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MBAの意味を変えてみた〜「ビジネスの未来」(山口周)を読んで

数年前、菓子業界で働いておどろいたのが、新商品の販売サイクルの早さです。コンビニに並ぶお菓子やアイスを見るとわかるように、おびただしい数の新商品が発売されては数週間、数ヶ月で入れ替わる。案の定、メーカーの中では年中、商品開発にてんてこ舞いだし、店頭で商品入れ替えの際には廃棄なども相当出るんじゃないか。そもそも今、本当にこんなに新商品が必要とされているのだろうか・・

もう一つ、度を越えていると感じるのは、私の住む京都のホテルの乱立。ホテルの建築は今でも止まらず、逆に家族が安心して住める家がなかなかない状況。

以前は見て見ぬふりをしていたこういった経験を、現場から離れてから冷静に見てみると、なんだか「ビジネス」という言葉に少し古臭さを覚え始めました。
 
そんな中で読んだのが、山口周氏の「ビジネスの未来――エコノミーにヒューマニティを取り戻す」です。

この本のおかげですっきりしました。私の直感があながち間違いでもなく、この本には、たくさんのエビデンスと共に「ビジネスが歴史的使命を終えた」と書かれていたのです。

この本、ぜひ多くの人に読んでいただきたいですが、何しろエビデンスがてんこ盛りですので、読み始めるのにハードルを感じる人も多いかも知れません。そこで、ぜひ知ってもらいたいポイントだけをギュッと絞ってお伝えします。
(他にも語りたいことは山ほどあるのです💦)

早速ですが、この本の構成。とってもシンプルでして以下のの三部構成です。 

第一章 私たちはどこにいるのか?
第二章 私たちはどこに向かうのか?
第三章 私たちは何をするのか?

まず「 私たちはどこにいるのか?」と現状を把握します。

ビジネスが使命を終えた

私のように「やっぱり!」とうなずく人とともに、「えっ?どういうこと?」そう思う方もいるでしょう。

ビジネスが使命を終えたというのは、「経済とテクノロジーの力によって物質的貧困を社会からなくす」というミッションがすでに終了しているということです。

後ほど述べますが一部を除き、世界中の大部分では、生活をしていく上の不便は解消され尽くしたということ。そして、それを現すように、例えば先進7ヶ国の経済成長率は、半世紀にわたって下降しているということが、たくさんのエビデンスと共に説明されています。

例えば著者によって集計された先進7ヶ国(G7)の経済成長率のグラフです。

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(引用「ビジネスの未来――エコノミーにヒューマニティを取り戻す」著:山口周)

経済成長率は1960年にピークを迎え、それ以降ずっと下降し続けているのです。経済成長のピークって、もっと最近の気がしませんでしたか?

「いやいや、最近でもITとか成長してるでしょ!」私はそう思いました。
Google、Appleなどといった巨大IT企業の急成長で、これら各社の時価総額は当然伸びましたが、あくまでも企業の話。
全体の経済成長率としては、先程のグラフの通り、GAFAが出現してからも低下する一方なのです。

このように経済も降下する一方。ビジネスが目的を終えたというのは直感だけではなく、本当らしいです。

経済成長によって残された課題

著者は、今の世界は経済成長の結果、「物質的不満の解消」についてはゲームをクリアした状態だが、以下の2つの大きな問題が残っていると言います。

1「生きがい」や「やりがい」といった「意味的価値の喪失」

2.貧困や格差や環境といった、これまでのビジネスでは解決の難しい社会的課題がたくさん残っている

生きがい迷子、やりがい迷子

「生きがい」や「やりがい」の喪失。心あたりありませんか?自分も経験しましたし、周囲を見回しても「生きがい」「やりがい」に悩んでいる人が大勢います。

「大人になってまで生きがいなんて探せずに、現実を見ろ」
そう言うれることもあるでしょう。ただ、この本にあるように世界の潮流を捉えると、むしろ世界が変わる今こそ、自分の「生きがい」や「やりがい」と真正面から向き合うほうが、先は明るいように思います。

経済成長を追い求めた結果、多くの人が陥っている「生きがい」「やりがい」の喪失。これは「ブルシットジョブ」という本でも書かれています。noteでまとめてくださっていましたのでご参考に。

