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金星逆行と神話〈イナンナの冥界下り〉〜決して失われることのないあなたの金星〜

昨日、金星逆行が終わりました。
金星逆行が終わった後に金星逆行について書くってどうなの?とは思いますが…
金星逆行をふりかえって頂く意味で書いておきたいと思います。

わたしは金星逆行は、一般に言われているよりも、自分の愛情や絆、豊かさや快楽に関する経験を消化・昇華する上で大切な期間だと位置付けています。

占星術的に星や星座の意味を考える時、わたしは肉眼や双眼鏡で天体を実際に見たり、天体の動きを調べて追ったりします。そして、その印象を元にして考えることが多くあります。
古来、占星術家たちは、実際に天を観測し、その星々に見られる現象から様々な兆しを読み取っていました。
わたしもコンピューター上に描き出される画像のホロスコープだけではなく、実際に晴れた日は夜空の星を日々見て、その時に抱いた印象を大切にしたいのです。

金星の動きを観察していると、金星逆行についても自分なりの考えがまとまってきました。
通常の金星逆行の解釈とは違うと思いますが、占星術鑑定の際にクライエントさんにお話しすると、どうもハートに何らかの気づきがあるようなので、ここに記しておきたいと思います。

古代メソポタミアに栄えたシュメール文明に〈イナンナの冥界下り〉という神話があります。
天界の女神イナンナが、すべてを手放し、冥界に降りていく神話です。

夕空の金星、宵の明星を眺めていると、金星がだんだんと西に沈み、暗闇に落ちていきます。
この時、シュメールの金星イナンナが冥界に下っていく神話を思い出すのです。

金星逆行は、イナンナというあなたの内なる女神と向き合う時間なのではないかと感じるのです。さらに、冥界とは、あなたの無意識界ではないかと。

今、金星逆行は終わり、明けの明星として復活しはじめたイナンナ。
この時期、あなたの内なる女神を冥界から救い出すために、もしよろしければ、このnoteが何らかのヒントになればと願います。

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1、金星逆行の仕組み

2、神話〈イナンナの冥界下り〉

3、あなたが持つ7つのメー(神力)に気づく

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1、金星逆行の仕組み

まず、天文学的な金星逆行について書きます。
それは、ここを理解して考えることが、金星逆行について考察するときに大切な要素となるためです。

天体の逆行とは、天文学的に言えば、地球から見える惑星が通常とは逆に進んでいるように見える状態です。

惑星にはある一定期間、惑星は夜空を通常とは逆に移動しているように見える時期があります。
それが「逆行」と呼ばれる期間です。

金星は地球より太陽に近い位置にあるため、地球の軌道より内側を公転しています。
地球から見て金星と太陽とが重なる時を「合」といいます。

「合」には2種類あり、〈地球 − 金星 − 太陽〉と並ぶ時、つまり地球と太陽の間に金星が来る時が「内合」。
そして、〈地球 − 太陽 − 金星〉と並ぶ時、つまり金星が太陽の向こう側に位置している時が「外合」と言われます。

金星逆行が起こるのは「内合」の時。
地球の内側を移動する金星が、内合の際に地球に近づき、地球を追い越して行きます。
この時、地球からは、金星が逆に進んでいるように見えるのです。

この内合の前後約1ヶ月間、金星は太陽に近いため、太陽の光にかき消され見えなくなります。
金星が消えてしまうのです。

そして、内合の前には夕方の空に宵の明星として見えていた金星は、内合を過ぎると明けの明星として明け方の空に復活し、再び美しく輝くのです。

この金星の動きを、古代メソポタミアに最初の都市国家を建てたシュメール人たちは既に知っていました。

古代バビロニアには『エヌマ・アヌ・エンリル』という天文前兆占文書があります。
これは、世界最古の占星術書とも言われる粘土板で、1000年以上に渡り、約7000もの天体観測の記録とその結果から導き出された吉凶や前兆を占った事例集です。
メソポタミアに栄えた文明は、膨大な天文データを集積し、占星術のテキストを作っていたのでした。

その『エヌマ・アヌ・エンリル』の中に、金星の動きを詳細に記録した粘土板があります。
『アンミ・ツァドゥカ王の金星粘土板』と言われるもので、バビロン第1王朝(紀元前1894〜1595年ごろ)の第10代アンミ・ツァドゥカ王が統治する21年間の間に観測された金星の記録だそうです。
そこには、金星の会合周期を587日と計算したのではないかと考えられるような記録があります。
もし、そうだとしたら、金星の会合周期は574日ですから、古代メソポタミアでの天体観測の正確さがうかがえるような記録です。

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2、神話〈イナンナの冥界下り〉

さて、その時代の神話に〈イナンナの冥界下り〉というものがあります。
イナンナとはシュメール語〈天の女主人〉という意味の金星の女神です。

ちなみに、その後、アッカド人はイナンナをイシュタルと呼ぶようになりました。
イシュタルは愛と豊穣の女神であり、ギリシャのアフロディーテ、ローマのウェヌス(ヴィーナス)と同じ系譜です。
イナンナの冥界下りは、後に〈イシュタルの冥界下り〉と変化していきましたが、共通点が多いのでここではイナンナの神話を紹介します。

