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身体という前線 足三里と血海を中心にーー2000年代環境変動の中で


常に生態系の前線が“身の上”に

近年たびたび起きる「季節外れ」の身体の反応。はじめて季節外れの動きに気がついたのは1994年の12月です。寒さに適応して骨盤が縮むはずの時季なのに、多くの人の骨盤が縮むどころか拡がってしまっていて、「これは何だ?」と思ったのです。1995.1.17阪神・淡路大震災の直前でした。3月には地下鉄サリン・オウム事件がありました。

身体と大地震のあいだに直接的な関係があるとは簡単にはいえないでしょう。しかし自然環境や社会環境の変動と、生態系(人工環境を含む)の一部である人の身体とあいだが無関係とはいえません。

1994年ころ、整体のワークショップを始めるに当たって試行錯誤した結果、誰にとってもほぼ共通な、季節の移り変わりに応じた身体の反応を軸に、メニューを設定するようになりました。

季節的な変化ばかりでなく、様々な環境の変化(地球環境から社会環境、人間関係などの環境)に応じて、身体はまことに細やかに感受性そのものをフェイズシフトしながら、最適な態勢を常にとろうとします。

大げさにいえば、そこに社会を含めた生態系の前線が“身の上”に常にあるのです。

とくに2000年紀に入ってからの世界的な気象変動+地殻変動は誰もが認めるところです。この間身体がどのような「季節外れの動き」をしてきたのか見ていきます。

2002〜2018年の目立つ動き

2002〜2018年は、とくに足三里と血海の動きが目立ちます。足三里は季節的には春=暖かくなっていく時季に、骨盤を中心に身体がゆるんで、排泄を高めることに関わります。

一方血海は身体の集中を高め、骨盤を引き締める方向に働きます。季節的には5月(春から夏への切り替え)と11月(秋から冬への切り替え)に働きが高まります。

足三里(骨盤をゆるめる・リラックス・排泄をうながす)と血海(骨盤を縮める・集中する)という穴は対照的な働きをするツボですが、互いの働きを高め合う側面もあります。

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以下は2002年より身体のその時々の特徴的な動きを記した私のノートと毎月のワークショップの記録から拾い上げたものです。

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季節外れの反応のみ記してあります。季節外れの動きが目立ちますが、季節に連動する身体の基本的動きは底流にあると見ています。

本来の身体の季節的な動き

私の「整体の履歴」を振り返ると、1990年ころには身体の季節的感受性を活かすことを整体の基本に据えはじめました。2009年に季節(月ごと)の身体の動き、感受性の変化をまとめた『整体かれんだー』を上梓しましたが、原稿を作り上げる過程で、5年ほどかけて季節と身体の基本的な動きと特別な動きをふるいわける作業を繰り返しました。

本来の身体の季節的な動きは、骨盤を中心にして簡略化してみると次のような感じです。

前述したように、基本的に足三里は春、血海は5月(春から夏への切り替え期)と11月(秋から冬への切り替え期)に活動が高まります。

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こうしてみると、2000年代に入って(私の気がついたのは2002.1月から)本来春に活動を始める足三里(手三里も足三里に基本的に連動)が冬の間から(場合によって秋から)反応が敏感化、活発化しているのが見えます(2008末〜9年初の冬シーズンを除いて)。

気の流れから見ると、春先(2月)、頭から足へと下りてくる気の流れが強くなり、頭の皮がゆるみ、後頭部も骨盤もゆるみ始めるというのが春の始まりで、気の流れは足三里を中心に発散するようになります。基本的に足三里は春の身体の気の流れの要になるものですが、それが冬から発動しているということは、冬の身体の反応と春の身体の反応が重なっていることになるわけです。

健気な足三里と血海

2011年3.11大震災・原発事故以降、2年半ほどは(〜2013年11月)とくに足三里の強い反応が季節を超えてずっと続きました。その後も2014年末から冬(年によって秋)から足三里が敏感に反応することが多くなっています。

さらにまた、3.11震災の翌年2012年以降は、本来なら5月と11月にのみ集中して反応が高まる血海が5〜11月の間ずっと高い反応を続けることが多くなりました。本年2018年も5月から9月へ血海の反応がさらに高まってきています。

足三里は骨盤をゆるめ、興奮を鎮めリラックスすること、発散・解毒・排泄を促すことに関わり、その要になります。昔から木の芽時(=春先)は体調が不安定になると言われてきましたが、この不安定化あるいは流動化に関わるのが足三里です。春は身体の再生の時季です。身体はある程度の幅を持ってバランスを維持しながら、細胞レベルでも全身レベルでも解体と再生を常に内包して変化(成長・老化あるいは環境への適応)し続けていて、その大切な要になるのが足三里と考えております。

一方血海は骨盤を引き締め、下腹を温め、集中・安定を促します。

対照的な働きをする両者です。その位置も膝を挟んで点対称の位置にあります。しかし互いの関係は、対抗的というよりは相補的なものです。

足三里が発散・流動化を促すと、その途上では様々な症状が生まれもしますが、身心はリラックスに向かい、骨盤がゆるみきりリラックスしきると、呼吸は深くなり、全身がリセットされて骨盤も一転して引き締まります。この引き締まるときに発動するのが血海なのですが、足三里がよく働いてくれた場合ほど血海も働きやすくなり、逆もまた言えます。この数年の身体の動静を見てくると、両者の活動が同時に高まることも珍しくなくなっています。

月経のリズムの中にもある骨盤の開閉の動き、開(=リラックス・発散・排泄)と閉(集中・安定)の往復運動の感受性がとくにこの10年高い状態が続いていることが見て取れます。

とくに3.11.以降、気象変動が質的にもう一段加速されたということも、多くの人が実感をもっているでしょう。極端化・局地化・突然化が著しいといわれます。


自然・社会環境の変動の激しさの中で、懸命に適応しようとする身体の動きが足三里と血海の活発な活動に表れていると思われます。


足三里も血海も反応が敏感になっているということは、例えば手を近づけただけで、能動的に手と共鳴して反応が高まろうとします。さすったりなでたりしてもいいでしょう。健気な足三里・血海、応援したいですね。

(2018年11月)、写真/筆者撮影



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