公約にない2

【いくつ知ってた?】政策集に書かれていない政策まとめ -後編-

はじめに

みなさんこんにちは。
いきなりですが、1年間で法律ってどれくらいできるのか知っていますか?
なんと、2013年の参院選からこの6年間で約550もの法律が成立もしくは修正されています。

 この6年間、政党を担ってきたのは自民党・公明党です。しかし、この6年間に成立した全ての法律や政策が両党の2013年当時の公約に書かれていたわけではありません。公約には書かれていないのに成立し施行されているものも多くあります。 そのうち生活に深く関係している法律の成立・修正をピックアップし、前編『2013年の選挙後、問題が現れたり、興味関心が高まった政策 』・後編『2013年の選挙時に反対が予想された政策』の二部構成で記事にして紹介していきます!

▶︎前編『2013年の選挙後、問題が現れたり、興味関心が高まった政策 』はこちら


2. 2013年の選挙時に反対が予想された政策

2.1 マイナンバー(2013)

  「便利な暮らし、よりよい社会」を実現するため、社会保障、税、災害対策の3分野で、複数の機関が管理している個人の情報が同一人物の情報であることを確認するために活用されるマイナンバー制度ができました。これは、日本に住民票を有するすべての人(外国人含め)が持つ12桁の番号であり、具体的には行政手続きや事務処理が簡易化されることになりました。
 しかし、マイナンバー制度は当時、国民背番号制による管理社会への一歩としてプライバシー侵害の面から国会では激しい議論がありました。その後法案は可決・成立し、2015年10月中旬から日本に住民票がある人全員に通知されました。
 さらに、2016年からはマイナンバーカードの申請も開始され、地方自治体でも使用できるようになりました。2017年には確定申告など税務署への申請書類の中にマイナンバーを記載することが求められるようになり、行政手続きがオンラインで簡単にできるマイナポータルというサービスも開始されました。

2.2 特定秘密保護法(2013)

 特定秘密保護法は、安全保障に関する情報のうち特に重要な「特定秘密」の漏洩を防止し国と国民の安全を確保することを目的として作られました。ここでいう特定秘密は「防衛」「外交」「スパイ防止」「テロ活動防止」の4分野と指定されています。特定秘密を漏洩した公務員や民間業者などには最長で懲役10年の罰則が設けられています。

 さらに、指定期間は60年を超えることが出来ない(一部除く)としました。しかし、(1)何が「秘密」に指定されるのか、(2)国民の「知る権利」への配慮、(3)秘密指定の半永続的な更新が可能、(3)内部告発などが難しくなるといった問題が指摘されています。
 また、特定秘密を取り扱う公務員や民間人に「適正評価」として、外国への渡航歴やローン返済状況、精神疾患の通院歴などの調査も盛り込まれているため、プライバシーの侵害ではないかという批判もされています。


2.3 安全保障関連法(2015)

 安全保障関連法については、2013年当時、「安全保障基本法の制定」と政権公約には書かれていましたが、その内容まで言及はされていませんでした。安倍政権は、2014年に集団的自衛権の容認を閣議決定し、2015年には集団的自衛権の一部容認や武器使用基準の緩和、自衛隊の活動範囲の拡大などが盛り込まれた法案を提出しました。
 そもそも、自衛隊が海外へ出動した場合、自衛隊は日本国憲法の制約によって「自衛」の枠内での国際貢献をこれまで実施してきました。自衛隊員は、PKOに従事している場合も行動を厳しく制限されており、自らの生命・身体を守るためやむをえない場合「自衛」の範囲でのみ武器の使用が認められてきました。そこで、国際的な協力の範囲が増える中で、より自衛隊が活動しやすくなるために必要とされたことが、この法が作られた理由の一つにあると政権は説明します。しかし、野党からは憲法違反、あるいは軍国主義化であるなどの批判が高まり、国会前でも大規模なデモが行われるなどの象徴的な出来事がありました。
 安全保障関連法が制定された結果として、政権は海外で自衛隊が他国軍の後方支援や、在外邦人の救出や米艦擁護が可能になったと実績を強調しています。
 また、武器使用基準の緩和や上官に反抗した場合の処罰規定の追加なども盛り込まれました。実際、2017年には初めて米軍からの要請によってヘリコプター搭載型の護衛艦いずも(国内最大の護衛艦)が米軍の艦船の用語をし、日米の強固な連携を示し、北朝鮮をけん制しました。
 憲法上、あるいは国際関係上の観点からも大きな反対論があった同法の成立がこれから日本にどのような影響を及ぼすのでしょうか。その運用の確認も有権者に委ねられています。


2.4 赤字国債の発行の簡易化(2016)

 赤字国債発行は、本来財政法で禁止されているのですが、政府は毎年特例法を制定して赤字国債を発行していました。そんな中、2016~20年度は国会審議を経ずに赤字国債を発行することが可能になりました。近年では、民主党政権下でねじれ国会となり、その都度これを審議していると秋まで議論がずれ込み、地方への予算配分が遅れるなどの悪影響が生じかねない状態になり政府が混乱したこともあり、スムーズな国家運営のためにこれが決められました。
 しかし、審議を経ずに赤字国際を発行できることは、歳出膨張につながりかねないとの指摘もあります。そもそも、特例公債法の中で赤字国債借換禁止規定(赤字国債を出すことを禁止していた規定)が小渕政権で削除され、簡単に赤字国債を発行できるようになりました。これにより、平成10年度以降、高齢化による社会保障費の増加などもあり国債発行額の増加額は著しいという現実があります。


