「あんたが毒を飲ませたのよ!」認知症患者と格闘した末、私を信じてもらえたちょっとしたアクション。
「殺されるーーーーー!!」
病棟中に響き渡る声の主は、軽い脳梗塞で入院してきた、80代のAさん。(女性)
当時私は一般内科で2交替勤務をしていて、この日は夜勤で、16時に出勤していた。
騒ぎ声が聞こえたのは、日勤者と申し送りをしていた時間だった。
「今日のAさん、昼間に家族の面会があって、帰ったあとからかなり興奮してるよー。
眠剤飲んでくれたら落ち着くんだろうけどねぇ。」
と、日勤のリーダーは言った。
入院2日目の夜。一番せん妄も出現しやすい。
ふと「今夜は長い夜になりそうだ....」と思った。
17時半には日勤者が帰り、ワンフロア、20床の病棟はわたしとヘルパーさんの2人。
つまり、バイタルサインや服薬管理はすべて一人でやらなければならない。
いつも勤務のはじめに挨拶に行く。
「今夜の担当でーす。よろしくお願いしまーす!」
と言うと、Aさんは、
「毒をもったのはあなたでしょう?!」
と、突然怒鳴られた。
名札を見て名前を覚えられ、メモしており、
訪室するたびに怒鳴られた。
まぁ、落ち着くまで様子を見ようと、配膳などはヘルパーさんに任せて、
他の部屋からバイタル測定に行った。
そして、ついに、あの時間。
眠前薬の投与時間だ。
安定剤と睡眠剤で、落ち着くためになんとか飲んでもらいたい。
ただ、わたしがいくと、「お前の言うことなんて信じないー!!」と一点張り。
そこで、私は一か八かで、賭けに出た。
何をしたかと言うと、
私はメガネをかけた。
ただ、それだけだ。
そして、別人を名乗り、
「毒をもられたと思ったんですね。それはとても不安でしたね。」
と、少し口調をかえて、少し遠くから話しかけた。
すると、「あら?あなたはどちら様?
そうなのよ!大変だったのよ!!」と、話してくださった。
30分程話しを聞いて、
「眠れないのはお辛いでしょうから、先生から良く効くお薬をもらってきましたよ。
良かったら、飲んでみませんか?」
と、できるだけ穏やかに、寄り添うことを意識して関わった。
すると、薬を飲んで、眠りについた。
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今回は、たまたま上手くいったが、認知症の人との関わりは、マニュアルがないと言っていい。一人ひとり症状の出かたも異なるため、臨機応変な対応が求められる。
これが看護師と患者という立場と、在宅で介護している娘と母親、となると、また話しは別だ。24時間対応に追われ、介護疲れ、介護うつに陥ってしまう人が少なくないのだ。
インターネットで「介護うつにならないために」のようなサイトが多く存在する。
介護保険のサービスで、デイサービスやショートステイを利用して、自分自身のリフレッシュをすることや、介護休暇取得などのことが書いてある。
もちろん、それは大切なことだ。
だけど、わたしは、「誰かに話しを聞いてもらうこと」をもっと強調したい。
わたしは2年前からコーチングを学んでいる。
そのスキルを活かしたいという思いもあるが、「人に聞いてもらうことの大切さ」を身に染みて感じているからだ。
リフレッシュできる1人の時間も、とても大切。
でも、その後またすぐイライラしてしまうと、せっかくの時間が台無しだ。
人に話しを聞いてもらい、自分の中の大切にしていることや、うちに秘めた思いを吐き出すことで、介護をしている中で、一日一言でも、心温まる言葉をかけられるのではないだろうか。
わたしは、そんな「ハートフルな介護を!」をもっと広めていきたい。
そのために、何ができるのか....
それを見つけるため、色んなことをチャレンジしたいものである。
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