雑記:意思なき石
久しぶりにテレビを見た。
最後にテレビを見たのはおそらく元日、実家のリビングにて。自宅でテレビを見た記憶はない。
わたしの家には小さいテレビがある。今の住居へ引っ越しの際、同時期に引っ越しをすすめていた母方の祖父母から不要になったものを譲りうけた。
のはいいのだが、現在これは使われていない。テレビ台というものがないため、便宜上、箪笥の上に設置されているこのテレビは、あろうことかその画面をラジオによって覆い隠される形で存在している。
ラジオに代わり、メディアとしての主役を勝ち取ったはずのテレビ。それがいま、我が物顔で鎮座する前時代の主人公にその地位を奪われようとしている。全国的に覇権を握るチェーン店が、特定地域においてのみローカルチェーンに退けられているような、そんな感じ。
小市民たるわたしの家という、ひとつの辺境ならではの光景である。
さて、久しぶりに見たテレビには、これまた久しぶりに見る顔があった。とはいえ、彼は多くのレギュラー番組をもち、お茶の間で見ない日はないほどの有名人、であるそうだ。
しかしわたしは考える。この人物の頭上に、推定数十トンの巨大な石のようなものを、十分な加速を以て落としたとしたらどうなるだろう。
結局、石に比べれば脆弱な物質でしかない彼はぺちゃんこになる。それはわたしを含め、わたしの身の回りにいるあらゆる人間も、あるいは影から世界を操る闇の王でさえ、同じ状況下では同じ結末を迎えよう。
このような事実を受け入れたうえで、あのタレントはお茶の間を沸かしているのだろうか。自分がガイコツに肉をはりつけただけの物体だと知っていながら、闇の王は世を動かしているのだろうか。
わたしが何を成したとしても、意思なき石にさえ抗うことが能わないのならば、わたしは何をあきらめ、何を追うことができるのだろうか。
これが久しぶりにテレビを見た感想であった。
やっぱりテレビは疲れる。語学書読もー。
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