3分でわかる

【2019参院選】【3分でわかる】データで参院選結果を見える化

0.はじめに

令和初の大型選挙が幕を下ろしました。安倍政権にとって6度目の国政選挙ですが、これまでのように野党の攻勢を退け、勝利を収めました。全国32の一人区の勝敗やれいわ新選組など、いくつか注目点もあった今回の選挙、基本的な部分から各党の総括、そして注目すべき点について、簡単にまとめてみました。

1.選挙自体の分析 

 今回の参院選の投票率は48.8%。これは、過去最低を記録した1995年の44.52%に次ぐ低さで、二度目の50%割れとなりました。

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 投票率に関連して、有権者がどういった行動をとったのか、比例区の投票先から見てみます。

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 絶対得票率という言葉があります。全ての票のうちでどれだけ票を得られたかを示す相対得票率とは違い、棄権した人も含めた全有権者の中で、どれだけ得票したかを示す値です。今回の選挙中、「絶対得票率で見れば安倍政権は国民の20%以下からしか支持を得ていない。投票へ行こう!」という言説が見られました(1)。確かにそれは正しく、上のグラフからも自民党は全国民の17%、公明党を入れても23%程度で、間違ってはいません。しかし注意しなければならないのは、野党各党もまた、毎回それ以下の得票率であるということです。

2.結果振り返り

 では、今回の選挙結果の中身について、詳しく見ていきましょう。まずは各党がどれだけ議席を得たか、など議席関連について色々比べていきます。

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次に、これまで比例区における得票数がどのように変わってきたか。比例区は全国を1つの選挙区とし、選挙区と違って全政党が候補者を擁立するので、比例区における票数を見れば各党の実力がわかるのです。今回の結果を踏まえ、安倍政権が誕生した2012年総選挙から6つの選挙での比例区の票数をグラフ化してみました。

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 最後に、一人区の勝敗について分析します。選挙区から1人しか当選しないいわゆる「一人区」は、全国で32あります。なかなか議席を独占しにくい「複数区」とは違い、たとえわずかな差であっても、勝てば議席を1つ獲得できることから、ここでの勝敗が選挙全体の結果に大きく影響すると言われています。前回、2016年の参院選では、民進党や共産党など、野党で全選挙区で候補者を1人に絞り、11勝を収めました。今回も立憲民主党・国民民主党・共産党・社民党の4つの政党が候補者を絞って、与党候補としのぎを削りました。結果はこんな感じ。濃い色は相手候補に10ポイント以上差をつけた地域、赤が与党勝利選挙区で青が野党共闘勝利選挙区です。

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3.当選者分析

 女性議員の数や当選者の年齢はどうなったのか、まとめてみました。
 年代別の部分では、50代60代の割合が上がっています。やはりベテランの議員のほうが当選しやすいのでしょうか。
 女性の比率が最も大きいのは、2名中1名が女性のれいわ新選組を除けば、共産党になりました。ただ、最も女性議員の数が多いのは自民党で、10名が当選しました。

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4.簡単に今回の選挙まとめ

 今回の選挙がどういうものだったか、簡潔にまとめてみます。

4-1.獲得議席と政党について

 まず与党について。自民党は9議席減らし57議席、公明党は3議席増やし14議席獲得しました。今回選挙を迎える議員が前回当選した2013年の選挙で、自民党が大勝(31の一人区のうち29で勝利)していたこともあって、議席を維持することは出来なかったものの、前回2016年の選挙で獲得した55議席を上回る結果を残しました。
 公明党も、目標としていた選挙区7人を当選させ、比例区では現職6人に加えて新人1人を当選させることができました。
 野党共闘による挑戦を退けることが出来たと言えるでしょう。

 次に共闘する野党について。
 立憲民主党は8議席増やして17議席を獲得しました。倍近く議席を増やし勝利と言えますが、選挙前の予測では20議席台にのるとも言われていた中で17議席にとどまりました。比例も8議席しか取れず、国民民主党の比例票と合わせてようやく2016年の民進党の票に並ぶ程度。手放しに喜べない勝利と言えそうです。
 国民民主党は2議席減らして6議席を獲得しました。党が擁立した一人区の候補者はおおむね敗北し、複数区でももともと地元で強い候補以外は、他の野党に競り負け勝ち上がれませんでした。しかし、野党統一候補として当選した無所属候補の中にも、もともと国民民主党の議員だったり最初は国民民主党から立候補する予定だった候補もおり、こうした当選者を加えれば、現状維持という結果になりそうです。
 共産党は1議席減らし7議席獲得しました。2016年の選挙での獲得議席を上回り、複数区でも埼玉や東京、京都をきちんと確保しました。比例での議席が前回を下回りましたが、現状維持と評価すべきでしょう。
 社民党は改選前と同じ1議席でした。得票率は2%を上回り、法律上の政党である要件を何とかクリア、政党として将来にタスキをつなぐことが出来ました。

