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帰宅の舞

「ただいま〜」と家のドアを開けて

手を洗っていると、後ろに人の気配が

振り返ると

そこに、妻が変な舞を踊っている

「な、なにしてんの?」

突然なことで、様子が掴めず

びっくりしていると

「知らないの?武田鉄矢だよ」

「いや、武田鉄矢は知ってるけど、その踊りは知らんよ」

「え〜知らないの?」

『J』 『O』 『D』 『A』 『N』


ジェスチャーで説明してくれるのだが

「昔聴いたことないの?」

「まったく知らないんだよ、本当に」

「マジか?」

それから、しばらくずっと

『J』『O』『D』『A』『N』

『J』『O』『D』『A』『N』

「本当に知らないの?」

「思い出したんじゃない?」

「有名だよ、この歌」

と歌いながら踊ってくれたのたが

結局ピンとこないまま

「何で、今その踊りなの?」

と聞くと

「明ることないしさ、嫌なことばかりじゃない?」

「もう、踊るしかないかなって思ってね」

呆れながらも、そんな妻の突然の踊りに

私は救われた気がした

重くなる雰囲気が世間にある中

この明るさは素晴らしい

良いね〜

私も、調子に乗って歌おうかなと言った瞬間

「いや、それはいらない、マジで」

「歌わなくていいよ。夜だし、近所迷惑なるでしょ」

「君だって歌ってたじゃん!」

「サビだけだし、ちょっとだからいいの」

「え〜そんな〜歌いたくなったのに〜」

「はい、はい、おしまい」

「早くお風呂入ってね」

「みんな順番待ちしてるから」

「はい・・・」

勝手に幕が上がって、勝手に幕が下りてしまった


何だよ、いきなり武田鉄矢って!

何だよ、『J』『O』『D』『A』『N』って

勝手だよな〜と思いながら

湯船に入って、鼻歌を歌った

後で、調べて凄い歌だということがわかったが

やはり、記憶にはないことが確認できた

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