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日本人なら地味においしい ほうじ茶の茶粥 #日本料理×薬膳

ほうじ茶を使ったお粥。決して派手ではないけれど日本人ならほっとするお料理です。疲れたときなど身体が弱っているときはシンプルなお粥がおいしく感じます。

【作り方】

<材料 5人分>
ほうじ茶 7g
水 750cc
塩 小さじ1/4
米 3/4カップ
塩昆布 10枚
塩 適量

① 米は洗い、ザルに上げて30分おく。
② ほうじ茶は空鍋で軽く煎ってからお茶パックに入れる。
③塩昆布は千切りにする。
④ ①の米と②のほうじ茶、水を入れて蓋をし、強火にかける。沸騰したら蓋をずらし、表面がおどるくらいの弱火にする。3分たったらお茶パックを取り出し、水分が2/3量くらいになるまで弱火のままゆっくりと炊き、米を十分に柔らかくする。
⑤仕上げに塩を加えて火を止め、ざっと混ぜて蓋をして5〜6分蒸らす。
⑥器に茶粥をよそい、別皿に塩昆布を入れて添える。

【料理のポイント】

今回はほうじ茶を使った茶粥をご紹介しましたが、お粥の作り方の基本は白粥でも同じです。「お粥なんて火にかけたらいいだけでしょ」と思われがちですが、おいしく作るにはやはりポイントがあります。

炊いている途中でかき混ぜないこと。粘りが出て糊状になったり、米粒がつぶれてしまう原因になります。お粥は米粒をつぶさないようにするのがポイントです。
お粥が炊きあがってから塩を入れて調整すること。塩味を最初から入れると塩が米の中に吸収されて米が硬くなってしまいます。
炊き上がって5分くらい蒸したらすぐにいただきます。炊き上がってから時間が経つと水分が出て状態が変わってしまいます。

なんてことはない簡単な料理ですが、こういうものこそちゃんとわかったうえで丁寧に作れるとすてきですね。

ちなみに今回のお粥は米1に対して水5で作った全粥です。
米1に対して水7の場合は七分粥です。1対7だから七分粥なのではなくて、仕上がりが重湯3に対して粥が7になるので七分粥と呼びます。

お粥に使う鍋はできれば陶器製の行平鍋(ゆきひらなべ)がおすすめです。
行平鍋は丸っこくて、蓋がある、たぬきが化けたような愛着のわくかわいい鍋。陶器は熱伝導率が低く、一度温かくなると火を弱めても鍋の中で対流するので均一に炊くことができますし、鍋底にくっつかず、焦げずにふっくらと仕上がります。口が狭いので蒸発を防ぎ、冷めにくく、良い状態を保つことができるのでお粥に適しているとされます。
行平鍋は重いし場所をとって扱いにくいのが難点ですが、ここからよそうとただのお粥もランクアップした気分になり満足度も上がりますね。

【中医・薬膳から】

薬膳の効能を考えて作るならお粥に入れる食材は自分の身体にあわせて選択するとよいです。今回は茶粥をご紹介しましたが、白粥ベースにしていろんな食材を入れてアレンジできます。
例えば
・ お腹が弱い胃腸虚弱体質には山芋。
・ 風邪のひきはじめのゾクゾクにはネギのみじん切りと生姜の千切りを少々。
・ 滋養にクコの実とほうれん草。
・ ストレスや血の巡りが悪いと感じるときには陳皮(みかんの皮を干したもの)。
・ 夏には解毒や熱さましの効果のある緑豆。
・ 乾燥を感じる秋に百合根。
ただし、入れる食材によって硬いものは先に火を通す、ほうれん草は下ゆでするなど調整が必要です。
家に乾物系をストックしてあると便利ですよ。

【最後に】

お粥は自分の身体に合わせてアレンジしやすい料理だと思います。どんな料理を作ろう、と意気込まなくても、自分が摂りたい食材をお米と一緒に炊けばよいのですから。
自己主張は激しくないけれど、身体に寄り添って体質改善を手伝ってくれたり、じわじわと体調を整えてくれるようなやさしい子です。

例えば、むくみやだるさを改善したければ、利水・健脾効果のある小豆を使った小豆粥を朝ごはんに食べる習慣にしてはいかがでしょうか。
味付けは塩以外ほとんどないので普通の料理より飽きにくいし、何より身体にやさしい。中国風に味付けせずに漬物を添えて食べるのもよいですね。毎回小豆から炊くのは時間がかかって大変なので、小豆はまとめて炊いて小分け冷凍しておいて、必要な分だけお米と炊くのもよいと思います。
もっと言えば、行平鍋が揃えられないなら家にある鍋で炊く、それも面倒なら炊飯器のお粥モードで炊く、飽きないように食材を少しずつ変えるなど、自分の体調や気分に合わせて、自分が無理なく続けられるようにしていけばよいと思います。
毎日続けられる工夫をすることが三日坊主にならないためのポイントです。気長に続けないと体質なんて簡単に変わりませんから、あの手この手で自分を甘やかしてあげましょう。

中国ではホテルの朝食に大抵お粥があります。上海で一緒に暮らしていた女の子もよく粟入りのお粥を作っていました。九寨溝バスツアーの自由行動のときに渡された軽食セットに「八宝粥」といういろんな具材の入った甘いお粥の缶詰が入っていてびっくりしたこともあります。お店のメニューには豚肉と皮蛋(ピータン)が入ったお粥がよくありますし、「潮堂」というお店の海鮮粥はめちゃめちゃおいしかったです。
このように中国では日本よりもお粥文化が根付いています。ですが、忙しい現代ではパンをかじって出かける人も増えており、時代とともに変化しています。日本で和食が見直されているように、中国でも欧米化やファストフード、乱れた食生活が行きすぎると、昔ながらの食事や養生がまた見直されるようになるかもしれませんね。


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学校で学んだ日本料理や知識をもとに、そこから思考を薬膳に広げたり、おいしく作るコツなどを紹介しています。いろんな視点から料理や食材を見ていきます。分量は必要に応じて微調整してくださいね。学びや発見があれば随時修正や追加・更新をしていきます。



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