わかりやすいインタビュー記事の書き方

誰かの話を聞いて、文章にまとめる。

という作業は、たくさんの人の目に触れるインタビュー記事のほかにも、案外たくさんあります。

たとえば社内会議の議事録、とか。

プロジェクトの企画書や報告書、とか。

大学の講義のレポート、とか。

そういう文章をまとめるときに、自分でもだんだん何を書いているのかわからなくなってしまったり、一生けんめい書いた文章を「わかりにくい」と言われてしまったりするとショックですよね。

「ああ!だから文章なんて嫌いなんだ!」と思うかもしれません。

そんなときに、たったひとつだけ、意識すると文章を書くことがとても楽になる、わかりやすく伝わる文章になるコツがあります。

とても簡単です。

それは、「自分が理解できることだけを書く」ということです。

どういうことなのか、説明していきますね。

相手を100%理解するのは、無理

少しだけ、私の話をさせてください。

私は十数年前から、人の話を聞かせてもらい、それを記事にして伝えるという仕事をしてきました。

初めのころは、失敗ばかり……というより、ほぼ失敗しかしませんでした。

取材を終えたときは、素晴らしい話を聞かせてもらった!と感動したのに、いざ記事を書きはじめてみたら、何が大切なポイントだったのかさっぱりわからない。

「心に残る文章を書かなくちゃ」と力が入りすぎて、結果、何を伝えたいのかまったくわからない文章になる。

医学の専門家の話をまとめたら、専門用語の羅列になってしまい、何が書いてあるのか自分でもよくわからない。

失敗につぐ失敗の中で、私はあることに気づきました。

それは「たかだか1時間程度の取材の中で、相手を100%理解するのは絶対に無理」ということです。

たった1つだけ、100%理解する

考えてみれば、当たり前のことです。

仮に40歳の人を取材すれば、その人には、私の知らない40年の積み重ねがあります。その40年を1時間で理解しようとするのは、現実的に無理ですし、相手に失礼です。

与えられた1時間を最大限有効に使って記事を書くために、私は決めました。

「たった1つだけ、100%理解しよう」と。

たとえばそれが、犬の訓練士さんの取材なら、「犬の訓練をするときに一番大切だと思うこと」だけは、確実に100%理解できるまで質問する。

「犬の気持ちになって考えることです」という答えが返ってきたら、「犬の気持ちって、どうしたらわかるんですか?」「どうしてそう思うようになったんですか?」と根掘り葉掘り聞く。

ふだんの会話なら「へえ、そうなんですね」で終わるところを、自分の中で100%腑に落ちるまで、ロックオンしてしつこく聞く。

「そんなにしつこくして、嫌がられないかな」と心配になるかもしれませんが、よほどネガティブな質問でない限り、多くの人が、真剣に考えて答えてくれます。

そして取材が終わった後に、「自分でも思いがけなかったことに気づけました。ありがとう」などとお礼を言ってくださることが、けっこう多いです。

インタビューで何を掘り下げるかは、事前に下調べをして決めることもありますが、最初の10分間くらいで雑談のような言葉のキャッチボールをしているうちにわかることも多いです。

血が通っていない言葉を使わない

自分が決めたポイントについて、100%理解できたかどうかは、会話の中で必ずわかります。

「あ、これで書けるな」と思う瞬間があるからです。1時間の中で、その瞬間を迎えることができれば、90%くらいの確率で、その文章はわかりやすく、伝わるものになると思います。

残り10%が何かというと、それは「自分が理解できないことを書かない」ということです。

なんだ、当たり前のこと、と思うかもしれませんが、調子よく書けているときほど、「自分が理解できないことを書かない」のは難しいです。

たとえば、取材の中で出てきた専門用語。

なんとなく意味はわかるけれど、今の自分の知識では、正確に説明することはできない。でも、専門用語を使ったほうが何だかかっこいいから、記事に入れてしまえ!というような悪魔のささやきが、文章を書いていると、たびたびおとずれます。

けれど不思議なことに、「自分が理解できない言葉」を文章の中に埋め込むと、それはほぼ確実に、読む人に伝わります。

そして自分が理解できない言葉は、読者にとっても理解できない言葉であることがとても多いです。

「よくわからない、何となくかっこつけた言葉」に出会った読者は、げんなりして、途中で文章を読むのをやめてしまうかもしれません。

取材相手は専門家なので、専門用語も「使い慣れ、血の通った自分の言葉」として使うことができます。

でも、ほんの1時間、相手の人生の玄関先におじゃまさせてもらっただけの私たちにとって、その言葉は血の通った言葉ではありません。

たとえ、その道の専門家にインタビューした記事であっても、耳慣れないかっこいい言葉は封印し、「書く人にとって血の通った言葉」だけを使って書くことで、文章は何倍もわかりやすく、広く伝わるものになります。

何よりも、自分が使いやすい言葉だけを選んでいけばいいので、文章を書くことが本当に楽に、自然体で書けるようになります。

そしてこれは記事だけではなく、企画書にも、レポートにも宿題の作文にも、応用できるポイントだと思います。

まとめ

長くなってしまったので、最後に少しまとめを。

誰かの話を聞いて文章をまとめるときには、「たった1つだけ、100%理解しよう」と決めて、1つのポイントを根掘り葉掘り聞くのがおすすめです。

そして、自分が理解できる、血の通った言葉だけを使って書いていくと、ストレスなく、とても簡単にわかりやすい文章を書くことができます。

学校や職場で文章を書くときに、参考にしていただけたらうれしいです。





この記事が参加している募集

noteの書き方

読んでいただきありがとうございます! ほっとひと息つけるお茶のような文章を目指しています。 よかったら、またお越しくださいね。