水墨画の気持ちが少しわかった日。
ここは楽画教室のB面、路地、舞台裏、控え室そんなところです。
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先日、何気に描いた絵が良かった。自分でも「お、いいじゃん」と軽くはしゃいでしまうくらい良かった。
深く考えて描いたわけでもなんでもない。ただ、なんとなく頭に浮かんだイメージがあって、下描きもなくぶっつけで描いてみたものだ。
SNSにアップすると案の定、反応がいい。
特にTwitterは気合いを入れて描いたものほど「ウケない」パターンが多く、むしろラフに描いたラクガキとかの方が反応が良かったりする…なかで、僕のアカウントにしては大きな反響をいただいた。水墨画みたいですね、とのコメントも多方面からいただいた。
描いてみたら水墨画みたいな絵になった
ちなみに僕は水墨画を描いたことがない。
美術館で観たことはもちろんあるし、メイキング動画も観たことあるし、勉強の一環として技法書を一冊もっている、その程度だ。
でも、描いてみたら「水墨画のような作品」になった。
なのでYoutubeにアップしたメイキング動画のタイトルは
『万年筆インクで水墨画風のデメキンを描く。』
…描いたことないのに僭越だなぁとは思いつつも響きのキャチーさに負ける。
さすがに何も知らずに言い切ってしまって良いのか不安になったので、手元にあった水墨画の技法書を読み返してみる。
初心者向けの本だからなのか、著者のアプローチがたまたまそうだからなのかはわからないが、水墨画はとにかく「型」がある。
草の描き方、木の描き方、竹の描き方、鳥の描き方、その時の筆の使い方、水の加減の仕方、などなど。さらに筆のタッチにちょっとアレンジを加えると、○○が描けますよ、とかそんな感じで、とにかく作画パターンと、技法が沢山紹介されている。
かつて読んだ時は「ほうほう、水墨画ってこうやって描くんだ」くらいにしか思っていなかったし、むしろ「パターンを真似する」だけに見えてしまってあまり魅力を感じたことはなかった。が、今回は少し印象が変わった。もしかすると水墨画は「道具」から生まれた技法なのでは?ということだ。つまり、文字を書いている延長で、「筆と墨と水で何か描けないか?」が発端となり、発展してきたのではないか?ということだ。
一方でいわゆる西洋のデッサンから入る、現代の絵の描き方はちょっと違う。「形のとりかた」「陰影」「色彩の仕組み」「遠近法」これらを体系的に勉強して、「何でも描ける素地」を習得し、その後描き手が描きたいジャンルへ向かっていくのが一般的な流れである。そう、「はじめから絵を描くことが目的」の流れだ。
その点、水墨画には先に制約がある。「筆と墨と水で描くこと」だ。これは元々は「書」の方法論と考えることが自然だろう。
インク水彩と水墨画の共通点
この金魚の絵は先に「金魚の描き方」を練習してから描いた。なるべく少ない、シンプルな工数で速く描けて、少ない道具と色で、なおかつ可愛らしい金魚。何度も描いていると、だんだん手順が見えてくる。そのうち下描きなしで、資料いらずで描けるようになる。
結果的にこの金魚は、筆で描きやすい形になり、手順が簡単になればなるほど美しくなっていくのだから不思議なものだ。
よし、本番だ。
適当な植物を心の赴くままに描いて、余白に金魚を泳がせよう。ここから先はあまり考えずにひたすら描く。描いていて気持ちいいから全然飽きない。
そうして生まれたのがこの作品だ。
色を絞り、技法を絞り、道具を絞り、描きたいモチーフの型を作って描いた。ん?何かに似ているぞ?
水墨画じゃん。
そう、結果的に水墨画によく似たアプローチをしていたのである。
「水墨画みたい」って言われるわけである。
道具から生まれた描き方
今はただ、新しく見つけたこの描き方で、何枚も何十枚も描きたい気持ちが強いから、本格的な水墨画の勉強をしたいとは「今は」微塵とも思わないけれど、一通り思いつく絵を描けたら、改めて調べてみたい。
きっと、道具も技法も長い歴史の分だけ色んなアイデアがあるはずで、それはインク水彩にもきっと応用できると思う。
ただ、なんとなく「道具から生まれた描き方なんじゃないか?」と想像するだけで、万年筆から生まれたインク水彩との親近感が深まっていく。
いつか雪舟とか王墨とかの絵を観る機会があれば、依然とは全く違う楽しみ方ができるんだろうな。
そんな中、英語で水墨画ってなんていうのかだけ調べてると、
ink painting
と訳されることが多いみたい。
ink painting?
インク画じゃん(笑)
そりゃ、似てるわけだ。
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