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妄想ストーリーコレクション

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フィクションを詩形式に作ったものや、短いお話。語りなどなど
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記事一覧

詩 壱与物語

詩 壱与物語

幾重にも連なった
玉の飾りを外す

見えない山の向こうでは
小さな集落が
跡形もなく消えたとか

そんなことはあるまい
ただ
焼かれたのだろう

まもなくわたしは
あの方がいらしたという
高貴な座に身を置く

愛した
野に唄う小鳥を遠ざけ
匂いたつような
色事も知らぬまま

檻の中の
高貴な座に身を滑らせる

日毎光の導きを聴き
その声を纏い
大地に君臨する猛々しき王が
いくばくかの神妙

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だいだらぼっち

だいだらぼっち

エンヤコラサ
呆けた顔でだいだらぼっちが土を掘る

中に入りゃだれからも
石を投げられずに眠れると言う

溜まった涙で湖ができた

エンヤコラサ
呆けた顔でだいだらぼっちが土を盛る

陰に隠れりゃ夜な夜なだれも
怖がらせたりしないと言う

盛り上げた土で山ができた

だいだらぼっち
お前の望みはなんだったのか

魚泳ぎ鳥歌い
暮らし豊かになった郷者たちが
今度はおおきな図体を
崇め奉り

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砂民

砂民

月が大きな夜に思う
その黄金の下にあるものを
いにしえのべドウィン
遊牧の民の足跡

漆黒の砂漠で
冷えた砂が波立ち震えるのは
いったい誰のせいなのか
べドウィンが愛した家族の砂海

ウードの弦を爪弾く人に拒まれた
何を知りたいのかと

遥か昔
絹の道しるべを背中にしょったひとりの男が
祈りの言葉を口にした

男が縛りあげたものは
伝統と争い
男がもたらしたものは
繁栄と不自由

ひと足ふた足と

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風のエレメントを持つ人

風のエレメントを持つ人

神々しくも強く気位の高い炎の化身

炎に命じられれば

どんな困難があろうとも従わなければならぬ

純真さゆえの幼ない顔を持つ

誠実で慈悲深く勇敢な娘、炎の妹は

炎が恋した、迷い人を連れ戻る無謀な旅に出た

邪なこころを持つ者は土地に邪神を生む

星と波を頼り襲い掛かるものを倒し

誠実で慈悲深く勇敢な娘は島から島へと過酷な旅の末ついに

ついに迷い人を救った

風は無言で雲を運ぶように

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ななつの祝い《詩で語る物語》

ななつの祝い《詩で語る物語》

さぁさぁお通りなされ通りなされ

かわいいべべに初めての紅。
健やかに大きくなりなされとななつの子の手を引いて向かう先は鎮守様。ぐるりと森に囲まれた、奥深いところに御坐します。

道らしきものを挟んで両脇には、そろそろ色も見ごろな銀杏の大木。
鎮守の杜にそびえ立つ、見事な銀杏の枝ぶりは、ここから先の道をたやすく通さぬための番人のよう。
赤子の時も三つの祝いの時も、同じ小道を通りました。その度ごとと

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女賭博師

女賭博師

中盆「さぁさあさあドッチモドッチモ」

切った張ったがこの世界。中途半端はいただけないねぇ。
ひとたび場にあがったからには白黒はっきり、よござんすか。

よござんすか。よござんすね。

中盆「シロクの丁!」

無粋な真似など、はなからお見通し。
女を甘く見ると余計な怪我をするだけだよ。
さぁ坊や
あたしを欲しけりゃ変な小細工キッパリ捨てて、顔洗って肝据えてから出直しな!

