社説比較4

参院選の総括、新聞各社の論調は?【社説比較】

参院選の結果を新聞各社はどう受け止めたのか?各社の「本音」を比較してみた。

事件や情勢の解説記事となることが多い社説ですが、その論調やスタンスは新聞各社により異なります。
メディアリテラシーの重要性が叫ばれる昨今。
各社の社説を比較することは、情報を客観的に判断し取捨選択する力をつけることができる絶好の方法と言えます。また、選挙結果を受けた社説では政策に対する各社のスタンスを比較的明確に知ることが出来ます。
(今回は朝日・産経・日経・毎日・読売の5紙の社説比較を行っています。)
令和初の参議院選挙の結果を受け、新聞各社はどのような社説を掲載したのでしょうか。
社説本文は、各新聞のデジタル紙面版でお読み下さい。
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朝日新聞:自公勝利という審判 「安定」の内実が問われる
2019.07.22

”首相が訴えた「政治の安定」は、ひとまず有権者に支持された形だが、「1強」による長期政権のおごりと緩みは誰の目にも明らかになっている。
 首相は自ら緊張感をもち、野党に投票した有権者も意識して、丁寧な合意形成に努めなければ、国民の重い負託には応えられないと肝に銘じるべきだ。”

野党に投票した有権者も意識した丁寧な合意形成の必要性を重点的に説いています。政策面に関しては憲法論議に重きを置いており、与党勢力は改選議席の過半数を上回ったことで勝利したが、改憲に前向きな勢力は国会発議に必要な3分の2を維持することはできなかったことを指摘。政権に対しておごりと緩みが誰の目にも明らかであると批評し、「消費税や社会保障、日米外交など内政・外交ともに難題が目白押し」のなか、「首相個人の思い入れで強引に議論を進めることは、社会に深刻な亀裂をもたらすだけだ」と慎重な議論を主張しました。

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産経新聞:参院選で与党勝利 「大きな政治」の前進図れ 有志連合への参加を試金石に
2019.07.22

”政権運営を託されたからといって一息ついている暇はない。単なる「政権管理者」に堕してはならない。憲法改正や外交・安全保障、経済、社会保障などで、日本と国民のため「大きな政治」を前進させてもらいたい。”

選挙結果に対して、首相は「有権者から引き続き政権運営を託された」と評価していますが、複数の論点における政権方針に強く言及。特に憲法改正と社会保障を取り上げました。憲法改正に関しては改正実現の必要性を説き、「国会と世論における多数を形成する努力をはらう必要」があると主張しました。社会保障では「少子高齢化や人口減は国難であり、政権基盤が安定している今こそ抜本改革を断行すべきだ」と関連する議論を避けてきた政権をやや批判的に論じました。最後に日米同盟にも触れ、「米国に独善的な振る舞いを正すよう促す」ことができてこそだと結びます。

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日経新聞:大きな変化を望まなかった参院選
2019.07.22

”議席はさほど動かなかった参院選だったが、与野党に突きつけた課題は決して小さくない。”

参院選の結果に対して大きな変化がなかったとし、それに至った与野党の動きを冷静に分析しました。政権に対しては、政治の安定を基盤にすることにより、社会保障制度への信頼回復や財政再建などに取り組むべきと指摘します。加えて憲法論議においては改憲勢力が3分の2に届かなかったことに触れ、「与野党の話し合いの土俵づくり」が重要だとしました。結びでは話題を集めたれいわ新選組に対して「向こう受けばかり意識したポピュリズム志向」とのやや冷ややかな目線を送るとともに、既存政党に対して信頼される政治を取り戻すことが最重要だと結論付けました。

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毎日新聞:19年参院選 自公が多数維持 課題解決への道筋見えず
2019.07.22

”憲法は国家の基本法であり、国民投票にかける改正案の発議に衆参両院の3分の2以上の賛成を必要とするのは、大多数の国民の納得を得る熟議が求められるからだ。選挙結果を盾に国会の憲法審査会を強引に運営することは許されない。”

参院は「塾議の府」たる役割を期待されるとしながらも今回の参院選では長期課題の解決に資するものであったかの疑問を呈します。その代表として社会保障を取り上げ、与野党の主張と立場に触れながら、改革の議論が見られなかったことを「双方が逃げ腰」だったことが原因だとしました。首相が強い意欲を示す憲法改正に関しては「選挙戦で改憲の中身が議論されたわけではない」とし、強引な憲法論議は避けるべきと主張します。最後に5割を割る投票率に触れ「有権者の半数が投票を棄権する危機的な状況を与野党は深刻に受け止めるべき」だと結びました。

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読売新聞:与党改選過半数 安定基盤を政策遂行に生かせ
2019.07.22

”安定した政治基盤の下で内外の難題に正面から取り組み、結果を出してほしい。そうした民意が示されたと言えよう。”

文章の多くを社会保障制度の改革に割いています。社会保障の持続にあたっての負担増加は避けられないとし、10%への消費税増税を信任されたと断言、それ以降の段階的な増税も議論を封印すべきではないとします。与野党に対して党派を超え、国民的な議論を始めてもらいたいと結論付けました。政権に対しては長期政権の実績が評価されたと分析、一方で野党の共闘の効果は限定的であったとします。憲法議論に関しては出来るだけ多くの政党の合意により改正案をとりまとめることが望ましいと指摘。憲法議論にかかり「強すぎる参院」の是正に取り組むべきだとして結びました。

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