「面白くない」が言えない人間の映画レビュー#2「菊次郎の夏」

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菊次郎の夏


菊次郎の夏

父は死に、母は自分のために豊橋で働いていると教わった小学三年生の正男(ボウズ)が、ひょんなことから菊次郎(おじちゃん)と一緒に母に会いにいくロードムービー。

ボウズ×おじちゃんという好きな人は好きな作品。ヴィンセントが教えてくれたこと、パーフェクトワールドにも代表されるこの組み合わせ。


ストレートにテーマとかメタファーを伝える作品ではないので深く考察するために友達(Sくん)と議論をしてみることにした。



「正男がお母さんに会って話すことができなかった理由は分かるんだけど、どうして菊次郎もお母さんに会わなかったんだろうね」

Sくん
「母性を受けてない人であることを視聴者に再確認させようとしたんじゃないかな。」


「俺の解釈としては、母に会わなかった正男の気持ちを慮ったんじゃないかと思う。あそこにも菊次郎の優しさがあったんだよねきっと。似たような境遇で育って、その二人が同じ旅をして、正男を差し置いて、一人少し優位に立てなかったんだよきっと。」

Sくん
「確かにそのほうがしっくりくるな」


「正男がお母さんに会いに行くことを、あんなすんなりめんどくさがりの男が許すところから違和感はあったんだけど、菊次郎のお母さんの件から納得がいった。同じ境遇だからすんなり一緒に旅に出たんだなぁ」

Sくん
「もとから正男の母親の住所がわかってたから、それが自分の母親の居場所に近いてことも初めからわかってるってことに気づいた。」


「その時にはもう考えていたんだろうね、母に会いに行こうって。でも正男があの境遇になって自分だけ優位に立てなかったんだろうね。それよりもその少年にそれを忘れさせる思い出を上げようっていう魂胆だったのかもしれない。」

Sくん
「菊次郎が何かを取り戻そうとしているように見えるんだよね」


「最後の『おじちゃん名前はなんていうの?』『菊次郎だよバカヤロー』のあとの正男が走っていく姿を見送る菊次郎の表情は、何かを思い出したか、何かを見つけたんだろうな。あれは少年の旅じゃなくて、何かを忘れてしまったおじちゃんの旅なんだよ。だからあれは『正男の夏』じゃなくて、本当は主人公が菊次郎の『菊次郎の夏』なんだろうね。」

Sくん
「正男に感情移入していると思っていたら、実は菊次郎に感情移入していたのかもしれない。」

Sくん
「菊次郎も含めて旅中の登場人物は全員社会の外の人だよね、やさしいおじちゃん、ハゲ、デブ、菊次郎、みんな社会不適合者だ。彼らはもしかしたら大事なものを探している最中なのかもしれない。」


「確かに出てきた人物はみんなアウトローな人たちだよね、社会的に見たら。でもその人たちが、社会の構造を教えてくれたし、北斗七星を教えてくれるんだよ。本当はああいうひとが本当の世界の作りを理解していて、伝えられるほどのことを知っているのに地位とか権力という暴力でだれにも何も伝られないんだよ。」

Sくん
「もともとは無償の愛がテーマの作品だと思っていた。」


「無償ではないなぁ、母親に裏切られたこととかの代償はやっぱりあったから。代償はあったけど、それでも愛はあるんだよっていうテーマかなって。」

Sくん
「最後菊次郎と正男が車に乗って出発するまで彼らが手をずっと振っているところは無償の愛を感じるよね。母親からの愛って本来は無償の愛だと思うんだ。」



「たしかに、元来あの年の子供は無償の愛を受けるべきだ。父も母もいなくて、代償をすでに負っている子供に対して見せた菊次郎と優しいおじさんとハゲデブ、道中のカップルとホテルの受付の優しさか。」

Sくん
「それを母性と対比して描いているんだと思うんだよね。」


「そうかもしれない。無償の愛を受け取れなかった人たちが、代償を負った子供に自分と同じ境遇をさせないよう、送った愛。」

Sくん
「それだ。愛だ。優しさじゃなくて愛なんだ。」


道中のカップルから天使の羽をもらった。ハゲデブから天使の鈴をもらった。
天使の鈴を鳴らしても、天使は現れなかった。代わりに、隣にはおじちゃんがいた。よくわからないおじちゃんだけど、一緒にいてくれるおじちゃんがいた。


「菊次郎だよ、バカヤロー!」
そう言ったおじちゃんを見て正男は笑顔で走った。

菊次郎は最後に走って行く正男の背中に何を見つけたのだろうか。自分が受けることができなかった愛を、自分が送ることでそれを理解できたのだろうか。

おじちゃんにとってはボウズが、ボウズにとってはおじちゃんが天使だったのだろうか。

次の瞬間、カバンが揺れて、天使の鈴が鳴る。天使の羽がパタパタと揺れる。
まるでそのことを教えてくれているかのように。

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Summerという曲は本当に素晴らしいですよね。

アコースティックギターとヴァイオリンを用いて弾いてい見たのでぜひこちらも。

https://www.youtube.com/watch?v=JdM0mqSIDKA

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