 最後に、その他の野党について
 日本維新の会は3議席増やした10議席を獲得しました。過去2回の参院選の結果を上回り、しかも2015年の結党以来初めて関東で議席を獲得しました(東京と神奈川)。大阪と兵庫ではトップ当選し、春のダブル選以来の勢いを維持し議席を伸ばしました。
れいわ新選組は1議席増やした2議席を獲得し、政党要件を満たしました。参議院議員だった山本太郎代表は当選できなかったものの、特定枠に指定されていた2候補が当選しました。
NHKから国民を守る党は1議席を獲得し、国会へ進出、政党要件も満たしました。統一地方選で多数の当選者を出した勢いをそのままに、100万票を集め見事国政進出を果たしました。

4-2.今回の注目ポイント

 それほど盛り上がったわけでもなく、投票率についても低調だった今回の参院選ですが、いくつか注目すべき点があります。
 まず女性の当選者が過去最高の2016年に並ぶ28人でした(2)。しかしこれでも依然として全体のわずか1/6に過ぎません。これからどう増やしていくか、まだまだ日本政治にとっての課題であり続けます。
 次に、確認団体が自力で政党要件を獲得したことです(3)。法律上政党として認められ、選挙活動や政党助成金などで様々な恩恵を受けられる条件となる「政党要件」。5人以上の国会議員か、直近の選挙での2%以上の得票が必要です。今回、れいわ新選組とNHKから国民を守る党という2つの政党がこの条件を満たしましたが、こうした政治団体が政党要件をクリアするのはかなりレア、またN国党については所属している国会議員がいない状態から2%の得票条件をクリアしましたが、ただの政治団体が選挙を経て「政党」になったのは、少なくとも21世紀になってからでは初めてのことです。この両党の凄さというのが、これで少しわかっていただけたと思います。
 そして、そのれいわ新選組によって擁立され当選した2人が、憲政史上初の、難病の当事者や介助者が必要な重度障害者として議員となります(4)。特にうち1人は筋萎縮性側索硬化症(ALS)という、筋が動かなくなる難病の持ち主です。実際その方は眼球と顎しか動かすことが出来ません。こういった方にも優しい議院にするにはどうすればいいか、かつて車椅子の議員が当選し対応したことはありますが、ここまでの例は初めてということで、議員活動に支障がでないよう配慮をしていくということです。
 また、自身が性的少数者であると公表している方としては2人目の国会議員が誕生しました(5)。男性の同性愛者(ゲイ)を公表されている方です。これまで女性(レズビアン)は1人いましたが、ゲイの国会議員は初めてです。多様性に溢れる国会にまた一歩、近づいたのではないでしょうか。

まとめ

 ここまで今回の参院選の振り返りや注目ポイントについて見ていただきました。大きな盛り上がりに欠けた参院選でしたが、細かく見ていくといくつか日本政治の転換点とも言える出来事が起きていたことがわかっていただけたと思います。今後の政治の動きも、この記事で上げたようなポイントに注意すれば、もっとわかりやすくなるかもしれません。

★この記事はJAPAN CHOICEと連動して各党の公約を分析したシリーズです。ぜひ他の記事・サービスもご利用ください。

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【参考資料】NHK参院選2019開票速報(https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/sangiin/2019/)総務省「選挙関連資料」(http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/data/)
(1)市民連合「参院選2019 選挙ガイドブック」(https://shiminrengo.com/archives/saninsen2019/選挙ガイドブック)(2)小林明子「参院選で、女性の当選者が過去最多に。増やしたのはどこの党?」(https://www.buzzfeed.com/jp/akikokobayashi/saninwomen)2019年7月22日、BuzzFeedNews(3)日本経済新聞「れいわ・N国、政党要件満たす 社民党も維持」(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47615460S9A720C1EB2000/)2019年7月22日(4)しらべえ「れいわ新選組・難病ALS患者が当選確実で参議院が困惑 対応策を検討か」(https://news.biglobe.ne.jp/domestic/0717/srb_190717_4776337635.html)2019年7月17日(5)huffingtonpost「石川大我さん、参院選で初当選。同性愛公表の元区議「『私たちはここにいる』ということがはっきりした」」(https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5d350a51e4b0419fd32eb17b)2019年7月22日

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