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株式投資って何だろう #3

私が株をはじめて購入したのは2005年である。
きっかけは、モンゴルの経済支援に関する調査だった。

モンゴルは1992年に90年にわたる社会主義を放棄した。
私はその直後の1993年に流通混乱に対する支援策を検討するために調査に飛んだ。とにかく現場を回ってメモを取りまくるという体力勝負の調査だった。

かつて社会主義国のモンゴルではマーケットが否定されており、非合法の闇市がひとつあるだけだった。長年の計画経済が崩壊し、モノがその闇市に流れたが、構造物がない青空市場だった。日本の戦後の闇市というと、バラックの店があったが、モンゴルのそれは、床に敷物を敷いてモノを並べているだけだ。動線もあいまいで、商品区分もされていなかった。
私が訪れたときは零下25度だったが、寒空にある屋外の広場は人々でごった返していた。物々交換が多く、もめ事も絶えない。酔っ払いもいる。警察に訊くと、毎朝ひとりは凍死者が発見されているとのこと。トイレはぼっとん便所。縦2m×横15m×深さ2m程度の大きな穴に、20センチの板が渡してあり、それに跨って用を足すという仕組みだ。屋根と囲いはあるが、ドアはない。夏はハエがたかり、冬は汚物もカチカチ。そんな闇市が、いくつか自然発生的に出来上がり、その整備が急がれていた。

話が脱線した(苦笑)。
それから10年経ち、モンゴルは株式市場を開設するまでになった。闇市には投資資金が入り、ショッピングモールらしきものになっていた。それでも、計画経済から市場経済への移行は難しく、銀行からの借り入れの年利は14%以上で短期がほとんど。新規事業を始めるのには原資が足りない。そこで、銀行以外で資金調達するためにも株式市場や社債発行などの必要性が説かれていた。
私は金融機関の専門家や経済産業省の方とともに調査に出かけた。コンサルタントはカバン持ちのようなところもある。彼らが議論している内容をメモし、報告書にまとめていくのである。まだまだ、経済政策に意見を述べるほどの力量はない(ははは)。
そんな若造コンサルタント(新米から若造に昇格!)の私に、経産省の某氏が訊いた。
「株は持ってるの?」
「い、いいえ……」
「経済分野の仕事をしているのに、株も買わないの?」
「そんな余裕ないですし、怖いし…」
「別にたくさん買わなくていいんだよ。違う銘柄をいくつか買っておくだけで、日々のニュースが実感として理解できるようになるよ」
「そうでしょうか……」
「銘柄によって動きが違うからね。市場動向を継続的に観察するためにも、何種類か買ってみるといいよ」
素直な私は、サービス、製造、運輸業の銘柄をひとつづつ購入してみた。

ところが……。
お気づきのように、私が株を購入したのは2005年のことであった。
そう、2008年にリーマンショック!
銘柄関係なく、全部急落したのである(涙)。
幸い、そんなに買っていなかったし、すぐに必要なお金ではなかったので、株は「塩漬け」となった。その「塩漬け」の期間、確かに私は株式市場や為替市場を継続的に追いかける癖ができて、世の中の動きに「社会報道」以外の視点を持てるようになった。

さて、株式投資とは何か。
市場経済の重要な役割を担っている株式市場の創設を覗き見てきたからだろう。投資は、資金を必要としている企業や事業者にチャンスを与えるものだと考えるようになった。日本では長く「ギャンブル」という印象が大きかったが、投資は未来に対する希望だと考える方が合っているように思う。
かつて「教育に投資」という発言したとき、教育専門家に「見返りを期待するような投資という言葉を使うことは適切ではない」とたしなめられたことがあったが、日本人は「投資」という言葉に変なアレルギーを持ちすぎているようだ。クラウドファンディングだって投資のひとつだし、資金を出した先の相手が、チャンスをつかんで頑張れるように応援するのが投資ではないだろうか。
銀行に預けるのもいいが、それでは誰に資金が回っているのかわからない。もっと直接的に、自分の期待する企業に直接投資するために株を買うのも悪くないはずだ。

ただし、株で儲けるのはかなり至難の業である。相当な勉強が必要だ。競馬でも馬の研究をするように、株を買うためにはそれなりの勉強をしなくては火傷を負う。退職金で大火傷とならないためにも、若いうちから少額で株式投資を勉強しておいた方がいいし、自信がないなら複数銘柄で運用している投資信託もいい。
個人的な意見が許されるなら、あまり大手の証券会社は選ばない方がいい。ネット証券で少額から始めるのがおすすめ。大手の証券会社は営業マンが積極的に勧誘するので、冷静になれなくなるし、余裕資金以外まで狙われる。何よりも、手数料が異常に高い。

さて、今日はこの辺にしておこうかな。モンゴルは好きな国のひとつで、小説「利権鉱脈~小説ODA」(KADOKAWA)にも描いているので、ぜひ読んでみてください。
ではまた。

*写真は私が撮影したものです。
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