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ケイト・スペードはオタクにも救世主だった

 私はオシャレに無頓着で、というか、興味はあるけれどセンスがなく、何を着ていいかわからない人種だ。「好きなブランドは?」と聞かれたら、いっちょ前に「Louis VuittonとDior」と、持てないクセにハイブランドのデザインは好きなので答えられるけれど、それ以外はさっぱりだ。以前、「女性向けブランドの英字表記をどこまで読めるか?」というテストがTwitterで流行っていたけれど、ほとんどわからなかった。(金銭的に)実用的なブランド品がさっぱりわからない。

 そんな私は普段、ものすごくテキトーな布バッグを愛用していた。オタクなので、アニメキャラクターが描かれているものも、もちろんどこに行くにも持っていく。しかし、いい歳になって気が付いた。「このままではいけない……」と。私はもう少し「社会に適合しなければならない」という威圧感のようなものを感じていた。

 けれど、何のカバンを買っていいのか、さっぱりわからない。ヴィトンしかわからない。「30万円!?」買えねえよ! 困った私はオサレなプロレスオタクの友人に相談した。そこで教えてもらったのが「ケイト・スペード」だった。

 ケイト・スペードはシンプルでいてフォルムがかわいらしく、どんな服装でもそれらしく見せてくれる。値段も無茶なことを言ってこない。「ショルダーで物がある程度入らないとイヤ!」という、私のワガママも叶えてくれたし、シンプルでありながら、裏地が凝っていてかわいらしく、「大人っぽくないとイヤ! でもかわいくないとイヤ!!」という無茶にも耳を傾けてくれていた。ケイト・スペードのカバンを買って肩にかけて歩いているだけで、私は「理想の正しい大人」になれた気がした。

 本来ならば、服に合わせていろいろカバンを変えるべきなのだろうけれど、私はまだそこまでのオシャレ度を持ち合わせていないので、最初に買ったケイト・スペードのカバンを使い続けている。お気に入りで、ずっと大事な相棒だ。

 だからこそ、今回のケイト・スペード氏の死はショックだった。何があったかは知るすべもないけれど、私はケイト・スペードのバッグに自尊心を与えてもらったし、とても感謝している。だから今度は、「服に合わせてバッグを変えられる」ような、もっともっと理想の大人に、あなたのカバンを使ってなりたいと思う。