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星を食べる

昔、太陽系の近くで遊ぶ2匹の「星の子」がいました。

星の子は、宇宙を自由自在に動き回ることができます。そして、自分が気に入った場所を見つけると、彼らはそこで「星の誓い」を行い、「星」となるのです。

星の子は星の誓いを行うと、人間に生まれ変わります。そのため、星の子は人間のことが好きですし、私たち人間も星のことが好きなのです。


2匹の星の子、アーストとタルスは、人間のことが大好きな子どもでした。

アーストはタルスのイタズラ好きに振り回されていました。アーストの注意に、タルスはあまり聞く耳を持ちませんでした。


ある日、タルスはとんでもないイタズラをしてしまいました。

なんと、小さな星を齧ってしまったのです。タルスは変わった食感に驚いていると、その小さな星は齧った後から空気が抜け、あっという間に萎んで消えてしまいました。


アーストはそれに気づくと、タルスを叱りました。

「おい!勝手に食べたらダメだろ。」

「いや、味が気になっただけなんだって。まさか無くなるなんて思わないだろ。」

「星がなくなると、人間さんが夜空を楽しめなくなるだろ。」

「でもいいじゃん。星なんて無数にあるんだし。」

「ダメ!!」

タルスは少し反省しましたが、あの萎む様子が相当面白かったそうで、その日以降、アーストの目を盗んで星を食べていました。


そんなある日、タルスは太陽を食べたらどうなるのだろう、と疑問を抱きました。

星の子にとって、太陽は特別な存在でした。もちろんタルスもそれは理解していましたが、好奇心旺盛なタルスにとって、その時は太陽を「食べる存在」としてしか見えていませんでした。


太陽に向かおうとすると、アーストの声が聞こえました。

「おい!どこ行くんだ。」

「太陽さ。」

「太陽?まさか食べるんじゃないよな。」

「だって気になるだろ。」

「何言ってるんだ!ダメに決まってるだろう!目的のない破壊は良い結果を生まないんだぞ!」


タルスはアーストの忠告を無視して飛んでいきました。タルスは運動神経が良かったので、追いかけてくるアーストよりもずっと早く太陽に近づくことができました。


タルスは早速、太陽をカプッと噛みました。すると、太陽は大きな音を立てながら空気を放出し、あっという間に萎んでいきました。

タルスがケラケラ笑っていると、アーストが到着して言いました。

「何やってんだよ!」

「おいアースト見たか!あの勢いよく萎んでいく様子!」

「おい!地球を見てみろよ!!」


地球の方向を見てみると、あの美しい青が全く見えない、真っ暗な空間がそこに広がっていました。

その瞬間、タルスはとんでもないことをしてしまったとようやく気づきました。


「ど、ど、どうしよ。」

「……」


タルスの目には涙が溢れていました。


ふと視線を落とすと、お腹がほのかに光っていました。

不思議に思っていると、大きな音を聞きつけた神様がやってきました。

「何があったのだ………なるほど、そういうことか。」

「神様……」

「か、神様、違うんです、これはあいつが太陽を食べて」

「わかっておる。何も言わなくても良い。タルスよ、お前は罰として、人間に生まれ変わることを禁ずる。」

「!!そ、そんな……」

「その代わり、わかるだろう。お前にはやるべきことがある。」

「それって……」

「そうだ。お前は太陽となるのだ。そのお腹の光は、太陽となるためのエネルギー。お前が太陽となって、再び地球を照らすのだ。」

「……」

「しかし、太陽となった後も、お前は太陽として生き続けなければならない。お前のような不届き者が現れても、地球の光を消さないように。他人の幸せを望む存在になれるように。」

そう言うと、神様はどこかへ飛んでいきました。


タルスはアーストに別れを告げた後、その日の夜、「星の誓い」を行いました。



そして今では、タルスは太陽となり、人間の幸せを願い、光を照らす存在となりました。



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