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【2019参院選】15争点で公約を比較してみた【外交・安保-対外関係編】

  本記事では、JAPAN CHOICE 公約比較 サービスと連動して、15個の争点について、解説を行っていきます! 表だけでは伝わらない、争点の構造や争点をめぐる経緯について各争点1記事ずつにまとめました。15の争点、今回は【外交・安保-対外関係】についてです。


1.北朝鮮問題とは

1.1 北朝鮮の歩み

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  1950年の朝鮮戦争以来、北朝鮮にとっての最大の脅威は米国であり、米国に対抗するべく核開発を幾度となく続けてきました。1994年の米朝枠組み合意や2003年の6カ国協議、2012年の米朝実務者協議での同意といった対話路線による非核化を米国中心として提案したものの、裏切られる事態が続いてきました。これまで核実験は6回行い、回を追うごとに爆発力が増大し、核の小型軽量化に向けても段階的に進展してきています。また、2013年4月には最高人民会議で核保有国の地位を法制化し、核兵器保有は北朝鮮の国家目標にもなりました。
 
 また、核の運搬手段として重要なミサイル開発もしており、金正恩政権下の2016年から2017年には頻繁にミサイルを発射(2016年21回、2017年23年)しました。米朝首脳会談が行われた2018年は発射がありませんでしたが、2019年5月に短距離弾道ミサイルを発射しました。技術的課題は、①弾頭の小型化と②弾頭の大気圏の再突入技術で、①はすでに完成している可能性が高く、②を達成するのは時間の問題といわれています。


1.2 北朝鮮外交の方針はなぜ圧力から対話に変わったのか

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 金正恩氏は米国を脅威と捉えており、核兵器を保有し米国を攻撃できる能力を持つことが対米抑止力の確保につながり、金家が国家の指導者を世襲し自らがトップに立つ体制の生き残りに不可欠と考えているといわれています。そのため、自国の安全と体制の維持が保たれるという確信がないまま、北朝鮮が核や弾道ミサイルを放棄することはないだろうと、世界中の北朝鮮専門家は考えています。 2013年、北朝鮮は労働党中央委員総会で「並進路線」(軍事優先から軍事だけでなく経済も重視していく路線)を決定し、2018年4月には中央委員総会で経済建設に専念する方針へ転換したこともあり、ここ数年で北朝鮮の外交は圧力から対話へと大きく転換しました。
 2017年5月に韓国で文在寅政権が誕生し、南北融和に向けての南北首脳会談が行われたり、平昌オリンピックで合同の選手団を結成するなど両国の交流が増えました。また、同時に韓国経由で米国に対話メッセージを送ったことで、2017年6月にシンガポールにて史上初の米朝首脳会談が開催され、「非核化」に向けての米朝対話路線が軌道に乗りました。2018年4月には、党中央総会が核実験・ICBM発射実験の中止、核実験場の廃業を決定し、坑道の爆破映像が公開されました。
 しかし、直近開催された2019年2月の第2回首脳会談は、物別れに終わりました。この米朝交渉における北朝鮮の重点項目は①制裁解除、②敵視政策終了(米国の脅威の排除)、③朝鮮戦争の終結、④米朝国交正常化であり、これらが達成されない限り核兵器・弾道ミサイルの引き渡し・廃棄には当面応じないと見られています。

1.3 北朝鮮と日本

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 日本は、検証可能かつ不可逆的な北朝鮮の核・弾道ミサイル計画廃棄を目指し、日米間の連携による圧力を維持していく方針で、制裁措置を行っています。
 さらに、日本は北朝鮮との間に拉致問題や戦後賠償問題などを抱えています。1991年から1992年の間には日朝国交正常化交渉が開催されていたものの、拉致問題をめぐり紛糾し、協議が中断。その後も、2002年に小泉純一郎首相の訪朝で日朝平壌宣言が出され、4度にわたり国交正常化交渉が開催されてきましたが、どれも紛糾し終わっています。2014年にはストックホルム合意(拉致に関する再調査と制裁の一部緩和)がなされましたが、2016年の核実験により再び制裁が強化されています。
 安倍総理は交渉のテーブルにつく用意はあると表明し、また金正恩側も対話の移行を示していますが、安倍政権下では日朝首脳会談は実現していません。


