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ただずっと待っていた

待ちぼうけという言葉は、スマホ全盛の時代には必要ないのかもしれない。私の過去最高に待った時間は3時間。高校卒業して何年か過ぎて、語学の専門学校へ通っていた頃の話。高校のクラスではかなり可愛いと評判の女の子と待ち合わせをしていた。その当日、私は甲子園球場にいた。親戚が夏の高校野球でなんと甲子園に出場していたからだ。突然、両親が「甲子園応援に行っちゃおうか?」と言ったのでついノリで一緒に来てしまった。肝心の試合は、白熱していたが延長再試合となった。私は、再試合までは付き合えないので、日帰りで東京へと向かった。可愛い女の子とのデートをするために。御茶ノ水駅の改札口で待ち合わせした時間は18時だった。何とか待ち合わせ時間に間に合ったと、ほっとしていたのだが、肝心の待ち人が来ない。

「あれ?今日だったよな?確か」

当時は、携帯もスマホも無い時代なので、彼女の自宅へ電話するとお母さんが電話に出て、外出している旨を私に伝えた。もう、彼女はこっちへ向かっているんだなと勝手に解釈したのが間違いだった。待てども、待てども彼女は来ない。追い討ちをかけるように、雨がザァザァ降りになってきた。傘を買って、駅の反対口を行ったり来たりしたが、ついに21時を過ぎても、来る気配はない。何度帰ろうかと思ったが、もし、入れ違いで彼女が来たら?もしかして、彼女が待ち合わせ時間を間違っていたのではないか?と思うと、その場を離れられなかった。だが、雨とずっと立ちぱなしで足も限界だった。最後に、もう一度彼女の自宅に電話をしてみたが、やはり外出中とのことだった。残念だが、諦めて私は帰った。早朝から大阪へ行き、応援して、とんぼ返りで東京へ戻ってきて、まさかの3時間待ちぼうけ。流石に、その日は家に帰ってふて寝してしまった。

後日彼女に連絡すると、予想していた答えがきた。

「あれ?御茶ノ水のメキシコ料理屋って、昨日だったっけ?」

「ごめ〜ん」

軽いなんて軽い対応なんだと思ったが、その後彼女と会って私はあっさりと許してしまった。あった瞬間に思った。

やっぱりめちゃ可愛いな〜

多分鼻の下を伸ばしてデレデレな顔をしていたのだろう。若かった。私は、彼女の外見にメロメロだった。それから、何度か食事やドライブもしたりしたが、結局は何も発展しないまま、年賀状だけの人となった。

あの時、携帯やスマホがあったとしたら、待ちぼうけしなかったのに。

今の時代では、すれ違いすら難しいのでは?と思ってしまった。昔のように、すれ違いの出会いとか、ドラマチックなことはおきにくいのだろうな〜

便利な進化は、嬉しいけれど何だろう、もったいない感じもするが、やはり待ちぼうけは嫌だから、今の時代が良いのかな?

どっちも経験したから分かることなんだけどねぇ〜

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