」って思ってしまう。「あれあれ？美雁さん、どうしたんですか？　そんなびっくりした顔して」とかいいながら、黒鷲とかでスタンド席にいそうな気がするのだ。そんなはずはもうないと、わかってはいるのだけど。

人はなくなったあとに、2回めの死を迎えるという。生物的な死と、忘れ去られることと。ならばこうしてときに思い出すことは、供養の一つになるといいな。