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【パッケージの話013:Vカット箱】

今回のパッケージの話はVカット箱です。あまり見かけないかもしれませんが、分厚い板紙が印象的な箱です。
極厚のボード紙(再生紙)にスリッターでV字の溝を入れて組み立てます。コストは高いです。

Vカット箱のしくみ

Vカット箱_アートボード 1

例えばこの箱。

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開けてみたらVの溝が入っています。これがVカット箱。

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これは数年前のエスコヤマさんのバレンタインデー用パッケージ。Vカットのスリットは「途中まで入れる」という事ができないので、こんな風に上から下まで貫通します。Vカットと貼箱(身)との組み合わせ。

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もうひとつもエスコヤマ。エッジが立ってるのがよくわかります。ボート紙もくるみ紙も黒ですが、ボート紙はつや消し、くるみ紙は光沢のあるキャスト紙なのでメリハリが効いてますね。

Vカットで多角形も可能

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Vカットの角度を変えたら、こんな多角形もできます。これは築地本願寺のショップで買ったお香のパッケージ。インロー式ですが、フタも身もインローも全部Vカット!

実はフリーになった直後に、坂井印刷所さんのウェブサイトの企画でこの多角形のVカット箱を作らせてもらったことがありました。

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チップボールをそのまま使って、架空の化粧品のパッケージを制作。旅をイメージする化粧品、でも豪華なファーストクラスではなくエアカーゴやコンテナみたいな業務用っぽさを表現したくて。

長方形の箱はVカット、多角形の箱はハーフカット箱(後述)です。

ちなみにブランド名「Julay」は、フリーになる前に行った旅先、インド北部ラダック地方の言葉です。こんにちは、ありがとう、どういたしまして等、全部表現できるオールマイティな言葉です。

Vカットの貼箱

上記の3つのVカット箱は、ボード紙+上紙で、エッジは切りっぱなしですが、このVカットの箱を芯にして、上からまるっと紙でくるむ場合もあります。そう、貼箱の芯紙にするのです。これで有名なのがiPhoneの箱です。貼箱とVカット箱の違いはこんな感じ。

Vカット箱-02

ハーフカット箱とは

Vカット箱と親戚みたいな加工で、ハーフカット箱というのもあります。

ハーフカット箱は、板紙に切れ目を入れて外側に折ります。これだけで箱にはならないので、内側に身箱をくっつけたりします。良い例がバレンタインのジャン=ミッシェル・モルトローの箱。

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黒い板紙にピンクの紙を合紙してます。

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時間が経ったり、触っているとどうしてもカットした端がめくれてくるのが難点。

このハーフカット箱からヒントを得て、2017年のパケクション展覧会の作品を制作しました。白い板紙にミニッツGAというファインペーパーを合紙しています。

「世界のPB展」という架空のスーパーPBを作るという展覧会で、私はNYの高級スーパーを想定。モルトローの箱を参考に、身箱はスライド式で中にパウチをいれる仕様に。

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写真ではわかりにくいですが、小口にはホログラムの天金加工をしています。

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紙でありながら、独特の硬質感があってどこか無骨な感じが好きなVカット箱。個人的に最も好きな形状です。コストが高いので普段使いのパッケージでの採用は難しいと思いますが、いつか仕事で手掛けてみたい!

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