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レディ・ガガの新曲MVのピンク戦士と、ハローキティと増田セバスチャン

増田セバスチャンのマネージャー/チーフアシスタントのキタムラです。作品制作の裏話や、進行中の企画のメイキングなど、増田セバスチャンの目線を皆様にもおすそ分けできればと思います。
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みなさん、レディ・ガガの新曲のミュージックビデオ見ましたか?まだですか?とりあえず最初から最後まで見ていただきたいです…

ファッションがどうだとかはそういう感じのwebサイトを見てもらうとして:

iPhone11で撮ったんだ!みたいなのはapple公式で見てもらうとして:

ゴーグルをつけたキャストはKAWAII MONSTER CAFEにも何回か出演してくれてるIGさんだ!というのはご本人のSNSを見ていただくとして:

個人的に注目すべきは「ストレートなメッセージ」と「KAWAIIの本質(withピンク)」です。

「世界は争いで腐っている。様々な部族が支配の為に戦っている。スピリチュアルな部族が平和を思い祈る中、親切なパンク族は、“クロマティカ”の為に戦う…。」

最初のカットでメッセージ(ビデオのコンセプト)を伝え、豪華なセットが何個もあるミュージックビデオが当たり前の昨今で、シーンはずっと砂漠。

登場人物はガガ率いるピンクの戦士たちと、次々に現れる他のカラーの部族。ガガは数種類の衣装を着こなしていますが、色は常にピンク。

彼女が演じるキャラクターは常に皆の先頭に立ち、争いが起きた時には仲介に入って、皆を平和へと導きます。キャストやカラフルな色を使って、ジェンダーを含む多様性を表現しているのでしょう。(おそらく"クロマティカ "もその辺りを想起させる言葉?)

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そして実写のラストカットでガガの衣装の背中に書いてある文字は、
「Kindness Punk」

私はこのカットで、うわー!となりました。なんというストレートさ。余分なもの何もなし。

先ほど引用したwebサイトでは「親切なパンク族」になっているし、Google翻訳でも「親切パンク」なので意味がわからないかもしれないのですが、この単語を見て思い出したのは、まずは、サンリオピューロランドで開催している「ミラクルギフトパレード」です。

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ピューロランドの25周年を記念してスタートしたこのパレードは、「かわいい」「なかよく」「思いやり」というサンリオ精神がたっぷり詰まったストーリー。増田セバスチャンがアートディレクションしたカラフルなビジュアルのフロートや衣装を着たキャラクターやダンサーたちが次々と出てくる大人気のショーです。

まだショーも継続していてDVDも出ているので、大枠だけ解説すると…

主人公はイチゴのドレスを着たハローキティ。みんなが仲良く暮らす平和な世界では25周年をお祝いするパレードが行われ、キャラクターたちも大喜びで歌ったり踊ったりして楽しんでいます。そんな中、悪の女王が忍び寄り、世界は悪に堕ちていきます…

誰もが勧善懲悪的に、最後はキティちゃんが女王を倒してくれるはず…!と思って見ているのですが、キティちゃんは驚くべき行動に出ます。なんと、悪の女王に攻撃をすることなく、女王の心に寄り添い、強力な「思いやり」のパワーを浴びせて大きな愛で包み込む…という争いを選ばない方法で世界を平和へと導くのです。

その大きな愛に、子供よりも大人が「キティ様…!」と涙すること必至のショーなのです。その姿は菩薩かビッグマザーか。ハローキティが大好きなことを公言しているガガがスピリッツまで影響を受けているかは謎ですが、ガガのピンクの戦士と、このハローキティの姿はダブりました。

「Kindness」は「親切」よりも「思いやり」「慈愛」のニュアンスが近いんじゃないかしら。


そしてもう1つ連想したのは、やはり増田セバスチャンの説く「KAWAII」論です。以前受けたインタビューで「増田さんが思う、カワイイの本質とはなんなんでしょう?」という質問にこう答えています。

僕は「カワイイ」を哲学や思想だと考えています。「カワイイ」の定義は、「自分だけの小宇宙を作ること」だと考えていて。つまり、誰にも邪魔されない、本当に「カワイイ」と思うものを、自分の中に持つことで、自らを解放できて、自由になれるというか。(中略) そして他人が「カワイイ」と思うこと、つまり、それぞれの小宇宙を許容し合うことが、平和へのアクションだと思っています。

つまり、他人の小宇宙(その人の価値観・大事なもの・譲れないもの)を許容しあうということが平和への第一歩であり、KAWAIIの根底にあるということですね。

自分にとっての過激なもの、狂気って何だろう? そう問い続けるうちに、あるとき子どもやキティちゃんの存在が浮かびました。どちらも無条件にカワイイじゃないですか。けれど例えば子どもは虫を残酷に扱ってしまう瞬間がある。砂場で遊んでいて蟻を見つけたら、つぶしてしまったり。キティちゃんはキティちゃんで、実は口がなかったりして、逆に過激にも感じられます。つまり、僕にとっての過激な存在、狂気とは"カワイイ"の、その先にあるものではないか。そう思ったんです。

「KAWAII」の奥にあるものは「過激さ」と「狂気」。2010年頃、増田セバスチャンのブランド「6%DOKIDOKI」が海外で取材された時に、ロンドンのメディアでは「Happy Hippie Punk」サンフランシスコでは「Sugar coated Anarchy」など、可愛らしい単語と過激な単語を組み合わせて紹介されたことからも、KAWAIIが可愛さと過激さを表裏一体で持ち合わせていることが伺えます。


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ミュージックビデオの最後に出てくる「Kindness Punk」を背負うレディ・ガガの背中は、ちょっと懐かしい雰囲気も漂う大きなリボン+パンクファッション。

混沌とした世界(現実)に立ち向かい、思いやりの心で平和へと扇動する心優しくて強いリーダー。いま世界が求めているかっこいい人物像。

それがきっと、KAWAIIのスピリッツを持ったピンクの戦士たちなのです。

そしてやっぱこういう時はピンク。ピンクなんだよね…!
(ピンクの話はまた別の機会に)

KAWAIIを想起させるミュージックビデオは多々あれど、こういうストレートに社会へのメッセージを打ち出すビデオはあまりなかったと思います。特に、今回のメッセージは日本から出ても不思議ではなかったのでちょっと残念でもあるんですが、これを今でも出来ちゃうガガ様やっぱりすごい…!と言わざるを得ないビデオでした。

多様性=カラフルさ、壁をフラットにするKAWAIIの力、そしてデジタルを介して生まれる新しいトライブ。KAWAIIは時代の流れと共に更新され、様々な形で後世に影響を与えていくんですね〜


増田セバスチャン note
HELI(X)UM note

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おまけ。KAWAII MONSTER CAFEの夜のショーに出演しているPink Warriorsというパフォーマンスユニット(右は元6%DOKIDOKIショップガールのユカちゃん)は、まさに戦う女の子がコンセプト。ガガのミュージックビデオでピンクの戦士にキュンとした方はぜひ彼女たちのステージにも見に来てください。こちらも強くてかっこよくてカワイイです。宣伝^^


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