生み出す価値と給与が釣り合わない現代

本書とは別に、個人的にずっと気になっていたことがあります。最近、生み出す社会的な価値と、金銭的な報酬が釣りあっていないのではないかということ。

例えば、過去の私のような、大企業で社内向けの資料を延々と作成している人と、例えば(実在の人物ですが)英語も堪能、学生さんに親身に寄り添ってエンパワメントをしているNPOスタッフ。社会に与える価値でいうと後者のNPOスタッフの方が断然大きいはずですが、給料はおそらく大企業正社員の数分の一でしょう。

幸か不幸か、こうした生み出す価値と金銭的な不均衡があるために、「やりがい」がないがそこから離れられない人がたくさんいるのではないでしょうか。

残されたのは解決が難しい問題

ふたつめの大きな問題、貧困、格差、環境問題など「解決が難しい問題」ついて著者が述べるのは、、資本主義の中では「解決が難しい問題ほど後に残る」と言うことです。

市場原理の中で、人は「解決がやさしく、経済的なリターンの大きい問題」から順次解決していきます。そうして、最後に残るのは「難易度が高く、経済的なリターンの少ない問題」になるのです。

このため、だいたいの人にとっては安全で便利な世の中になった現在でも、貧困や格差といった問題は世界にまだまだ存在しており、そしてそれらの解決は非常に難しいものなのです。

では、どうしたらよいのか?

人間性に根ざした行動を取り戻せ

著者は、これらふたつの大きな問題を解決するポイントは「エコノミーにヒューマニティを回復させること」と言っています。

つまり、現在の世の中の基本となる仕組みである資本主義を、ガラリと転換するのではなく、資本主義・市場原理の仕組みを「ハックする」する。

そして、人々が「人間的な衝動」、つまり「おもしろい!」と感じることに素直に挑戦することで、前述の貧困・格差といった「残された解決が難しい問題される」。そして、それらを通して私たちは、「生きがい」や「やりがい」といった「意味的価値」も取り戻すことにつながると述べています。

ただ、”これまで経済成長一直線で進んできた社会、実現のためには教育・福祉・税制といった社会基盤のアップデート”が求められるとも言っています。

先日のオリンピックや、今の感染症対応だけでてんやわんやの政治をみていると、そんな社会基盤のアップデート、すぐには進むわけないよね・・
と、諦めないでください!

社会を変えるのは一人

著者はこう言っています。

”実は社会が大きく舵を切るきっかけになるのは、以外や「小さなリーダーシップ」であることが多い、ということも事実です。”

世界の歴史から、アメリカの黒人差別是正のきっかけとなったのは、たった一人の黒人女性が、白人優先席を譲ることを拒否したことが発端であった例があげられています。

こんなたった一市民の、ごくごく小さなリーダーシップが引き金となり、大勢の一市民が動いたことで、アメリカという大国が変わったのです。


MBAを「Makers of Business Art」に変えた

私がこの本で最も共感したのが、この「一人ひとりの小さなリーダーシップ」です。なぜなら、私自身、この小さなリーダーシップを発揮する前に、組織を辞めるはめになってしまったからです。

子連れMBAには、大企業に勤める優秀なワーキングマザーがたくさんいます。でもそのほとんどは、従来から続く硬直的な働き方で、子育てと仕事でアップアップしています
そんな彼女らが、子育て中だからこその視点をいかして、組織を変えるリーダーになると、この国は少しでも良くなるのではないか。

そんな想いから、最初に始めたのがビジネス勉強会だったためにつけていた活動名の「子連れMBA」の解釈を変えることにしました。

MBA:Makers of Business Art
※本当はBusiness as artにしたかったのですがわかりやすいように。

ビジネスをツールとして、自分の価値観に正直に、小さなリーダーシップを発揮する、そんな子育て世代のリーダーを毎年数千人も生み出したい!そうすると、少しぐらい社会を変えていけるのではないかと思い、これからも全力で走ります!

そしていつの日か、山口周さんに子連れMBAに登壇いただくことを楽しみに!

手前味噌ですが、小さなリーダーシップに感激しすぎて、実はTEDxでお話しさせていただきました。


小さなリーダーシップを生み出す、子連れMBAはこちら。



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