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離島移住前の回顧 4

 韓国人の女性と友達になりました。宿泊しているゲストハウスの2段ベッドで上下。

 そんな彼女 ソミン(仮名)さんと、島の昔ながらのカウンター小料理屋に行きました。彼女のオススメのお店との事で。ソミンはこのお店のヘビーリピーターで女将はもちろん、顔馴染みの客さんもいる様子。私はカウンターの端っこで本を読んでました。どんなに周りが一つになって盛り上がってても、お構い無しで自分の興味に没頭する瞬間があるのは昔から。女将のご主人が執筆された雄犬が海を泳いで毎日雌犬に会いに行ったというドキュメント本に集中。

 人口1,000人足らずの島にある飲食店の数は知れてます。それゆえ観光客、島の住人も訪れます。小料理屋も例に漏れず。

 しばらくして入ってきたお客さん、どうやら地元の方、相当顔馴染みで、女将ともお客さんとも和気あいあいと始めました。しばらくしてお店に置いてある三線の弾き語りをし始めました。
『結構躊躇なくやれるんだな。』と感心するものの、弾き終わった後の歯に噛んだような笑いが可愛らしいおっちゃん。

 「今日はどうしようか?」
翌朝、すっかり旅仲間になったソミンさんと朝食を取っているところに、ゲストハウスのダイニングルームに賑やかに入ってきたおっさん。

「釣りに行くよ!」

唐突すぎて状況がつかめない。知らない人が突然旅に絡み始めてきました。
ソミンさんによれば、今来たのは、昨晩小料理屋で三線を弾いてたおじちゃんで、明日釣りに連れて行ってくれる約束をしてたけど、お酒の席の当てにならない約束だと思っていたら、本当だったみたい、との事。

 どのみちバカンスを持て余しているし、何よりおっちゃんの勢いに巻き込まれるがままに、台風翌日の浅瀬というか磯のような場所で穴釣りに。

「入れ食いだよ〜、たくさん釣らせてあげるさーねー。」
の予告とは裏腹に、私が釣り上げた15センチほどのお魚1匹。その魚をおっちゃんの持ってきた魚入れる用の網に入れようとしたところ逃げてしまいました。

「強く生きるんだよ。」

逃げた魚へのはなむけに。

その言葉がおっちゃんの心に響いたらしい。

そして、このおっちゃんこそ後に私が住み込みでお世話になる棟梁なのです。


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