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朝日ウルルン滞在記〜ベトナム編2〜EP1 再びのフート〜

すべてはベトナムから始まった。



10月。戦場のようなアルバイト生活で苦楽を共にしたベトナム人の友人にYOUきちゃいなよ!と言われて、まんまとベトナムでYOUになった私は、世界を変えられた。(大袈裟な人間である)


ベトナムに恋い焦がれた私はまた、ナムの旧正月きちゃいなよ〜!の一言で単身、再びベトナムへやってきたのだ。



厚手のニットなんて脱ぎ捨てて、こちらベトナムハノイは23度。空港で出迎えてくれたリンは半袖である。
「久しぶりねぇ〜!」と抱きついてきたリンは髪を短くして相変わらず気怠く歩き出す。ナムはシャツと下はスーツでたばこを咥える。Google翻訳で話しかけるトゥンくんが今回も来てくれた。クラクションと叫び声は正月の帰国ラッシュで前回の3割増し。




ああ、この感じ!!この大雑把過ぎる空港職員と車と人々!!とりあえず笑っていればコミュニケーションがとれる幸福度の高さ!!私はこのために!日本の正月を捨てて働いてきたのだ〜!!



10月の朝日ウルルン滞在記で思う存分書いたのだが、あの旅以降、日本を飛び出したい欲求に駆られた。日本語以外でコミュニケーションを取れる喜び、異文化、今まで嗅いだことのない空気の匂い。それらに触れたくてアルバイトも飲食店から海外に通じやすいものに変えた。そう、まるっきり、ベトナム旅で海外に魅了された朝日である。


車でナムの実家のあるフートへ!の前にハノイ市街のトゥンくんの家で漬けているお酒を取りに行った。
煌びやかで騒がしいはずのハノイはネオンが少なくなってお正月モード。みんな帰省で消えたらしい。
トゥンくんを待つ間、ナムと語り合った。この時間も愛しいベトナムの思い出と重なる。12月31日に籍を入れたナムとリンだが、それぞれ思いは様々らしい。ナムの仕事の話やこの間の旅から帰った私の仕事の話。ふたりになると何だかしんみりとお互いの苦労を話し合ってしまう。
「杵屋の冷たいうどんが食べたいなぁ。」と日本を懐かしむナムの横顔は少し寂しそうで東京にいる日本人みたいだった。





3つの樽に詰まったお酒を持っていざフートへ!21時に到着したため、ハノイを出たのは22時に。フートに着く頃には23時を過ぎるけど、ナム家のみんなはきっと寝ているだろうなぁ……と思ったら、大量の肉と薬草を用意して出迎えてくれた。

ママは両手を広げて私を抱きしめる。小柄で柔らかい肌が懐かしい!また沢山話しかけてくれるけどさっぱり分からないからとりあえずカムーン!とニコニコしてハグを繰り返す。パパとは簡単な英語で元気?と握手をする。左の口角だけキュッと上げる仕草。懐かしい。

旧正月のフートへやってきた私を快く迎えてくれたナムの両親とナムリン、トゥンくんで囲む食卓は照れくさくて嬉しかった。調子に乗った私は25度の果実酒を無くなるたびに注がれた結果、ショットで10杯飲んだ。仕方ないのだ!ベトナムの乾杯は、イッキして握手がセットなのだもの。
食事を終え、ナムのお兄さんの家へ挨拶を済ませて就寝。3時になっていた。





ドアの向こうから聞こえるママの声。叫んでいる。ベトナムの目覚めは大体誰かの叫び声かニワトリの鳴き声だ。
みんなにおはようを言いに行くと、昨夜の酔っ払いとは打って変わってチャキチャキと何かの用意をしていた。今日は大晦日だから朝からパーティーなのだそう。ちなみに、お正月は犬を食べない。(詳しくは前回の滞在記で)
二年飼っていたニワトリの丸焼きやスープ、血を固めて潰した薬味に、ハム、果物、もち米、春巻き、とにかく大量だった。
これ家族みんなで食べるには量が多すぎないか…?と思っていた矢先、ぞくぞくと人がやってきた。



ナムが私に一人ひとり紹介をした。お兄さんと奥さん、お兄さんの親友、叔父さんと叔父さんの奥さんと子供とお兄さんの友達とその子供とナムのいとこと同僚と近所の……

ああああああああああ!!だれが誰だか分からない!!!とりあえずみなさんよろしくお願いしまああああす!!!
と乾杯をした。
日本の昔もこんな感じだったのだろうか。私は兄弟もいとこもいないためお正月の宴会を体験したことはない。その騒がしさや鬱陶しい楽しさを知らない。
23歳、ベトナムではじめてお正月の大宴会を過ごした。



ベトナム語だから内容は分からないけど、酔っ払って喧嘩しそうになったおじさんふたりを奥さんが怒鳴って笑ってごまかしていたり、それを笑ってみていたり、ナムがいとこの子供にちょっかいだしたら泣いちゃったり。
ああ、これが人間の繋がりなんだ。ドラマのワンシーンを見ている気分。
東京でひとり。家賃の高い狭い小部屋で孤独を甘やかすいまの私には、沁み渡るような楽しさだった。




やっぱり来てよかった。クレッシェンドするようにベトナムにくるまでの日々は鬱々とした出来事が重なっていった。すべて東京に置いて私はここに、このひと時にやってきた。


さあ、これからこの旅の最大の目的を果たすのだ。ナムリンの結婚祝い。沢山人が集まるいま、それを果たすのにぴったりである!!




次回に続く。

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