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吉田 翠*詩文*
2018年12月27日 17:07
美しくも射抜くような目をした女がひとり踊り狂う時、ものの怪のような唸り声を上げて大地を覆う白が舞い上がる。凍った空間を容赦無く鼓舞する白い嵐。 悲しいか。 大地から生えたコンクリートの塊が、光の束を集めて薄っすらと笑う。白の唸りは力を削がれ、女は膝をつく。やがて迎えた静寂にその身を横たえ、束の間の夢と知った朝に白の闇は消えた。悲しいのか。柔らかなひとひらが、白銀の世界に溶けて
2018年12月18日 17:00
今日、またひとつ歳をとりました。その老いた母の穏やかな目は、陽射しの柔らかな秋の日に何を見つめているのでしょうか。深い皺の走るその人生を、ひっそりと讃えるために腕の中で花々が揺れています。何が見えていますか?わたしは何歳ですか?薄れていく記憶のひとつひとつを思い出せずにごまかし笑いしながら、手繰り寄せるものはきっとふんわり儚い花びらのようなものなのかもしれませんね。順番に、いずれそ
2018年12月4日 17:41
意味ありげに指をパチンと鳴らしてほら、わたしを呼ぶから午前一時に相応しい艶やかな宵闇の緞帳を目の端でとらえて子供の頃に読んだ古い本を開いた 分厚い表紙黄ばんだ紙湿ったにおいちいさく揺らぐ灯りの中でとつとつと眠っていた言葉が動き出しやがてよどみなく踊りだす物語は意味ありげに片まゆをあげる宮廷道化師の差し金姿を現してごらんなさいほら、ここ行ったこともない異国の街で