2.5 テロ等準備罪(2017)

 テロ等準備罪は、テロ集団などの組織的犯罪集団が重大な犯罪を計画したり、計画実行のための準備をした時に罰することができるlことを目的に制定されました。これにより、未然にテロリストなどの組織犯罪集団を取り締まることが可能になりました。しかし、犯罪を計画段階で処罰するために審議されていた「共謀罪」に対する反発は強く、内容を修正した「テロ等準備罪」の審議では、野党との激しい対立がみられました。

 このテロ等準備罪の特徴としては、
1)組織的犯罪集団が、(2)重大な犯罪を計画し、(3)その計画を実行するために準備行為と定めているところにあります。
 この法案を成立させた背景には、オリンピックやパラリンピックに向けて各国とテロの情報をやりとりしているTOC条約に入る必要があったことが挙げられます。TOC条約の加盟条件として、各国には、犯罪を実行することについての合意(計画)か、犯罪組織の活動への参加を処罰できる体制があることが求められていましたた。
 しかし、テロを企てていたという容疑をかけて不当な取り締まりが実施可能であるなど人権を著しく侵害する可能性があるとの批判もあります。


まとめ

 毎年数多くの法案が可決し新しい政策が次々と行われているわけですが、生活に関係していても中身まではなかなか知らないというものも多かったのではないでしょうか。
 ちなみに、今年2019年の国会では、食品ロス問題や産後ケア、認知症といった社会的な問題を解決するための新しい法案や行政手続きをインターネットで可能にするデジタルファースト法案などが提出され審議されました。
 このように、世論の反対があることを想定して、あえて公約には明記せずに選挙後に政策を実施することもあります。2013年からの自民党政権では自民党が議席数を過半数以上占めていたため、数の原理で法案が通ってしまうこともありました。そのため、公約になかった法案が審議される過程で野党が激しく反対し、世論調査でも国民の反対意見が多いまま、可決してしまい、大きく支持率を下げるということもありました。政府・与党として、たとえ国民の理解が得られなくても長い目でみて国民のためになると判断して、公約に書かずに実現をはかるという選択とも捉えれますが、国民の判断を軽視しているとも言えます。

 JAPAN CHOICEでは自民党・公明党の2013年の公約のうち、どれほど実現できているのかをまとめたサービスを公開しています。この記事と合わせてみることで、どのようなことが公約集に書かれていて、逆にどのようなことが書かれてないのかといった視点でも楽しんでみてください。

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参考文献

<マイナンバー制度について>
一般社団法人マイナンバー推進協議会HP https://www.mynumber.or.jp/basic/mynumber-g/schedule-503
内閣府HP『マイナンバー制度について』 https://www.cao.go.jp/bangouseido/seido/index.html
総務省HP 『マイナンバー制度』 http://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/01.html
<特定秘密保護法について>imidas 『市民に押し付けられたアメリカの世界戦略』 https://imidas.jp/jijikaitai/c-40-089-13-12-g452内閣官房HP 『特定秘密保護法関連』https://www.cas.go.jp/jp/tokuteihimitsu/日本弁護士連合会 『特定保護法とは?』https://www.nichibenren.or.jp/activity/human/secret/about.html自民党HP 特定秘密の保護に関する法案Q&A  https://www.jimin.jp/activity/colum/122766.html
<安全保障関連法について>ハフィントンポスト『安保法案とは、そもそも何? わかりやすく解説【今さら聞けない】』https://www.huffingtonpost.jp/2015/07/15/security-law-wakariyasuku_n_7806570.html
朝日新聞デジタル『「米艦防護」を初実施 海自「いずも」、米補給艦と合流』
https://www.asahi.com/articles/A
『そもそも「安保関連法案」とは? PKOや他国軍の後方支援をどう規定』
 SK515T1MK51UTIL039.html 
irrona『そもそも安保関連法とは?』
https://ironna.jp/article/3044https://ironna.jp/article/3044
<赤字国債の発行簡易化>公益社団法人日本証券研究所 『なぜ赤字国債の無制限発行が可能になったか』http://www.jsri.or.jp/publish/research/pdf/81/81_02.pdf
日本経済新聞『改正特例交際費が成立 赤字国債、5年間発行可能に』https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS31H39_R30C16A3EE8000/
<テロ等準備罪>日本弁護士連合会『日弁連は共謀罪法の廃止を求めます』https://www.nichibenren.or.jp/activity/criminal/complicity.html
刑事事件弁護士ナビ『テロ等準備罪とは|条文の中身や共謀罪との違いなどについて解説』
https://keiji-pro.com/columns/190/
法務省HP 『テロ等準備罪について』http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00144.html
法務省HP 『教えて!テロ等準備罪』 http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00144.html
外務省HP 『国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約』https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/soshiki/boshi.html



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