不死身な男たち
ある男は、不死身であることを悔いた。
目が悪くなって初めてメガネをかけたとき、これを何百年も付け続けないといけないのかと、不死身であることを悔いた。
初めて恋人ができたとき、別れた悲しみを何百年も引きずらないといけないのかと、不死身であることを悔いた。
豪華な食事を食べたとき、食欲に依存し続けなければならないのかと、不死身であることを悔いた。
「不死身」とは、どれだけ未来が怖くても生き続けないといけない、恐ろしいものだと男は考えていた。
巡る季節が、川のように流れる時間が、止まればいいのに。
ある男は、不死身であることを喜んだ。
目が悪くなって初めてメガネをかけたとき、一生のパートナーができたと、不死身であることを喜んだ。
初めて恋人ができたとき、彼女が死ぬまでの一生を支えることができると、不死身であることを喜んだ。
豪華な食事を食べたとき、こんな美味しいものを何百回も食べられるのかと、不死身であることを喜んだ。
「不死身」とは、どんな未来も素敵な過去になる、素晴らしいものだと男は考えていた。
巡る季節が、星のように無数の瞬間が、無くなりませんように。
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