イナンナ(天の女主人)には、エレシュキガルという姉がいました。
天を統治するイナンナに対し、エレシュキガルは冥界を統治する女神で、ライバルのようなふたりの仲はあまり良くはなかったとされています。

ある時、イナンナは自分が統治する地上の7つの都市の神殿を手放し、姉エレシュキガルが統治する冥界に下ることにしました。
冥界に下るため、イナンナは7つのメー(神力)を象徴する物を身に付けました。

冥界の門に到着すると、姉エレシュキガルは怒り、7つの門を通るたびに身につけた物をひとつひとつ手放すという条件と引き換えに、冥界に降りることを許可しました。

イナンナは
第一の門で冠を取られました。
第二の門では耳飾りを
第三の門では首飾りを
第四の門では胸飾りを
第五の門では帯を
第六の門では手足の飾りを取られ
第七の門では衣を取られ、一糸まとわぬ裸にされました。

そして、エレシュキガルの宮殿に連れて行かれ、死者を裁く七柱の神に死刑を言い渡されたのです。
姉エレシュキガルが「死の眼差し」を向けると、イナンナは死んでしまったのです。

イナンナは冥界に下る前に、従者に「わたしが3日戻らなかったら、他の神々に助けを頼むように」と言い残していました。
そして、神々の力を借りて、イナンナは冥界から地上へと戻ることができたのです。

この神話には続きがありますが、今はここまでとしておきます。

わたしは、冥界に下りるイナンナとは、もしかしたら内合の前、西の空に宵の明星として輝き、次第に地平線に向かって暗闇へと姿を消していく金星(イナンナ)のことではないかと感じるのです。
冥界とは、陽の沈んだ後、暗闇に覆われる時間帯を指すのではないかと。

つまり、この神話には、宵の明星から明けの明星へと復活していく様子が描かれているのではないかと思います。
冥界に降りて行ったイナンナが、明け方の空、天界に復活するような、その様子を描いたのかもしれません。

ギリシャ神話でも水星神ヘルメスが天界と冥界を行き来します。
水星も逆行時、内合・外合の前後に見えなくなる期間があるのです。
水星は年に3回も逆行しますので、ヘルメスが頻繁に冥界と行き来していた様子にぴったりです。

この辺は、わたしの勝手な解釈ですけどね。

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3、あなたが持つ7つのメー(神力)に気づく

さて、これまで見てきた金星逆行とこのイナンナの冥界下りは、以前、金星逆行中にわたしのハートのうずきに対する理解を深めてくれたという経験があります。

女神イナンナは、わたしたちの「内なる女性性」の象徴です。
地母神としての女神であり、豊穣を約束する女神であり、エロスの女神でもある様々な面を持った内なる女神。

そのイナンナが、冥界、つまり、わたしたちが普段は意識することのない混沌とした「無意識」の世界に降りていく…と、わたしは金星逆行に感じるのです。

みなさんにも、金星逆行の期間には、内なるイナンナの無意識の叫びに耳を傾ける期間にしてみて頂きたい。
すると、きっと金星がつかさどるハートの整理につながると思います。

まず、イナンナが身に付けていた、7つの(メー)とは何だったのかを見ていきましょう。

イナンナは7つの門を通るたびに、身に付けていたものをひとつひとつ剥ぎ取られました。
その7つの装飾具とは、イナンナが持つ7つのメー(神力)を象徴するものです。

古代メソポタミアにおいての7つのメー(神力)は、現代の日本の言葉の持つ意味や象徴とは違うかと思います。
ですが、現代を生きるわたしたちにとっての意味を問うことが重要なのだと思いますので、日本語での意味やどんなことを象徴するのかを見ていきたいと思います。

7つの門をくぐるたびに、ひとつひとつ身につけていた装飾品を取られていくイナンナになったようなつもりで、自分の経験を振り返ってみて頂きたいのです。

例えば、ひとつひとつの装飾品が象徴するものに関して…
あなたが愛や豊かさという人生の側面で、その装飾品が象徴するものに関して、どんなものが与えられていましたか?また、それを失った経験がある方、その時あなたはどんな感情を抱きましたか?
あなたの中のイナンナは、その経験全体に対し、今どんな感情・印象がありますか?また、その経験にはどんな意味があったと思いますか?
そして、その経験を通して、あなたの内に大切に残されているものは何ですか?