賭場は勿論ものの例え。

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花嫁御寮

花嫁御寮

どうだい、見事じゃぁないか…… なあ……

えぇ、お前さん。
ただ、名のある大店(おおだな)の跡取り息子。肩身の狭い思いをするんじゃないかと。

なぁに、身につけるもん身につけさせたじゃねぇか。気立てもいいしべっぴんだ。そんじょそこいらの娘とはわけが違う。

お前さん、いい加減親ばかだねぇ。

いいや、何処へ出しても恥ずかしくなんかありゃしない。じきに立派なご新造さんだ。
それにしても…… ち

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浮世に散る花

浮世に散る花

短い声劇もどきを作らせていただき、尚且つ声に(^▽^;)

yaya様が演じ、わたしは語りをしています。また、さるお方からも、お声を頂戴いたしております。
(フェロキヨ様、ありがとうございます)

こちらです

https://note.mu/yaya312/n/n08887fc0e5cb

ここに、拙いですが台本もどきを書き置かせていただきます。
廓のお話です。

浮世に散る花

<高巻>

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《かぐやかぐや》詩で綴る小さな物語

《かぐやかぐや》詩で綴る小さな物語

夜空に浮かぶまんまるなお月さま

孤独な月のうさぎはひとりの娘と仲良くなった

美しさゆえの妬みなのか

友すらいない娘はうさぎと話すのを楽しみにした

互いの打ち明け話が尽きてきて

ある時うさぎは下界を見下ろし呟いた

娘よ娘わたしは一度不老不死の薬を作ってみたい

そのためにはどうしても

高価な石のつぶてを手に入れたいのだ

かわいそうなうさぎの頼みとあれば

とってお

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たくさんの愛をこめて

たくさんの愛をこめて

Aloha nui loa
さぁ精霊たちよ目を覚ましておくれ
わたしの真実をマナに届けておくれ

昔々この地に住まう人達が選んだものは文字では無くわたし

Aloha nui loa
海に抱かれ大地にくちづけ
わたしの全ては祈りになる

かつて精霊達は何を知っていたのだろうか

「ある日どこぞの乱暴者が唾を吐き踏みつけにしようとも、その時猛々しき炎は顔色ひとつ変えることはないでしょう」
「ある時

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ありがとうございました

ありがとうございました

5月からスタートしたマガジンnote商店街。
先日オーナーのオゥエノさんより、今月20日をもって終了とのお知らせがありました。

https://note.mu/oweno/n/na67791ff4690?magazine_key=mb0efff34ab40

それぞれが事情を抱えながらnoteを続けています。
気苦労も多い中、共同マガジンを立ち上げられてこれまで頑張ってこられたのだと思います。

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永遠なれと謳ふ者《詩で綴る物語》

永遠なれと謳ふ者《詩で綴る物語》



しんしんと
深い水の底ですら命を永らへる

永遠なれと謳ふわたしは磐長

姉妹で嫁いでおきながら
醜い顔に生まれついたがため
粗末に送り返さるとは
受けたこの身のなんたる恥ずかしさ
天孫瓊々杵尊
何を持って忘られようぞ

かたや妹
美しきその姿をもってして
不義を疑わるとはあはれなもの
悔しさ募り
火中の産屋で三柱を
産み落とせし覚悟あっぱれなり

されどこの身の口惜しさ
追はれた以上情け

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今日は変わった人がお相手をします?

今日は変わった人がお相手をします?

時は平成30年のお盆の夜(のつもりで)

こんばんは、いつもご贔屓にありがとうございます。
実はね、今日はちょっと妙な人が来てて…… 店を手伝いたいって…… どうもこうもお読みいただける物語を用意するどころじゃなくてね(-_-メ)

あ、でももしよかったら寄っていってくださいな。
その人なんやかんや喋りたいみたいで、むしろ、ちょっと付き合ってあげてくださいませな。

という事で、邪魔してもいけ

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おばちゃんとお地蔵さん《詩で綴る物語》

おばちゃんとお地蔵さん《詩で綴る物語》

峠のお地蔵さんが微笑んだ
きっとたくさんの子供に囲まれますよ、と

それは三年前の嫁入りの日
頬をそめて俯いて
しずしずと進む道中で
にこやかに笑うお地蔵さん

なんのことやら罰当たりな
結局三年子が授からず
泣く泣く里へ返されるとは

それでも再び繰り返す
きっとたくさんの子供に囲まれますよ、と
相も変わらずのお地蔵さん

流れる月日に父母が亡くなり
出戻り女は肩身も狭く
何故か

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