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伊香保旅行 2023.1.1〜2②

👇のつづき…


●2日目

伊香保2日目は美術館巡りの予定。東京だけが文化の街だと思ってしまいがちだけど、行く先々に(規模の差はあれど)美術館ってある気がする。

朝食。お正月の朝食は特別だ。
チェックアウトするときっていつもバタバタすぎて、旅館に名残惜しく思う時間がまるでない。


●文学の小径

旅館のすぐ近くにある文学の小径。雪が積もっていて近寄るには怖く、小径を通らず眺めて終了。

秋にお散歩したら気持ちよさそう。
これはこれで美しい。

●竹久夢二伊香保記念館

榛名山LOVERの竹久夢二。伊香保との出会いは、竹久夢二が伊香保に来ていると勘違いしたファンからの手紙だったそう。ファンが推しに影響を与えるって、オタクの夢すぎる。

このお屋敷に住みたい

大正ロマンがまだ息づいていると思わせる建築やインテリア。1階のホールでは、竹久夢二が生きていた時代に流行ったオルゴールの演奏を聴くことができる。オルゴールの音を最後に聴いたのはいつだったか。手のひらサイズのオルゴールの音しか覚えていなかったけど、ホールクロックやスーツケースくらいの大きさのあるオルゴールから響く音はまったく別物に思えるほど重厚感がある。でもやっぱりどこか懐かしい響きがある。

風景画ランプ。
写真にはないけど、ランプシェードが一部透けていて、そこにちょうど電球の光がくることによって風景のうちの太陽に見立ててるものがあった。
新館はどこでも写真オッケー
竹久夢二が生きた当時のガラス。中に気泡が入っていて、その当時の空気が閉じ込められている。
音符が隠されたステンドグラス
中にはガラスコレクション。色ごとに分類されていて、カラーチップを見ているような楽しさがある。
この燈篭のために遠くからくる人がいるほどの名作らしい。
緑色なのが珍しいとか。


●伊香保切り絵美術館

大正から令和に戻って、切り絵美術館へ。歩いて10分くらいだった。それにしてもこの道を通る人の少なさよ。

到着(館内は写真NG)

家を改装してつくったようなこぢんまりした美術館。お香が焚かれていて良い香り。館長が切り絵師でその作品と、お弟子さんたちの作品が並ぶ。ほとんどが風景画で、特に京都や浅草など日本建築が多め(建物の作りが細かいから絵にしたくなるのかな?)。一部イタリアの風景もある。切り絵は奥行きと陰影のアート。そう考えるとモノクロ映画と近い美学かもしれない。

この切り絵美術館では、実際に切り絵を体験できる。やってみた。

下絵は既に用意されている簡単なものを使う。私は犬にした(お茶犬に似ている)。すごく簡単な絵に見えるけど、カッターがなかなか上手く扱えなくて苦戦した。切り終わりのところでたいてい切り残しがあり、そこをむしりとってしまう(※切り絵において絶対やってはいけない工程です)。

●水沢うどん

伊香保名物の水沢うどんは、切り絵美術館の館長さんおすすめの清水屋へ。

手打ちうどんの始祖。
400年以上の歴史ある老舗!
感動の美味しさ

店員さんにおすすめされるがままに注文する。日本全国、どこに行ってもうどんを売りにしている気がするけど、ここの水沢うどんは今まで食べたうどん史上最高の美味しさだった。うどん自体がほのかに甘くて、胡麻ダレをつけなくても美味しく食べられる。下仁田ネギの天ぷらも、ネギの概念を覆す美味しさ。とくにネギの緑色の部分が甘くて美味しい。また伊香保に行くことがあれば、絶対にここに行きたい。

●原美術館 ARC

伊香保さいごの目的地は原美術館ARC。現代美術が収蔵された美術館で、このときは「雲をつかむ展」が開催されていた。

「雲をつかむ」という言葉は、「雲をつかむような話」といったように、漠然としてとらえどころのない様や、現実味のないことを意味し、少々ネガティブな印象を与える。しかし、一般的な意味・解釈から解放すれば、非現実的と思われることにあえて挑戦する姿勢や、混沌とした状況や不透明な事象から、真実らしきものや本質とみなし得るものをとらえようとする意志を表すポジティヴな言葉とみなすこともできる。

https://www.haramuseum.or.jp/jp/arc/exhibition/1098/
美術館外観。漆黒に包まれている。
だだっ広い土地に佇んでいるのもあってか、秘密基地みたいだ。

私の好きな美術はイタリアのルネサンス、バロックあたりなので、それらとは表現が大きく異なる現代美術にさほどハマってこなかったが、原美術館でこの展示を見てとても興味深いと思えた。
神話画やキリスト教絵画は、まずテキストがあって、それらを芸術家が各々の解釈で表現していく。ゼウスには雷を、聖母マリアには青い服を、といったように、読み解くためにはある程度の知識が必要だ。それを頭に入れたうえで見えてくる絵画の面白さが好きで、芸術家の個性を見るのが好きで、神話画やキリスト教絵画が好きだ。
現代美術は感覚的に楽しむものだと思っていたから、自分の中で「色がいいな」とかそういう感想しか湧いてこないのが、現代美術にそこまで惹かれてこなかった理由。
でも原美術館でしっかりと向き合ってみて、現代美術は(もちろん感覚的に楽しむのも素晴らしいこと)思っていた以上に深く意味が込められていて、特に社会への挑発や問いかけがそこにはあり、寓意画に近いのだと思った。ほとんど哲学の世界。

特に好きだった作品はジャック・モノリ《私は別の人生を生きた》。「雲をつかむ展」というタイトルで、真っ当に雲の絵を描いてる作品だ!とその時点で目を引くのだけど、青空と雲の白色がコントラスト強すぎるし、雲の形は写実的なようで光が弾けたように鋭角がある。こんな雲もあるのか〜と左に目をやったらアクリルパネルでもう一枚の絵に繋がっており、そこには青色の影に包まれ帽子で顔が隠れた男性が街の隅に佇んでいる絵があった。孤独な男性の閉塞感と、その先にある開放感。空はどこまでも広がっている。
そのあとキャプションボードを読んで、タイトルが《私は別の人生を生きた》であることを知り、なおさら強く響いてくる。切なくも美しい作品だった。

他にも印象に残る作品が多く、宮島達男「時の連鎖」なんかも私が日常的に考えているテーマに近くて、それをこんな風にアートにするのか!と面白かった。展覧会レポートは旅行記にまとめない方がいいかもしれない、長くなっちゃうから……


というわけで(突然の〆)旅行記を終える。
はじめは伊香保に対してそこまで見るところないかも?と思っていたけど、むしろ時間が足りなさすぎた。シャンソン館行きたい。グリーン牧場行きたい、榛名湖行きたい。また来よう。

上野駅に到着。
Afternoon Teaで。

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