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恋をしたのは「指の混ざり」と「頬の香り」

「小説のような恋」と呼べる経験はあっただろうか。

まるで、作り話のような、夢のような恋をしたことはあっただろうかとぐるぐる考えてみた。なぜなら最近読んだエッセイが、ずっと心の中にのこっているから。

エッセイスト 中前結花さんがご自身のことをJ-POPの歌詞になぞらえて書くエッセイ。ふだん何気なく聞いている音楽を素敵なストーリーとともに描いていて、曲を聞くと中前さんの思い出を、一緒に思い出してしまいそうになる。

中学生の頃、CDを買って曲を聞く前に見るのが歌詞カードだった。好きな曲をルーズリーフに書き写して、授業の合間に眺めるのを楽しみにしていた。ゆずの「からっぽ」に対する歌詞の解釈はゆずっこたちと何度も議論し合ったし、aikoが書く歌詞はこっそり自分におきかえて、家で一人何度も聞いたこともある。

今は歌詞を見ることなんてすっかりご無沙汰してしまい、エッセイに出てくる曲もカラオケでは歌えど歌詞の中身を深く考えることもなかった。「いい曲だな」ですべてを終わらせる人に私はなったようだ。

だからこそ、今でも歌詞と一緒にストーリーを紡いだり、「なぜ?どうして?」と歌詞について深く考えたりして、陽だまりのように温かく綴られたエッセイが、なんだかなつかしくもあり、うらやましいなと思ったのかもしれない。

“なぜ、「美しい指先」や「髪の香り」じゃないのか。
なぜ、星野源は「指の混ざり」と「頬の香り」というのか。“

「小説のような恋」は、するものじゃないのかもしれないな、と思う。自分の解釈と切り取り方で、なるものなのだろう。中前さんを通して見た星野源の「恋」が、小説の一部分に感じられて、そんなふうに考えた。

気になる言葉、魅力的な言葉を集める共同マガジン「コトバツムギ」を始めました。共同運営者は以前ライティングスクールで一緒に学んだスミヨ。さん。月~土までのうち、私は月・水・金を担当しています。


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