そんな風にふりかえっていくと思わぬ気づきがあるでしょう。

※とはいえ、以下の説明だけ読んでも「なんのことやら?」と思う方もいるでしょう。そういう場合は目を通しておいてだけください。実際にこれらは、時間をかけて対話をして、時には人と話し合って、はじめて感じるものだからです。
(これをワークショップでやったら面白そうなので、さらに深めていき、そのうち企画したい。)


■7つのメー(神力)を象徴するもの

● 冠 − 権威・地位・立場の象徴。また、絶対的な揺るぎないものであること、大切な儀式などの象徴。
冠番組、冠婚葬祭などという言葉で使われます。

また、第7チャクラと考えても新たな気づきが生まれるかもしれません。

あなたが愛や豊かさという人生の側面において、与えられていた地位・立場とはどんなものでしたか?また、それを失った経験がある方、その時あなたはどんな感情を抱きましたか?
あなたの中のイナンナは、その経験全体に対し、今どんな感情・印象がありますか?また、その経験にはどんな意味があったと思いますか?
そして、その経験を通して、あなたの内に大切に残されているものは何ですか?

以下、同じように検証してみてください。


● 耳 − 聞くこと、頭に入れること、考えなどを象徴する。
小耳に挟む、聞く耳を持たない、馬耳東風など。

古代には耳から悪霊が入ると考えられ、耳の飾りで防いだ。地位のあるものが、悪い考えを持つ者の話や洗脳から防御する意味があるのかもしれない。

首の前に耳が来るのが興味深い。顔のすぐ脇にあるためか?
冠が第7チャクラ、耳が第6チャクラと考えるのも面白いかもしれない。


● 首 − 立場や生命、状態に関することの象徴。
首を切る、首の皮一枚つながる、首を突っ込むなど。

第5チャクラから考えるのも良いかもしれない。
コミュニケーション、自己表現、伝えたいこと。
甲状腺や咽頭、咳や声などが関わる病気や特徴など。


● 胸 − 気持ちや感情、絆などを象徴する。
胸がときめく、胸を張る、胸を借りる、胸の内を語るなど。

第4チャクラに関すること。
無条件の愛、見返りを求めない愛。恋愛、ときめき。癒しや悦び。

胸部、心臓や肺、呼吸・鼓動、息をひそめた経験など、胸部に関連する記憶。


● 帯 − 衣類を留める、衣類を体に固定する役目がある。
その原型は単なる紐だが、時代と共に装飾が施され、装飾品の一部としても重要な役目になっていく。
帯は、腹部や腰に巻くのが一般的。

腹は、本心・気持ち、覚悟・度量などを象徴する。
腹を割って話す、腹を立てる、腹をくくるなど。

腰は、要となる部分、芯・中心部、気持ちや姿勢などを象徴する。
本腰を入れる、腰を折る、腰をすえる、腰が重いなど。


● 手足 − 手足は、心身の状態や忙しさなどを象徴する。
手足となる、手足を伸ばす、足手まといなど。

手や腕は、技術や熟練度、忙しさなどを象徴する。
腕が立つ、手が足りない、手先が器用、手が掛かるなど。

足は、基盤・土台、動くこと、移動手段、形跡などを象徴する。
地に足がつかない、足元に火が付く、足元にも及ばないなど。


● 衣 − 覆い隠す、本当のことを見えなくするなどの象徴として使われる。
奥歯に衣着せる、濡れ衣を着せる、馬子にも衣装など。

あなたの秘密、隠したいこと、公式には伏せていることなど。


イナンナは、これらひとつひとつを剥ぎ取られ、最後には一矢纏わぬ姿となりました。

ですが、剥ぎ取られたものは、すべてが神力を象徴する「装飾品」であります。
本当に身に付けている神力は失われていないはずです。

では、もう一度、問います。

あなたが愛や豊かさという人生の側面において、上記の装飾品が象徴するもの関して、どんなものが与えられていましたか?また、それを失った経験がある方、その時あなたはどんな感情を抱きましたか?
あなたの中のイナンナは、その経験全体に対し、今どんな感情・印象がありますか?また、その経験にはどんな意味があったと思いますか?
そして、その経験を通して、あなたの内に大切に残されているものは何ですか?

わたしたちは金星逆行の期間に、しあわせになるためには目先の愛やお金、交友関係などをどうするか…という考えに振り回されてしまう傾向にあります。
ですが、それは傷に貼る絆創膏のようなもの。
もう二度と同じ傷ができないよう、本質を見つめ、根本からの変容につなげることが大切だと思うのです。

金星が逆行する期間、それは、あなたの内なるイナンナが冥界(無意識界)に降りていく時間です。

わたしたちは、金星逆行の期間に、内なるイナンナが冥界に降りていくまでの時間をつくることが大切なのではないでしょか。
そして、「あなたにとっての7つのメー(神力)」とは何だったのか、
形としては失ってしまっても内面からは決して失われていないものは何か…、
それをじっくりふりかえってみて欲しいのです。


金星逆行に感じた胸のうずきは、あなたの内なるイナンナが冥界から出しているサインかもしれません……
決して失われることのない内なる美しさに気づいて…と。

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わたしが「内なるイナンナの冥界下り」を実践した時の話、そして、その感想は、長くなりますので、また機会を作って書きたいと思います。

思ったよりも長くなってしまいました。
みなさんひとりひとりのイナンナ、決して奪われることのない7つのメー(神力)について大切な気づきがありますように…

星のセラピスト ミエル


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