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ダリアを育てる

特に園芸好きというほどではない。観葉植物の鉢を買ってきたはいいものの、世話を怠って枯らしてしまったことも何度かあるし、種から育てる野菜の育成を試みたものの、途中で手に負えなくなって諦めてしまったこともある。子供が夏休み前に学校から持ち帰ってきた鉢植え(一年生の時は朝顔、二年生の時はプチトマト)も、夏休みが終わる頃には、お盆休みで水やりを怠ってしまって、枝はぼうぼうに伸びるが、葉っぱはチリチリに枯れてしまうと言う無残な姿になってしまった。こんなズボラな性格の持ち主に育てられる植物の方も気の毒である。
植物の育成があまり上手ではない、ということを自覚しつつも、ホームセンターの園芸店で球根を見かけると、どうにも気持ちがときめいてしまう。それぞれに歪な形をした球根から、根が出て芽が出て、いずれ花が咲くと想像すると居ても立っても居られず、園芸用の土やプランターなどを揃えてしまう。
10連休の始まった4月の終わりにダリアの球根を買い求めた。「ポンポン咲きダリア」という品種で、黄色い小型の丸い花が咲くらしい。早速植えて、水やりをして3週間経つか経たないかという頃に、芯の硬い芽が出てきたかと思うと、艶やかでしっかりとした葉がニョキニョキと伸びてきた。地面の下にもしっかりと根を張っているのだろう。
健やかに、順調に育っていく植物を眺めるのは気分の良いものである。私の方はといえば、4月から5月にかけての気温や気圧変動により、気分が冴えない、頭痛がするなどの不調を抱えている。昨年末から苛まれていた抑鬱状態は、少しずつ改善されているものの、自分を不甲斐なく思う気持ちや、将来への焦りは抑えられない。しかしながら、植物が育っていくのを見つめていると、時間が経過していくことを、無条件で肯定しても良いのではないか、という気持ちを一瞬でも与えられる。植物が育つようには、自分の心身は目に見えて伸びやかに育つことはないのだが、縮こまっている何かをわずかにでも外側に表出させることができるのではないかという、期待のようなものが湧いてくる。
説明書きによれば、「ポンポン咲きダリア」が花をつけるのは6月から秋口にかけてだそうだ。この数カ月、私の心身の状態が少しでもよくなっていくことを願って育てていきたい。

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