2.北方領土問題

2.1 北方領土の歴史

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 第二次大戦後、アメリカなどに占領された後に独立を果たした日本には、国際社会への復帰を完全なものにするための一つの課題として、ソ連との講和がありました。1950年代になってもソ連との間には戦争状態が法的には続いており、国際連合への加盟にはソ連との関係改善が必須でした。交渉の議題として、日本の国連加盟問題などがありましたが、中でも領土問題が一番の議題でした。
 ここでいう領土問題の発端は、第二次大戦終戦間際、ソ連が日ソ不可侵条約を一方的に破棄し、日本がポツダム宣言を受け入れた8月15日以降に国後・択捉両島、歯舞諸島、色丹島といった北海道沖の島々に攻め入り、占領したことに起因します。
 ソ連は、千島・南樺太の帰属について原則的に一歩も譲らず、ヤルタ協定とポツダム宣言によって日本はサンフランシスコ講和条約でこれらの領土を放棄しているから発言権はないという立場でした。一方で、日本は、①領土主権の変更は平和条約で決めるもので、ヤルタ協定のような日本が当事国ではない協定は効力をもたない、また、②サンフランシスコ講和条約は日本が放棄した千島・南樺太がいずれの国に属するか言及されておらず、ソ連はサンフランシスコ講和条約に署名していないのでソ連の立場は不当であるという立場でした。
 この後、議論は平行線をたどり、戦後70年以上経った今も日本とロシアの領土問題は解決されておらず、両国間で平和条約も結ばれていません。

2.2 日露交渉

 議論が硬直する中で、1956年ソ連代表は歯舞諸島・色丹島の譲渡を申し出、妥協点を探りましたが、日本政府は2島に加えて国後・択捉両島の返還も要求したため、交渉が難航し、冷戦の激化で長い間硬直状態が続きました。
 1990年代になって、細川護煕首相とソ連・エリツィン大統領の「東京宣言」で日ソ共同宣言の有効性を認め、交渉指針の確認をしました。さらに、橋本龍太郎内閣のもとでクラスノヤルスク合意や川奈提案が行われてロシアとの関係が回復し一定の対話・交流ができる状態になり、平和条約の締結が目指されました。その後、日本で続いた短期政権の中で日ソ関係は長く停滞しましたが、安倍政権以降交渉が再開され、2016年には共同経済活動を行うための特別な制度について交渉を開始、2018年にはプーチン大統領によって「平和条約」締結への言及があり、平和条約交渉が加速すると思われていました。しかし、その後ロシアが一変して強硬姿勢になるなど、対話が行われるも進展が見られない状況が続いています。

2.3 問題解決に向けて

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 戦後保守陣営がソ連に対する妥協に反対し、さらに1955年の保守合同によって日ソ交渉に反対する勢力の発言力が増したことが、領土問題の妥協を難しくしました。そこで、日本は西ドイツとソ連の国交正常化方式をまねて、領土問題を棚上げし、共同宣言によってまずは国交正常化し、そのあとに懸念を解決して平和条約を締結するという方式をとることになりました。その後、外務大臣の重光葵が歯舞諸島・色丹の二島返還で合意するという案を提示したり、川奈提案として日本側が4島の北に境界線を引くが、当面はロシアの施政権を認める案を提案するなど領土問題にも言及してきましたが、今もなおロシア側は平和条約を結んだあとに領土問題を解決するというスタンスを崩していません。


被災者・地域の復興はもちろん、災害に強い国づくりを各党が目指していますが、どこに力を入れて行くのか、どのような手段でおこなっていくのかは政党ごとの違いが出ているのではないでしょうか。争点としては、2020年という復興期間終了という一つのポイントに対して、どのような政策をとっていくのか、防災に対して、どのような体制をとっていくのかが挙げられます。

おわりに

 いかがだったでしょうか。
今回は、外交の対北朝鮮・北方領土問題についての政策を比較しましたが、JAPAN CHOICEでは、その他にも様々な分野での政策比較ができます!

また、外交は安全保障・通商も論点解説を別の記事でしているのでぜひご覧ください。自身が気になる分野で、それぞれの政党の違いや、自分の意見とは違ってどのような主張の方法があるのかなどに注目し、比較することで新たな座標軸から政策を見ていただければと思います!

▶︎ シリーズ15の争点 他の記事はこちら



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・「北朝鮮が短距離ミサイル発射、1年5カ月ぶり」BBChttps://www.google.com/amp/s/www.bbc.com/japanese/amp/48159086・平成30年度防衛白書 北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐる動き・REUTERSグラフィクス 「北朝鮮の核開発」https://fingfx.thomsonreuters.com/gfx/rngs/NORTHKOREA-MISSILES-NUCLEARSITE-LJA/0100706Q0G7/・国際問題2018年4月号 ・”Getting tough on North Korea” Joshua Stanton etc ・『戦後日本外交史』五百旗頭真 有斐閣アルマ・「北方領土交渉をめぐる主な経緯」nippon.com https://www.nippon.com/ja/features/h00338/・返還交渉の経緯・内閣府北方対策本部https://www8.cao.go.jp/hoppo/mondai/04.html・『日露外交 北方領土とインテリジェンス』 佐藤優 角川新書


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