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読んだ本:「こころの対話 25のルール」伊藤守

あなたは聞かれていない。

本書はコミュニケーションに焦点を当てた本ですが、「聴く」とはどういうことか、が非常に分かりやすい言葉で書かれています。

この手の本は数多く存在しますが、その中でも幅広い年齢層・キャリアの人に受け入れられる本なのではないかと思います。

どうしてコミュニケーションが上手くいかないんだろう。そんな悩みを抱えてらっしゃる方は、一度読まれてみるといかがでしょうか。

私は、意外と身近にいる自分の家族や親しい友人に対して、何となく上手くいかないなと感じる瞬間があります。親しいからこそかもしれません。私の「聞いて」と彼らの「聞いて」がぶつかり合っている(本書ではドッジボールと表現されている)と感じるのです。「聞いて」というのは、「聴いて」であり「受けとめて」と同じ意味を持つ言葉です。つまり、私たちが行うべきはドッジボールではなくキャッチボールなのです。それこそがコミュニケーションであると筆者は述べています。そして、相手のとっているコミュニケーションは、今私がとっているコミュニケーションなのです。

そんな当たり前のことを、と思うかもしれません。しかし、普通のキャッチボールで考えても、相手がどこに投げてくるか分からないボールをありのまま受けとめるというのは、意外と難しいものです。難しいから、受けとめた振りで返してしまうこともあります。とはいえ、振りというのは伝わるもので、聞いてもらったはずなのに、最後には「聞かれていなかった」気がするというもやもやした気持ちが残った経験がある方もいるのではないでしょうか?

この受けとめて貰えなかったという気持ちを筆者は「未完了」と表現しています。この未完了は、私たちに不安や孤立感をもたらし、「過度の警戒心」を抱かせます。警戒心を抱いた状態では自分の内側にばかり意識が向きます。相手に意識を向けられるようになるためには、この未完了を完了させることが必要だといいます。未完了を完了させることは、「過度の警戒心」を薄れさせ「安心感」を生みます

お互いに「聞いかれていない」と感じる状態は、お互いの中に未完了があるという状態です。待っていてもキャッチボールは始まりません。だから、わたしからキャッチボールを作りだすのだと筆者は言います。キャッチボールを繰り返すことで、安心感を得て未完了が解消されていくのは相手だけではありません。いまわたしが取っているコミュニケーションは、相手のとっているコミュニケーションなのですから、わたしにも同じ事が起きるはずです。

相手の調子にコントロールされそうになる自分がいます。そんなとき、ついボールを力任せに投げ返そうとする自分に気づくと、自分に言い聞かせるようにしています。「いま相手の取っているコミュニケーションは、わたしのコミュニケーションだ」と。


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