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憧れ

友人から最近のニューヨークの写真を見せていただいたのですが、それは、アメリカ大統領選の影響で暴動を警戒して、、、窓やドアに板を張り付けて防衛しているという異様な光景が映ったものでした。

選挙でこのような危険と隣り合わせというのは、日本に住む私たちには信じられないことですよね。

友人と、「選挙で暴動が起こらない国に生まれた私たちは、なんて恵まれているんだろうね。」としみじみ話しました。

私が活動をしていたスリランカでも、選挙の結果によって今まで進めてきたプロジェクトはどうなるのか、明日から食べていけなくなるのか、職を失うのかと、人生が大きく左右される不安を、何度も伺いました。

日本にいると、「どうせ誰が政治家になっても変わらない」という諦めのような声も聞きますが、誰になっても大きく変わらないくらい、ある程度安定しているこの国は、本当にすごいと思います。

私は小さい頃からアメリカに憧れていて、自由で懐の広い、豊かな国だと思っていました。

実際、アメリカのミシガン州に語学留学したときは、滞在させていただいたお家も町も、先生もクラスメイトも授業も、最高に素晴らしかったです。

そして、まだプロの音楽家ではない私に、「君がプロと言ったらプロなんだ、ここはアメリカなんだよ。」と言ってくれた先生の一言で、大きな教会でコンサートを開く勇気をいただき、たくさんの人が応援してくれました。

その結果、コンサートのチケット代を孤児院の子どもたちのバースデーケーキを購入する資金として寄付することができました。

このコンサートがきっかけでプロになる決意をし、そして再び渡米してニューヨークのレーベルからファーストアルバムをリリースすることになりました。

ところが、レコーディングの準備を進めていた時期に、9.11の同時多発テロ事件が起こりました。

大都会のビル群に、あのような光景を見た衝撃は、今でも忘れられません。

レコーディングをしながら3か月近くマンハッタンに滞在していましたが、人がいないタイムズスクエア、沈んだクリスマスやお正月の様子は、とても痛々しく悲しいものでした。

憧れていたアメリカが、どうしてこのような状態になってしまったのか。

調べていくうちに、私が知らなかったこと、気にも留めてこなかったこと、光と影のような対極のことに気がつくたび、モヤモヤとしてきました。

そして2003年3月のイラク攻撃以降、大好きだったアメリカがどこか遠くに行ってしまうような感覚になりました。

私がアメリカに滞在しているときは留学生か、もしくは旅行者でしたので、アメリカでお金を稼ぐことはできなく、むしろお金を落とす「お客さん」だったわけです。

見たくないことは見なくて良く、わからないことはわからないままにしておき、フワフワしながら自由を夢見ていたのですが、今思えば、街を歩いているとき、「黄色い匂いがする!」と罵られたり、アジア人が歩いてはいけないような地域では車から一歩も降りられなかったり、暗くなるまでに家に帰らなければいけないし、危険な思いも色々しました。

こんな緊張感の中で過ごすことは、日本ではあり得ないことでしたが、「アメリカは日本よりすべて優れている」と思い込むことによって、自分が日本の中で浮いてしまっていることや、うまくいかない理由を、日本のせいにして逃げていたように思います。

その後、ボランティア活動やビジネスで、様々な国と関わらせていただくようになって、もちろん経済的に進んでいる国はあったとしても、どこの国が優れているということは言えないと心から思いました。

私たちには上も下もなく、生まれた場所や環境によって、文化や考え方が違うだけだと知りました。(だから難しいのですが、、、)

誰かや何かを敵とするだけで団結できたり、生きている意味を見出す人もいるかもしれませんが、たとえばテロを撲滅させようとした戦争は結局、撲滅させるどころか今ではテロ組織の数は増えています。

”憎しみは憎しみによっては止まず、ただ愛によってのみ止む”という仏陀の言葉を改めて思い出します。

相手を敵ではなく、みなアメリカ人と演説されたバイデン氏と、女性初の副大統領になるハリス上院議員の存在に、憧れていたアメリカを久しぶりに思い出したような気がしました。

今年はコロナもあり、より一層不安や混乱の中で過ごす人も多いと思いますが、、、人間だけではなく、国にも癒しが必要なんだと感じて、変な言い方かもしれませんが、とても大きなあの国が、再び愛おしく思えました。

次にアメリカに行けるのは、いつの日か。

留学生の頃や、ミュージシャンになりたてのあの頃とは違う、今の自分がアメリカに何を感じるのか、ちょっと楽しみです。













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